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職員全員の活動を促進し安全衛生を向上 八尾市

取り組みのポイント

  • 職種別部会は産業医も出席して月1回開催し、公営企業の安全衛生委員会とも情報共有を図る
  • 職場の実情を把握し職員全てに緊張感を持ってもらう抜き打ちの職場巡視を実施
  • 同僚による支援を盛り込んだ心の健康づくり計画やロー残業マンスによる長時間労働防止

八尾市は、市長部局の市職員安全衛生委員会に置かれる職種別の部会が事業場安全衛生委員会の役割を担って月1回開催し、市職員安全衛生委員会には公営企業の安全衛生委員会委員が出席して全庁的な情報共有を図っています。また、職場巡視は全ての職場の実情を把握するために抜き打ちで実施されています。さらに、嘱託職員等を含めた全職員を対象とする心の健康づくり計画に基づきメンタルヘルス対策が実施されているほか、職員全員に長時間労働の防止を促すロー残業マンスの設定など、職員全員の活動を促進し安全衛生の向上を図る八尾市の取り組みを紹介します。

1 部会の月1回開催や公営企業の安全衛生委員会との情報共有

市では、総合調整機能を有する市職員安全衛生委員会の中に職種別を基本とする6つの部会を設置し、この部会が事業場安全衛生委員会の役割を果たしています。

八尾市安全衛生管理体制

八尾市安全衛生管理体制

そして、最大規模の本庁部会を始めとして、ほとんどの部会は開催日を定例化し、産業医も出席して毎月1回開催されています。市職員安全衛生委員会及び本庁部会の事務局である職員課は、多様な健康管理・福利厚生事業を担い多忙な状況ですが、職員課長の河野 聡氏は月1回開催の意義をこう語りました。「部会の月1回開催は定着していますし、そもそも守るべきところは守る必要があります。少しずつ崩れていくと、どこまでもルーズになってしまいます。」  

また、長年本庁部会で安全衛生委員を務めた審査指導課監察係主査の岩狹 匡志氏は定例化について「本庁部会で過去に産業医が欠席のまま委員会を開催したことがありました。そこで、産業医の日程に合わせて各委員を召集するようにしました。現在は月末の最終水曜日に産業医の過重労働の面談を入れていますので、それとあわせて定例開催しています。」と語りました。

職員課の皆さん及び岩狹主査

職員課の皆さん〈河野課長(前列中央)、友田 寿幸課長補佐(前列右端)
西澤 昌寿職員係長(後列左)、前田 幸治職員係長(後列右)〉
及び岩狹主査(前列左端)

岩狹主査は、市職員安全衛生委員会が果たしている総合調整や情報共有機能についても語りました。「市長部局の総括安全衛生管理者である人事担当部長が市職員安全衛生委員会を開催しますので、長時間労働やメンタルヘルス対策等市全体で取り組む課題に対して、総合的に調整しながら進めることができます。また、公営企業である市立病院と水道局は市職員安全衛生委員会のメンバーではありませんが、オブザーバーとして必ず出席してもらっています。そして、年間の活動報告や課題の検討等により情報共有と図っています。」

2 抜き打ちの職場巡視や小部会設置等の取り組み

安全衛生委員会が行う職場巡視は各地方公共団体が効果的な方法を検討して取り組んでいますが、本庁部会では抜き打ちで職場巡視を実施しています。その方法について河野課長は「この日に巡視することは全所属に通知していますが、どの職場を回るかは知らせていません。職場巡視は日常のありのままの職場環境を把握することが大切ですし、職員に緊張感を持ってもらえるよう職場には事前に言わないことが必要だと思います。」と意義を語りました。また、チェックリストは本庁部会委員の意見により毎年度見直しを行うなど、効果的な職場巡視が実施されています。  

さらに、各部会や市はさまざまな公務災害未然防止の取り組みを行っています。清掃衛生部会では「公務災害対策小部会」及び「車両事故対策小部会」を設置し、事例検証と防止対策の検討を毎月行うことにより、平成25年度の公務災害件数は平成23年度に比べて4割減少しています。  

その他、保育士の腰痛予防のために専門トレーナーによる運動指導を実施しているほか、調理員には手荒れ検診が行われるなどの取り組みにより、市全体の公務災害件数は平成22年度以降減少を続けています。

