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Report1 Kishiwada City

職員の声や参加を重視した安全衛生の推進 岸和田市

取り組みのポイント

  • 市職員安全衛生委員会を中心とした推進体制を整備
  • 事業場委員会ごとに多彩な研修活動を実践
  • 職場の声、職員の声を聴き、安全衛生の課題解決に取り組む職場巡視を実施
  • 職員が利用しやすい相談体制やメンター制度による新規採用職員の支援

岸和田市では、各事業場安全衛生委員会を統括する組織として市職員安全衛生委員会を設置し、各事業場安全衛生委員会と連携を図りながら、全庁的な安全衛生活動を展開しています。また、ヨガを取り入れた健康セミナーの開催や現場の声を聴き環境改善を図る職場巡視、利用しやすい相談体制の整備など、職員の声、職員の参加を重視した取り組みを実践しています。こうした職員重視の姿勢で安全衛生を進める岸和田市の取り組みを紹介します。

1 市職員安全衛生委員会を中心とした推進体制

市では6つの事業場安全衛生委員会を設置するとともに、各事業場委員会の統括的組織として市職員安全衛生委員会(以下「市委員会」という。)を設けています。

市委員会は各事業場委員会の代表者等で構成され、定期健康診断など全庁的な取り組みについての連絡調整や報告、各委員会への助言・指導など、市の安全衛生の総合的な推進を図っています。人事課福利厚生担当担当長の松田 浩城氏は「それぞれの委員会で個別の活動が展開されている中、市委員会は情報共有、情報交換できる貴重な場であり、職場を超えた横の繋がりを広げる場となっています。」と市委員会の役割、機能について語りました。

岸和田市安全衛生管理体制

岸和田市安全衛生管理体制

事業場委員会の中では特に、環境事務所職員安全衛生委員会が活発な活動を展開しており、委員会の毎月開催や掲示板への議事録の提示など、法令で規定された活動を適切に実践しています。また、朝礼での安全運転指導や職場巡視など日々の安全衛生活動にも熱心に取り組んでいます。人事課福利厚生担当主査の庄司野 公也氏は「安全衛生に関する活動基盤があることに加え、取り組みが形骸化することなく、しっかりと維持されています。委員会として何かやらなければという積極的な姿勢が常に感じられます。」と同委員会の意識の高さについて語りました。市委員会の事務局を務める庄司野主査は以前、環境事務所委員会から研修会開催について相談を受けたことがありました。その際には、テーマ選定や講師確保などについて助言するなど、両者が協力して取り組みました。こうした優れた取り組みを周知し、他の事業場委員会が職場の実情に合わせて良い部分を取り入れるなどにより、委員会全体の活性化が図られています。

写真:松田担当長

「市委員会は安全衛生の牽引役であり、各委員会の
つなぎ役でもあります」と語る松田担当長

2 多彩な研修活動

市では、採用5年目の職員や管理職職員などを対象としたメンタルヘルス研修を定期的に開催するほか、バランスボールやヨガ体験を取り入れた健康セミナーなど、一風変わった研修・講座も開催しています。例えば、「バランスボールで腰痛予防」は、それまで実施していた座学形式の腰痛予防セミナーを発展させたもので、教育局が市民向けに実施していた健康教室の講師を招き、姿勢矯正などの腰痛予防効果が得られるバランスボールを使った実技中心の講座です。できるだけ多くの職員に参加してほしいとの思いから生まれた企画で、他にもストレス軽減を目的とした「ヨガでメンタルリラックス」などの講座が開催され好評を博しています。「座学だけではなかなか人が集まらないので、担当者が工夫を凝らしています。ヨガなどで体幹を鍛え、メンタルをリラックスさせることが仕事に少しでもプラスになってくれれば」と松田担当長は研修の効果に期待を寄せています。

また、学校給食委員会では、学校給食が長期に休みとなる夏休みを利用して「ヒヤリハット グループワーク」などの研修会を行っています。環境事務所委員会でも外部講師を招いた「腰痛予防体操セミナー」や警察署の協力を得て交通安全講習を開催するなど、各委員会が創意工夫を凝らした多彩な研修活動を展開しています。

写真:ヒヤリハット グループワーク

学校給食委員会が実施した
ヒヤリハット グループワーク

写真:腰痛予防体操セミナーの様子

環境事務所委員会が実施した
腰痛予防体操セミナー

3 安全衛生の課題解決に取り組む職場巡視

市では、委員による職場巡視がすべての事業場委員会で行われています。このうち、本庁職員安全衛生委員会では、複数班を編成し、安全衛生点検表(チェックシート)を使って効率的に職場を回ります。具体的には、点検表を事前に巡視予定課所に配付し、照明・採光、空気環境などの項目について自己チェックさせるとともに、職場環境改善の要望事項等のアンケートを実施します。当日は当該チェック事項を中心に巡視を実施し、指摘事項等を委員会に報告。これが職場巡視の主な流れです。

