地方公務員災害補償基金 Fund For Local Government Enployees' Accident Compensation

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Report11 Fuji City

見つめ直す機会を生かした安全衛生の取り組み 富士市

取り組みのポイント

  • 災害を機に全庁的な危険個所の洗い出しや課長補佐級職員を安全のけん引役に活用
  • 全職員へのメンタルヘルスチェックや復帰支援要領の策定により、メンタルヘルス不調への早期対応を支援
  • メンター制度を通じて新規採用職員のストレスを軽減

富士市は、各安全・衛生委員会の総合調整機能を有する「中央安全衛生協議会」を設置して、統一的に安全衛生活動に取り組んできました。しかし、平成24年度に市としては大きな公務災害が発生します。市はこれを教訓として、全庁的に危険個所の洗い出しを行い安全対策を講じるなど、安全衛生活動を強化しています。こうした、状況を見つめ直すことで安全衛生の向上を図る富士市の取り組みを紹介します。

1 危険個所の洗い出し等により安全衛生活動を強化

富士市は、安全衛生管理規則に基づく安全・衛生委員会のほかに、昭和63年度から要領に基づき「中央安全衛生協議会」を設置しています。この協議会は毎年度、市全体の活動方針を各安全・衛生委員会に伝え、市の安全衛生活動の総合的な調整を担っています。

富士市安全衛生管理体制

安全衛生管理体制

こうして、協議会を通じて各安全・衛生委員会が統一された方針に向かって安全衛生活動に取り組む中、平成24年度に墜落による公務災害が発生してしまいます。幸い被災した職員は後遺症なく回復しましたが、公務災害による負傷としては近年にない大きな事故でした。このような災害を二度と起こしたくないと考えた市は、矢継ぎ早に対策を講じます。災害の数日後に、市役所の総括安全衛生管理者(総務部長)から全所属に対して、危険個所・業務の洗い出しと安全対策の実施及び危険業務へのリスクアセスメントの実施と作業マニュアルの整備を求める通知が出されます。その後、市役所衛生委員会において再発防止対策が検討・決定され、中央安全衛生協議会で周知が図られます。

また、危険個所・業務、安全対策及び作業マニュアル等の対応状況は取りまとめられて、市役所衛生委員会で決定された対策とともに各所属にフィードバックされ、職場の不安全状態について全庁的な共有が図られました。一方、洗い出された危険業務に対して、十分な安全教育が行われていない状況も明らかになりました。このため、危険業務に携わる職員に対してリスクアセスメントの演習等による安全衛生研修を開催して、不安全行動の防止を図りました。

その他、各所属の統括主幹(課長補佐級)等は、職員の健康づくり推進のために「健康づくり推進リーダー」に指名されていましたが、平成25年度からは「安全衛生・健康づくり推進リーダー」として安全活動のけん引役も担うこととなり、災害防止の取り組みを強化しています。人事課厚生担当主幹の増田 晴美氏は「この災害が起きるまでは、現業職場以外では危険業務がないだろうという認識でした。しかし、全所属に対する一斉調査により一般事務の職場でも常に危険にさらされている職員がいることが分かり、全庁的な安全意識の向上につながりました。」と取り組みによる意識の変化を語りました。

増田主幹

「災害に対して市全体で考える意識が
醸成されました」と語る増田主幹

桑原氏

「各所属が作業手順等を作るきっかけにもなりました」と語る人事課厚生担当主査の桑原 崇氏

公務災害に対応する取り組み

年度 取り組み 概 要
平成24年度 危険個所の洗い出し等通知 全所属に危険個所の調査・改善と作業マニュアルの確認・作成等を通知
保護ヘルメット配付 貸与ヘルメットを飛来・落下物用から墜落時保護用に変更し、ほぼ全職員に配付
安全衛生研修開催 洗い出された危険業務の所属職員を対象にリスクアセスメント演習等を実施
平成25年度 安全衛生・健康づくり推進リーダーの活用 全所属の課長補佐級職員を安全活動のけん引役として活用

2 全職員へのメンタルヘルスチェック等により早期対応を支援

市では昭和63年度から「安全衛生・健康づくり推進管理方針」を策定し、同時に「健康相談室」を設置して、保健師等の専門スタッフが中心となって、メンタルヘルス対策を行ってきました。しかし、平成15年度にメンタルヘルス不調による休業件数が2倍以上と急増します。この状況に対して市はすぐに対策に取り組み、同年度に全職員に対して定期健康診断に併せたメンタルヘルスチェックを行います。また、平成16年度には階層別のメンタルヘルス研修や、職場復帰支援実施要領に基づく試し出勤制度を実施します。こうした市の取り組みについて、人事課厚生担当主査で「健康相談室」に配置されている保健師の川島 理香氏はこう語りました。「平成15年度にメンタルヘルス不調による休業件数が2桁になりましたので、まずは職員のメンタルヘルスの状況を調べた方がよいと考えてアンケート調査を行いました。一方、既に不調で休職している職員に対して、当時は明文化された復帰支援制度がなく、所属長から仕事の与え方が分からないなどの悩みが聞かれましたので、要領を定めて復帰当初からしっかりと休業者の支援に取り組むこととしました。」

