Report5 Numazu City
日々職員に目を向ける安全衛生の取り組み 沼津市
取り組みのポイント
- 月1回の開催にシフトしタイムリーな議事を提供して安全衛生委員会を活性化
- 全トイレに健康相談窓口のシールを貼るなど日常的にメンタルヘルスを喚起
- チェックリストによる風通しのよい職場づくりやOJTリーダー制度による新規採用職員の育成
沼津市では、最大規模の市職員衛生委員会が月1回の開催にシフトし、毎月タイムリーな議題を取り上げて委員の関心を高め、委員会を活性化しています。また、日々メンタルヘルスに職員一人ひとりが気を配るように、全てのトイレに心の健康相談シールを貼っています。さらに、全庁的に風通しのよい職場づくりに取り組み、OJTリーダー制度により新規採用職員全員を1年間サポートしています。こうした日々職員に目を向ける沼津市の取り組みを紹介します。
1 月1回開催へのシフト等による安全衛生委員会の活性化
最も対象職員数の多い市職員衛生委員会は、平成25年度までは年数回の開催でしたが、平成26年度からは毎月1回委員会を開催しています。労働安全衛生法令どおりに月1回開催することについて、人事課主幹兼給与・厚生係長の望月 浩司氏は「昨年度までは年数回の開催でしたので、数か月前の事項が議事となるときもありました。しかし、公務災害への対応や定期健康診断の未受診者への勧奨等は、速やかに委員会で審議する必要があります。そこで、今年度から月1回委員会を開き、タイムリーに議事を提供していくことにしました。」と開催の進展について語りました。
また、望月主幹は委員会の活性化についてこう話しました。「開催回数は増えましたが、議事を絞って短時間で効率的に審議する方向にシフトしたので、各委員も協力的で出席率もかなりいい状況です。病院衛生委員会は従来から月1回の開催ですが、他の安全・衛生委員会にもより一層の開催を促しています。」
熱意を持って委員会の月1回開催を進める望月主幹
2 日常的なメンタルヘルス対策の取り組み
市は、平成18年度から0と5の齢の5歳刻みの全職員に対して心の健康診断を実施しているほか、平成22年度には復職支援プログラムにより休職者の支援を始める等、さまざなメンタルヘルス対策を実施しています。また、人事課に配置され医務室に常駐する看護師の遠藤 富佐乃氏が随時健康相談を受けていますが「毎月発行している医務室だよりでも『話すことで不調が改善する場合もありますので、医務室はいつでも開けています、いつでも気軽に話しに来てください』と毎回アピールしています。」と、日頃から早期発見に努める様子を語りました。
労を惜しまず職員からのさまざまな相談を受ける遠藤看護師
また、日常的にメンタルヘルス不調の早期発見を推進するため、平成23年度からトイレにメンタルヘルス相談窓口のシールを貼っています。このシールには「職員のみなさんへ ひとりで頑張りすぎないで」等のメッセージとともに、医務室の内線番号や24時間対応の電話健康相談の電話番号等が記載されており、特に男性は大・小便器の両方にシールが貼られ、パッと目に入りやすい工夫がされています。
トイレの全ての便器にメンタルヘルス相談窓口のシールを貼付
その他、以前からソフトボールやサッカー等5類の種目で、全職員が参加できるスポーツ大会を開催し、職員の親睦を図っています。ソフトボールは30チーム、サッカーは20チーム、バレーボールでは30チームが参加するなど大変盛況に行われており、人事課給与・厚生係の川村 菜未恵氏は、「職員が仕事以外で交流できるスポーツ大会は、特に若手職員のストレス発散になっていると感じています。上司も参加しているので、職場でもざっくばらんに話しやすい雰囲気ができています。」と効果について語りました。
福利厚生費の縮減等により、全庁的な職員の交流事業を廃止する地方公共団体が見られる中で、市ではボランティアによる大会運営など、経費をかけずにスポーツ大会を継続し、心身のリフレッシュや円滑なコミュニケーションの向上を図っています。
こうした日常的に職員のメンタルヘルスを保つ取り組みにより、市のメンタルヘルス不調による休職者等は、全国平均より少ない状況で推移しています。
「スポーツ大会はほとんどの職員が参加してくれます」と語る川村氏
3 チェックリストによる風通しのよい職場づくり
心の健康診断で疲労感を感じる職員が多くみられたことなどから、市では平成22年度からチェックリストを活用して、風通しのよい職場づくりに取り組んでいます。その趣旨について、担当で政策企画課行政改革推進係長の矢嶋 竜一朗氏はこう語ります。「職員がいきいきと仕事ができる職場であれば、疲労感等も改善されるのではないかと考えました。そこで、職員同士でのあいさつや市民サービス向上のモットー等を定めた職員の信条を作り、共有することで、市民のために行動し、いきいきと仕事に取り組む風通しのよい市役所に変えていこうと考えました。その一環として行っているのが、チェックリストによる職場の評価です。」
組織風土改革を進める矢嶋係長と同係の矢部 真麻氏
毎年度、市長部局の全職員はチェックリストにより自分の職場の評価を行います。結果は所属ごとに点数化されて職員に周知されます。こうして、各所属・各職員が信条の取り組み状況を確認し、さらに改善を図ることで着実に風通しのよい職場づくりが進められています。
「風通しのよい職場作りのためのチェックリスト」の流れ
4 OJTリーダー制度を導入し新規採用職員を育成
市では、地域の地方公共団体と比べてもかなり早い平成10年度からOJTリーダー制度を導入しています。その経緯について、人事課人事・研修係の齋藤 大輔氏は「新採職員は、それまで先輩職員に仕事を教えてもらっていましたが、業務の密度が増す中で、直属の先輩職員だけで十分なOJTを行うのは厳しくなりました。そこで、1年間OJTリーダーを付けて、組織として新採職員の人材育成を行うことにしました。」と語りました。
「新採が安心して仕事に就けるよう取り組んでいます」と語る齋藤氏
OJTリーダー制度は体系的、効果的に人材育成を進めるための仕組みですが、新採職員は不安があってもOJTリーダーに聞くことができるため、側面的な効果として新採職員のメンタルヘルス不調の防止につながっています。また、齋藤氏は「OJTリーダーは大変ですが、リーダー自身も新人を育てる中で伸びていきます。」と語り、この制度が新採職員と先輩職員の双方にメリットがある状況を語りました。
アドバイザーより一言
各事業場が労働安全衛生法に基づく安全衛生管理体制を構築し、市衛生委員会では毎回産業医が出席しているほか、委員が関心を持つタイムリーな議事内容としていることは良いことです。また職場巡視では、事務局が巡視結果を整理し、全ての所属に報告することで、指摘事項の確実な改善を図っています。
毎年度実施のスポーツ大会や職場の雰囲気をはかる調査等は、職員間のコミュニケーションの向上や改善に非常に役立っています。全国と比べてメンタルヘルス不調者が比較的少ない状況は、こうした風通しのよい職場づくりの一つの効果と考えられます。
今後は、全ての安全衛生委員会の月1回の開催と各委員会の情報共有ができる場の設置、写真を使い改善前後の状況が一目で分かる職場巡視の報告作成やチェックリストの定期的な見直しにより、一層安全衛生の向上を図られるようお願いします。
中央労働災害防止協会 中部安全衛生サービスセンター
安全管理士 野口 正明