地方公務員災害補償基金 Fund For Local Government Enployees' Accident Compensation

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Report4 Kure City

管理職の意識と行動が公務災害防止の鍵 呉市

事業者には、法の定めからも、信義の上からも、労働者の安全と健康に配慮すべき義務と責任があります。 そして、その義務と責任を果たすための取り組みを、現場で担っているのが課長や所長といった現場の管理職です。

呉市では、こうした中間管理職を公務災害防止のキーマンと考え、その責務を明確に規程で定め、 公務災害が発生した場合に中間管理職が主体的に対応しなければならない仕組みを作っています。

災害発生時の状況説明を課長が

呉市事業場安全衛生委員会では、実際に公務災害が発生すると、その所属の課長自らが委員会に報告に来ることが 義務付けられています。

災害発生時の状況はどんなだったのか、原因は何だったのか、そして公務災害防止対策をどのように考えているのか、 11人の委員に向かって、詳しく説明しなくてはなりません。

「こういう点が足らないのではないか!」防止対策が不十分とみなされる時などは、各委員から厳しい意見や質問が 出ることもあるそうです。総務企画部主幹の榊谷 博孝氏は、その様子をこう語ります。「状況によっては、 まるで被告席ですよ。ただ、それも職員を守らなければという強い責任感があってこそ。建設的な意見も多く出され、 予算等バックアップが必要な場合はその相談にも真摯に乗ります。これで再発防止できるというところまでやって、 再度説明に来させるようなことはしていません。」

写真:榊谷主幹

「職員の安全意識は非常に高く協力的ですね」と榊谷主幹

一見課長に酷な仕組みに見えますが、実際には課長一人にまたは課に責任を押し付けるようなやり方ではありません。 委員会での報告前には、必ず担当部局で「公務災害対策防止会議」を開催し、時には副部長も含めてよく検討を行わなければ ならないこととしています。課長は、直接の関係者であると同時に、部の代弁者としての役割を持って委員会に出席しています。

また、この委員会の中で、安全対策として早急に予算の執行が必要だと判断されると、この委員長でもあり、 呉市事業場総括安全衛生管理者でもある総務企画部長が、直接、財務部長等に直談判に行きます。

榊谷主幹は「呉市の職員は、安全衛生に本当に協力的で、ありがたいと思っています。」と、少し表情をゆるめます。 あえて厳しい仕組みを導入しながらも、事前、事後のフォローをきちっと行う配慮があるからこそ、多くの職員の理解を 得られているのだと思われます。

2階層の安全衛生管理体制

呉市の安全衛生活動は、水道局・消防局・その他の3つに分かれ、それぞれ別の規則・規程の下で行われています。

水道局・消防局を除く約8割の職員は「呉市職員安全衛生管理規則」の対象で、8つの「安全衛生委員会」のいずれかの管轄下に 置かれています。そして、安全衛生の総合的な検討や安全衛生委員会の調整を行う「安全衛生会議」も設置され、2階層の安全 衛生管理体制を敷いています。

図:呉市の安全衛生管理体制

そんな中、呉市の総務企画部長は、50課所の事業場を受け持つ「呉市事業場総括安全衛生管理者」として「呉市事業場安全 衛生委員会」の委員長であるとともに、「呉市安全衛生会議」で会務を総理する議長でもあり、呉市の労働安全衛生の中心的な 役割を果たしています。

各安全衛生委員会は、会議の内容、再発防止対策の状況など安全衛生に関することについて事細かく、総務企画部長に報告を 行うこととなっています。報告書はわかりやすく丁寧なものが多く、中には改善前と改善後の写真を比較したものや、会議中の 様子の写真が添付されたものも見受けられます。

こうした報告書を、総務企画部長は1件、1件きっちりと目を通し、早急な改善が必要で予算の執行が伴うものについては、 財務部長に直に要請に行くなど、必要な調整をしっかり行っています。

写真:報告書 写真:新岡課長補佐

(左)各安全衛生委員会から提出される報告書の一部 (右)「昨今、安全意識の高まりを感じる」と新岡課長補佐

近年、呉市では安全衛生委員会の開催回数が、どこの委員会でも軒並み増えています。人事課課長補佐の新岡 秀則氏は 「やはり、上がしっかり対応してくれているからこそ、重要性が認識されてきたのだと思います。公務災害を減らそうとか、 長時間勤務の人を減らそうとか、メンタルヘルス不調者を減らそうとか、そういう意識が全体的に強くなっている気がします。」 と語ります。