巡視の際に特に大切なことは現場の声を聴くこと。このため、巡視中は現場職員との対話を交えながら、意見、要望を聴き取ります。そして、アンケートでの意見や職員の声、巡視結果などを踏まえ、所属単位では対応が困難な問題等について対応を協議します。本庁委員会には、庁舎管理部門の責任者である管財課長も委員として参加しています。修繕が必要な場合は、予算の範囲内で優先順位に基づき対応が図られるなど、巡視する側、受ける側の双方にとって、実効性のある巡視が展開されています。「巡視をきっかけに職場の改善を図ってもらうことがねらいです。以前に比べ、段ボールを積んだまま放置されるという状況は減ってきています。」と庄司野主査は巡視の意義、成果について語りました。委員による職場巡視は職員の間に定着し、着実に成果をあげています。

写真:スリップ防止のための滑り止め板を設置(改善事例)

駐輪場裏口の鉄製傾斜板に滑り止め板を設置(改善事例)

4 職員が利用しやすい相談体制やメンター制度による
新規採用職員の支援

精神疾患に起因する長期病休者が全国的に増加する中、市では、職員カウンセリングなどのメンタルヘルス対策に積極的に取り組んでいます。職員カウンセリングは、利用が少なかった精神科医による健康相談に替え、平成25年度から女性産業カウンセラーを招いて開始された取り組みで、カウンセリングの利用状況は高く、毎回5枠の予約が埋まるといいます。「職員にとっては、精神科医への相談は敷居が高かったのかもしれません。産業カウンセラーなら利用してみようという気になったのではないでしょうか。」と庄司野主査は分析します。

市では職員カウンセリングを年6回開催しています。会場を本庁舎とは別棟の職員会館とすることで相談に来たことが目立たないよう配慮するとともに、6回のうち1回を医師や看護師向けカウンセリングとして市民病院内で開催するなど、プライバシーや利便性を考慮した運用を図っています。

写真:庄司野主査

実務担当者として日々安全衛生活動に取り組む庄司野主査

また、他の職員より入念なケアが必要な新規採用職員に対しては、後期研修の中でメンタルヘルスケアを取り入れるとともに、メンター制度を通じて職場適応の支援を行っています。メンター制度は、キャリアサポートとともにメンタルサポートとしての効果も高く、松田担当長は「新規採用職員、メンターの双方から「よかった」という声を聞きます。人事課としてもこの制度をうまく活用できていると考えています。」とこの取り組みを評価しています。こうした取り組みにより、精神疾患に起因する90日以上の休業者は減少していますが、市では、相談業務等の強化・充実など予防対策に万全を期し、更なる安全衛生の推進に努めています。

アドバイザーより一言

写真:アドバイザー/熊田氏

計画された事業をより効果的に行うために、可能な限り多くの方々が参加できる内容を検討しセミナーを開催するとともに、カウンセリングについては、男性医師から女性産業カウンセラーへ変更するなど利用しやすいように工夫がされながら運営されている面がうかがえました。

職場巡視については、指摘事項に対し、積極的に改善が行われていることはよい取り組みです。施設の老朽化等すぐに対応できないものもありますが、対応されたものについては、一般の職員に広く周知を図り、職場の安全衛生委員会がしっかり機能していることを職員全体に知ってもらうことは大変重要なことです。そのことが委員会の活性化にもつながります。

職場での職員に対する安全衛生活動を推進するためには、トップをうまく活用することが重要で、トップによる職場巡視を一部で実施し、職場の現状と改善の必要性を理解してもらえば、トップダウンで改善が進みます。また、職場の改善を進める上では、安全衛生委員会の活性化は不可欠ですので、委員会のより一層の活性化を期待します。

中央労働災害防止協会 近畿安全サービスセンター
安全・衛生管理士 熊田 彰

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City profile

大阪府岸和田市

図:大阪府岸和田市位置

  • 面積 72.55km2
  • 人口 199,753人
    (2015.4.1現在)
  • 人口密度 2,753人 /km2

見どころ

写真:岸和田だんじり祭 岸和田だんじり祭

特産品

写真:ブランド人参「彩誉(あやほまれ)」 ブランド人参
「彩誉(あやほまれ)」

キャラクター

イラスト:ちきりくん 岸和田城イメージキャラクター
ちきりくん

City office

岸和田市役所

写真:岸和田市役所

〒596-8510
大阪府岸和田市
岸城町7番1号
取材先:人事課

職員数1,979人
【内訳】
一般行政 816人
教育 298人
消防 175人
公営企業等 690人
(2015.4.1時点)

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