部会・市の災害防止等の取り組み

部会・市の災害防止等の取り組み

3 同僚の支援を定めた健康づくり計画やロー残業マンスの導入

市は現在、平成26年度から平成30年度を計画期間とし、嘱託職員等も含む全職員を対象とする市職員心の健康づくり計画第2次計画に基づきメンタルヘルス対策を実施していますが、第1次及び第2次計画策定時には嘱託職員等も含む全職員に職業性簡易ストレス調査票を利用したアンケートを実施し、実態を分析・把握した上で策定を行っています。アンケートの対象に嘱託職員等も含めたことについて河野課長は「嘱託職員やアルバイトも同じ職場で働いていますので、市全体のメンタルヘルスを守ために正規・非正規にかかわらず計画では対象にする構想でした。このため、実態把握のためのアンケートも嘱託職員等にも実施しました。」と語りました。  

計画では冒頭にアンケート調査による現状と課題が記載されて市の現状が周知され、続いて目標及び一次から三次予防の対策が盛り込まれています。その中で推進者に管理監督者や保健スタッフとともに、同僚を明確に位置付けています。その趣旨について岩狹主査はこう語りました。「計画策定前に行ったアンケート調査では仕事のストレスは高くなりましたが、職場サポートや同僚の支援は全国平均より良い値でした。そうした実態を踏まえて計画に同僚や職場での親しい友人を推進者に位置付けました。」  

そして、河野課長が「同僚など関係者が少しずつ支えて不調になるのを防ごう、みんなで分担しあいませんかという考えです。また、第1次計画の推進体制ではトップが市長でしたが、今は下支えする事業者として一番下に位置付けられています。」と語るように、計画に基づき職員が一体となってメンタルヘルス対策に取り組んでいます。

計画における同僚の取り組み

一次予防 同僚の心の不調のサインを見逃さず、声をかけて相談に応じ、
相談者の心の負担軽減に努める
二次予防 不調をきたしている同僚を、上司や産業スタッフと連携して支援し、
必要に応じて相談機関の受診を促す
三次予防 復帰後、コミュニケーションを取りながら、
急に仕事の負担が大きくならないようフォローする

また、市では平成25年度から長期休業職員について、復職後2週間は病気休暇として扱うリハビリ出勤制度を開始しました。開始初日から徐々に勤務時間を増やすことで勤務時間の軽減を図るとともに、公務災害及び通勤災害を適用することで、職員が安心して復帰に取り組めるようになっています。  

さらに、市では平成24年度から長時間労働対策として「ロー残業マンス」に取り組んでいます。これは、文字通り1か月間(month)は残業時間を低く(low)しようとするもので8月に実施されています。各地方公共団体でもノー残業デーや定時退庁等長時間労働の防止に取り組んでいますが、定時退庁にしなかった点について河野課長は「定時退庁の意見もありましたが、庁内の現状を考えると困難だと思いました。そこで、職員全員が守れる目標として午後7時を退庁時間に設定しました。」と語りました。  

また、平成26年度からは一層の推進を図るため、職員自らが呼びかけるポスターを作成し執務室に掲示しています。ポスターの掲示を始めてからは、ロー残業マンスが話題に上ることも増え、長時間労働防止への意識啓発が図られています。

人事課職員がモデルとなってロー残業マンスを呼びかけるポスター

人事課職員がモデルとなってロー残業マンスを呼びかけるポスター

アドバイザーより一言

アドバイザー/柏 洋一

安全衛生委員会は、本庁部会では最終週の水曜日とするなど、各部会が定例化し月1回開催しています。また、ヒヤリ・ハット事案も部会で対策を検討し、公務災害の未然防止に取り組んでいます。職場巡視は職場の実情を知るため抜き打ちで実施され、毎年度チェックリストは見直され、より的確な安全衛生パトロールを行っています。

さらに、平成14年度にメンタルヘルス指針を策定し、平成19年度には第1次心の健康づくり計画を策定するなど、着実にメンタルヘルス対策を進めています。

第2次計画ではラインケアとセルフケアの中間として同僚、友人の取り組みが設けられ、職場復帰を支援するリハビリ出勤制度も新設しています。ロー残業マンスは、午後7時を設定し確実な実施を図っています。

今後は、第2次計画の基本目標に盛り込まれている「誰もが気軽に相談支援を受けることができる」ように、より随時性、匿名性が確保された心の相談窓口の検討をお願いします。

中央労働災害防止協会 近畿安全衛生サービスセンター
安全・衛生管理士 柏 洋一

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City profile

大阪府八尾市

大阪府八尾市

  • 面積 41.71km2
  • 人口 269,623人
    (2014.11.1現在)
  • 人口密度 6,464人 /km2

見どころ

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特産品

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八尾市役所

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〒581-0003
大阪府八尾市
本町1-1-1
取材先:職員課

職員数2,295人
【内訳】
一般行政 1,204人
教育 182人
消防 258人
公営企業等 651人
(2014.4.1時点)

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