呉市 各事業場における安全衛生委員会開催回数

表:呉市の委員会開催回数

職場巡視と拡張した市域

「呉市事業場安全衛生委員会」では、年に2回夏と冬に大がかりな職場巡視を行っています。 まずは、各職場で自己点検を実施。あらかじめ決められた日程に、委員会のメンバーが複数チームを作って、 各職場を見回ります。平成24年度の夏は、本庁舎、出先機関合わせて延べ116項目の指摘を受け、 直近の安全衛生委員会でその報告がなされ、予算要望などが検討されました。

呉市の悩みは、本庁舎の巡視は年2回実施できていますが、その市域の広さから出先機関の巡視は3年に1度 ぐらいになってしまうこと。呉市は、平成の大合併で大きく変貌を遂げた市で、平成15年から17年にかけ島嶼部を含む 8つの町を編入し、人口は2割以上、面積についてはなんと約2.6倍も拡張されました。美しい景観と多様性が加味され、 呉市の魅力が飛躍的に高まっているのですが、職員の安全衛生面からみると、安全衛生委員会の直接的な活動が 及びづらいといった事情も見られます。このことについて新岡課長補佐は「委員会が直接行う活動には限界があります。 課所長中心に現場職員の安全衛生意識を高める活動を継続していくしかないと思います。」と話します。

呉市の平成大合併

地図:平成大合併

職員も巻き込んだ安全衛生活動

呉市教育委員会事業場安全衛生委員会では、とてもユニークな安全衛生の取り組みを展開しています。 その名も「ありがとうカード運動」。職場のコミュニケーションを高めることがメンタルヘルス対策や円滑な職場環境づくりに 効果があることから、平成21年度から始めました。この運動は「ありがとうカード」というアイテムを使用し、少し気恥ずかしくて 、普段なかなか口にできない感謝の気持ちをそこに書き込んで相手に渡すもので、運動終了後には人間関係が円滑になったり、 仕事に対する励みにつながったケースもあったようです。

また本庁では、平成21年度から職員が分担して庁内放送をアナウンスする活動を行っています。啓発活動をするのなら参加型が 一番よいと「安全衛生会議」の中で決まりました。月ごとにアナウンスを担当する部局が指定され、その部局の中で、年齢も職位も 特に制限はなく、担当アナウンサーが割り振られます。月曜日の朝は「メンタルヘルス対策 あいさつ・声掛け運動」庁内放送。 水曜日の夕方は「一斉定時退庁推進」庁内放送。マイクの前に立って生放送で、緊張するかと思いきや、呉市職員の皆さんはとても 達者にこなしているようです。

アドバイザーより一言

写真:アドバイザーの山岡氏

各安全衛生委員会からの報告活動、それを受ける総務企画部長・人事課の対応が素晴らしいと思いました。 報告書を見ると、各現場がそれぞれに工夫を凝らし、真剣に公務災害防止活動に向き合う姿が感じられ、 本当に良い空気が作られているなという印象を受けました。

さらにレベルアップをするなら、職場巡視においてチェックリストに無い部分の不安全状態、 不安全行動を見極める力を磨くことに挑戦してみてください。

また、公務災害再発防止を検討するときは 「人の失敗」「設備の欠陥」「情報の欠陥」「管理の欠陥」という4つの切り口で考えると、 対策を立て易くなります。是非、試してみてください。

中央労働災害防止協会 中国四国安全衛生サービスセンター
衛生管理士  山岡 和寿

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City profile

広島県呉市

呉市章
呉市位置図

  • 面積 353.85km2
  • 人口 239,542人
    (2012年4月1日現在)
  • 人口密度 677人 /km2

市民の花 つばき

写真:椿の花

市民の木 かし

写真:樫

呉のゆるキャラ

写真:ゆるキャラのてつぞー

てつぞー

City office

呉市役所

写真:呉市役所

〒737-8501
広島県呉市
中央4丁目1番6号

職員数
2,295人
2012年4月1日現在
地方公共団体定員管理
調査(総務省)による
【内訳】
一般行政 1,358人
教育 217人
消防 354人
公営企業 366人

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