こうした早めの取り組みにより、市の平成22年度から24年度までの長期病休者全体に占めるメンタルヘルス不調者の割合は20%前後で推移し、全国平均の50%前後の半分以下となっています。

川島主査

「早く相談にきてくれる職員が増えました」と語る川島主査

3 メンター制度を通じて新規採用職員のストレスを軽減

富士市では、平成19年度から新規採用職員の早期育成を図るため、新規採用職員(メンティ)に対して職場の先輩職員(メンター)が、仕事に対する指導・助言を行ったり、さまざまな相談を受けるメンター制度を実施しています。人事課長の畔柳 昭宏氏は「平成16年度に職員研修に関するアンケートを実施したところ、用意された研修よりもOJTの方がスキルアップに効果的との意見が最多でした。また、効率的な行政運営が求められる中、新規採用職員のいち早い戦力化も求められていました。そこで、効率的な職員育成を図るためにメンター制度を導入しました。」と経緯を語りました。

畔柳課長

「職員を育てる風土が定着しました」と語る
畔柳課長

植松氏、金指氏

メンター制度を担当する人事課研修担当主幹の植松 良夫氏(左)と金指 秀樹氏(右)

導入当初は、自らの仕事をこなしつつ、メンティを育てるメンターの負担が大きい状況も見られました。しかし今では、メンティとして支援を受けた職員が、今度はメンターとして指導的立場になっていることで、精神的な負担感が減少しています。また、制度が浸透したことで上司や所属長の理解が高まり、現在では職場全体でメンティ・メンターを支える意識が醸成されています。

メンター制度はOJTの一環として行われるものですが、メンティの心の支えとなってストレス低減につながっていることや、メンター自身のモチベーション等の向上が図られていることが、アンケート調査からうかがえます。そして、職場全体に支えられながらメンティとメンターが共に成長することで職場の活性化が図られ、職場環境のストレス軽減につながっています。

メンター制度に対する主な感想

区分 感 想
メンティ
(新採職員)
心を伝え合い、聴き合うことが必要だと気付くことができた。
よく話を聴いてもらい感謝の気持ちが生まれた。仕事で恩返しをしたいと思う。
メンター
(先輩職員)
仕事の目標やゴール、行動の意味を伝えることが必要と感じた。
メンティとのコミュニケーションを密にして、さまざまな問題に一緒に取り組んでいきたい。

アドバイザーより一言

アドバイザー/野口氏

総合調整機能を有する中央安全衛生協議会を設置して、市の安全衛生に係る目標や好事例の水平展開等、各委員会活動の統一と情報共有が図られ、市全体の安全衛生水準のレベルアップにつながっています。また、公務災害を契機に実施した一斉の安全点検調査は、業務を見直す良い機会ですので定期的に実施してください。

今後、さらに安全衛生の向上を図るには、職場ごとの作業マニュアル作成の際に、危険要因を見積もり、その除去・低減措置の検討・実施を行うリスクアセスメントの活用が有効です。また、実施結果は記録し、新たに配属された職員に内容を伝えておくことも大切です。

一方、災害の教訓を忘れないためには安全研修を継続し、職員の危険に関する意識が薄れないようにすることが重要です。そして、これらリスクアセスメントの実施や安全研修等は、安全衛生計画に盛り込むことをお勧めします。

中央労働災害防止協会 中部安全衛生サービスセンター
安全管理士 野口 正明

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City profile

静岡県富士市

富士市位置

  • 面積 245.02km2
  • 人口 259,077人
    (2013.10.31現在)
  • 人口密度 1,057人 /km2

見どころ

岩本山公園 富士山を望む花の名所
岩本山公園

特産品

新鮮なシラス 田子の浦で水揚げされる
新鮮なシラス

「つけナポリタン」の
ゆるキャラ

ナポリン ナポリン

City office

富士市役所

富士市役所

〒417-8601
静岡県富士市
永田町1-100
取材先:人事課

職員数2,497人
【内訳】
一般行政 1,169人
教育 281人
消防 311人
公営企業等 736人
(2013.4.1時点)

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