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Report3 Odawara City

見直しの好機を捉えて安全衛生を拡充 小田原市

取り組みのポイント

  • 全職員に対して毎年メンタルヘルスチェックを実施
  • チェック結果について組織分析を行い、全所属長にフィードバックしラインケアを徹底
  • 委員の同質性を高める安全衛生委員会の再編で議論できる組織へ

管理監督者が「いつもと違う」部下の様子に気づくことは、メンタルヘルス不調の早期発見に大変重要なことは言うまでもありません。小田原市では、平成19年度から所属長の「気づき」を促すために、ラインケアの徹底に取り組んでいます。また、平成23年度には安全衛生委員会の活性化を図るため、委員会構成の見直しを行いました。これら安全衛生の拡充を図る小田原市の取り組みを紹介します。

1 全職員に毎年メンタルヘルスチェックを実施

市は、メンタルヘルスケアの必要性が高まるなか、平成9年度から「心の相談室」の設置や研修の実施等により、メンタルヘルス対策に取り組んできました。しかし、メンタルヘルス不調者は増加する傾向にあります。「行政需要の増大などで、職員一人ひとりへの負荷は増えていたのかもしれません。」と職員課給与福利係長の内田 充俊氏は語ります。

内田係長、矢島氏

市の労働安全衛生のけん引役
内田係長(左)と主査の矢島 佳世氏(右)

そうした中、平成18年度の福利厚生事業の見直しにより、職員全員に対するメンタルヘルスチェックが、平成19年度から福利厚生事業として実施されることになりました。メンタルヘルス対策の拡充を考えていた市が、福利厚生のうち必要性の薄れたレクリェーション事業を縮小し、生み出した財源で、それまで全く行っていなかったメンタルヘルスチェックを、職員全員に実施することとしたのです。

このメンタルヘルスチェックは、市が職員互助会に委託して実施されています(互助会は民間の健康増進会社に集計・分析を依頼)。互助会に委託した点について、内田係長はこう語ります。「職員互助会という外部組織がチェックリストの配付、回収をすることで、チェックリストの回収率が高くなると考えました。職員課が実施した場合は、人事管理部門もありますので、自分のメンタルヘルス不調を知られたくない職員が出さずに、回収率が低くなる懸念もありました。」

市の外部団体である職員互助会が実施することで、平成24年度のメンタルヘルスチェックシートの提出率は97%(市立病院除く)となっています。

2 全所属長に結果をフィードバックしラインケアを徹底

メンタルヘルスチェックの結果は、職員互助会から各個人に通知されるとともに、所属ごとの分析結果が職員課に渡されます。分析結果には個人情報は全く記載されず、偏差値及びメンタルヘルス状態の人数内訳(良い〇人、やや悪い〇人等)が示されます。職員課はその結果を各所属長へ報告し、各所属長は市全体の偏差値と比べて、自分の所属が良いか悪いかを確認します。さらに、メンタルヘルス不調者が多い所属については、所属長に個別説明を行い、自分の所属が悪い状態であることに気づいているか確認します。

メンタルヘルスチェック実施フロー

メンタルヘルスチェック実施フロー

また、翌年度の5月には、前年度に不調者が多かった所属に異動した新所属長に対して不調者が多かった状況を説明し、所属の状態に気づいているか確認します。

「所属の結果をフィードバックすることで、所属長にメンタルヘルス不調への『気づき』を促します。所属長に気づいてもらって、不調者を職員課や産業医、心理カウンセラーにつなげてもらうことで、早期発見、早期対応が可能になります。」と内田係長は語ります。

3 安全衛生協議会を活用して安全衛生委員会を活性化

市は平成5年度から小田原市職員安全衛生管理規程を施行し、10の安全衛生委員会を設置・運営してきましたが、活発な活動状況ではありませんでした。このため、職員課は平成17年度から各委員会同士の調整・連携を図る安全衛生協議会を通じて、各委員会に開催を呼びかけた結果、年々開催回数が増加してきました。

特に水道局安全衛生委員会は、各委員会の中で最初に委員会を定期開催し、活発な議論・提案が行われ改善が図られています。例えば、水道局庁舎の出入口に一時停止の表示を行い歩行者と車両の接触事故を防止する、効果検証を行い熱中症対策用ヘルメットカバーを導入する、ヒヤリハット事例を報告し全職員で情報共有する、日常の作業点検を盛り込んだ安全衛生自主点検表の作成等…。他の委員会をけん引する取り組みを行っています。

一時停止ライン及び「止まれ」表示

一時停止ライン及び「止まれ」
表示を実施し接触事故を防止

熱中症対策用ヘルメットカバー

効果検証を行い導入された
熱中症対策用ヘルメットカバー

4 安全衛生委員会を議論できる組織へ再編

各委員会の活動が活発になるにつれて、別の問題が生じてきました。内田係長はこう語ります。「市役所に設置している5つの委員会は、一つの委員会に事務系と技術系の部が一緒になっていたり、出先機関のある部とない部が一緒になっていました。事務系中心の委員会に保育園が入っていたために、保育園の意見が出にくかったり、逆に出先機関からの意見が中心で、出先機関のない部は議論に加われない等の弊害がありました。」

そこで、この弊害を改善するために、平成23年度に委員会の見直しを行います。5つの委員会を、類似する業務・職種や出先機関の有無で整理し、4つに再編したのです。幼稚園と保育園が抱える類似の問題を解決するために幼稚園所管の教育部と保育園所管の子ども青少年部を一つに(次図①)、出先機関がない事務系中心の所属を一つに(図②)、窓口業務が中心で出先機関を有する所属を一つに(図③)、技術系中心の所属を一つに(図④)まとめました。

小田原市安全衛生管理体制

安全衛生管理体制ー

こうして、業務内容等により委員の同質性を高める委員会の再編により、類似する問題について活発な議論、提案が行えるようになりました。

内田係長は「公営事業部、市民部及び福祉健康部等が一つの委員会で話し合う中で、マスクが安価に購入できるようにならないかとの提案がありました。これらの部は窓口中心の業務ですので、職員のインフルエンザ対策として提案したのです。これを受けて、職員互助会が市内の防災メーカーに打診し、安価でのあっせん販売が実現しました。委員会の中で、同じ問題を抱える課所で突っ込んだ議論ができるようになったからこその提案だと思いました。」と効果を語ります。

小田原市は、委員会の活性化でさらなる安全衛生の向上を目指します。

アドバイザーより一言

アドバイザー/芳賀氏

毎年、職員全員にメンタルヘルスチェックを実施し、個人結果と組織分析をフィードバックしています。また、東日本大震災被災地への派遣職員に対して、災害発生の4か月後に惨事ストレス研修を行うなど、早期対応に力を入れており、県内市町村の中でもメンタルヘルス不調者が少なく、成果を上げています。

安全衛生委員会は、事業所ごとのほか、市役所は業務形態により4つの委員会に分けて組織しています。業務形態ごとの設置で業務に密接な問題が提案され、細やかな対応ができています。市役所全体の改善には職員課の連携が重要ですので、今後も頑張ってください。水道局は委員会からの指摘事項を迅速に改善し、ヒヤリハット報告を委員会議事録に掲載して全職員に周知しています。情報共有の取り組みは、全職場への水平展開が望まれます。

今後は年間計画に課題を盛り込み確実に改善を図ることや、危険予知訓練(KYT)への取り組みをお勧めします。KYTを導入した市町村では、安全向上に大きな成果を上げています。

中央労働災害防止協会 関東安全衛生サービスセンター
安全管理士 芳賀 伸之

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City profile

神奈川県小田原市

小田原市位置

  • 面積 114.06km2
  • 人口 196,116人
    (2013.11.1現在)
  • 人口密度 1,719人 /km2

見どころ

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〒250-8555
神奈川県小田原市
荻窪300
取材先:職員課

職員数2,166人
【内訳】
一般行政 903人
教育 162人
消防 352人
公営企業等 749人
(2013.4.1総務省調査)

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