地方公務員災害補償基金 Fund For Local Government Enployees' Accident Compensation

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Report6 Sakai City

堺市

取り組みのポイント

  • 総括的組織である中央安全衛生委員会とその専門部会、各職場安全衛生委員会による全庁的な安全衛生管理体制の構築
  • 計画的な資格取得で各職場にプラス1名の衛生管理者の配置
  • 全庁を挙げて取り組む堺市職員働き方改革プラン「SWIウィTCHッチ
  • 充実したメンタルヘルス対策と職員の健康支援

堺市では、各職場に設置される安全衛生委員会のほか、総括機関として堺市中央安全衛生委員会を設置し、トータルで管理することで、市全体としての労働安全衛生の向上を図っています。

また、平成29年度から「SWIウィTCHッチ」と名付け、職員の長時間労働の防止をはじめとした働き方改革を意欲的に進めていますので、これらの取り組みについて紹介します。

1 総括的組織である中央安全衛生委員会とその専門部会、各職場安全衛生委員会による全庁的な安全衛生管理体制の構築

堺市では労働安全衛生法等に基づき、各職場に安全衛生委員会を設置しています。また、それら各委員会も含め、全庁を総括する機関として堺市中央安全衛生委員会を設置しています。さらに中央安全衛生委員会には安全と衛生の各分野ごとに専門部会が設置されています。各専門部会は中央安全衛生委員会に先立ち、それぞれの分野に関する事項について綿密に検討を行っており、中央安全衛生委員会の効果的、効率的な運営に寄与しています。

平成28年度、安全専門部会では、公用車の事故の多発を憂慮し、事故の実態について分析、検討するとともに、同様の事故の発生を防止するため、いくつかの事例について検証を行いました。

また、発生した公務災害の検証に当たっては、所属別の集計にとどまらず、墜落・転落、転倒、衝突、挟まれ・巻き込まれ、切れ・こすれ等の「災害類型別」、人的要因や物的要因、環境要因等の「起因別」についても集計し分析しています。さらに「起因別」については、「人的要因」として用具等の使用や作業方法の不備、「物的要因」として、機械器具の欠陥や物の配置・置き方の悪さ、また、「環境要因」として気象状況など、全部で32の細目に分類して集計しています。将来の公務災害を防止すべく、事故の要因の根本を突き止め解決していこうという積極的な姿勢が見て取れます。平成19年度以降、公務災害は大きく減少しており、こうした取り組みが功を奏しているのだと感じました。

一方、衛生専門部会では、健康診断の結果や長時間労働による健康障害防止対策の実施状況の分析に加え、メンタルヘルス対策やストレスチェック制度など様々な事項について精力的に議論がなされています。

こうした検討が各専門部会でなされることで、中央安全衛生委員会では、効果的、効率的な協議が可能となっています。

堺市の安全衛生管理体制(2017 年4月1日現在)

図:堺市の安全衛生管理体制

 

2 計画的な資格取得で各職場にプラス1名の衛生管理者の配置

各事業場においては職員数に応じて衛生管理者等の選任が義務付けられています。堺市においても業種及び規模に応じて衛生管理者や安全管理者が選任されていますが、堺市では、日ごろの安全衛生の管理や人事異動等も考慮し、プラス1名体制をとっています。労務課安全衛生係長の下川床 英雄氏は、「職場の衛生管理水準を低下させないために、衛生管理者が欠員となる状況は作りたくない。」として、大きな職場で2人選任されている場合には、さらに3人目の資格取得を目指し、職員の資格取得を推進しているとのことです。徹底した安全衛生管理が実施されています。

写真:下川床氏

堺市の安全衛生管理体制について話す下川床氏

 

3 全庁を挙げて取り組む堺市職員働き方改革プラン「SWIウィTCHッチ

現在、国において働き方改革が進められています。日本経済の再生に向け、働く人の視点に立って労働制度の抜本的改革を行い、働く者一人ひとりがより良い将来の展望を持ち得るようにする、ということが基本的考えの一つとして掲げられていますが、労働制度、つまり働き方の改革に当たり大きな課題の一つとされているのが、「長時間労働」の問題です。長時間労働を是正すれば、ワークライフバランスが改善し、労働者も健康で意欲的に働けるようになり、それが生産性等の向上につながっていきます。私たち公務員でいえば、それは市民県民へのサービスの向上ということになるでしょう。

写真:改革プランSWITCHの説明を書いた用紙が2枚並んでいる。

堺市職員働き方改革プラン(SWITCH)

写真:大東氏

「SWITCH」の取り組みについて話す大東氏

堺市では、今年度(平成29年度)から特に「SWITCH」と名付け働き方改革に取り組んでいます。「SWITCH」とは、「S」堺市職員が「W」 ワーク・ライフ・バランスの推進に「I」一体となって「T」とりくむ「CH」チャレンジの頭文字を合わせたもので、「意識を 」、「行動を 」、「仕事のやり方を 」この3つの「かえる」をもって、平成29年度は時間外勤務総時間数の平成28年度比20%削減を、また平成33年度までに年間時間外勤務時間数360時間超の職員ゼロを目指しています。

この「SWITCH」のネーミング。労務課主幹兼労務給与係長の大東 貴宏氏によると、「プランとして打ち出すには職員にわかりやすいネーミングがないと。」ということで、人事部労務課の職員が集まり、知恵を出し合って生まれたものだそうです。何かアクションを起こすに当たっては、しっかりした理念と計画が不可欠なのは言うまでもありませんが、このようなネーミングで職員の心を引き付け、意識付けをすることはとても大切なことです。労務課職員の意欲も伝わってくる良いネーミングではないでしょうか。

写真:濵脇氏

「SWITCH」の効果と今後の展開を語る濵脇氏

さて、この働き方改革「SWITCH」ですが、「全職員がSWITCH」、「管理職がSWITCH」、「一般職がSWITCH」と3つのカテゴリーに分け、様々な取り組みを実施しています。ノー残業デーの徹底や会議、業務のあり方の見直し、業務分担の適正化などについて盛り込まれているほか、局(区)ごとに管理職が参加する管理会議を設置し、それぞれの会議で職員の勤務状況の分析や取り組み方針等について話し合い、職場環境の改善につなげているとのことです。

このように、堺市は職員の健康のため、やる気アップのため、職務上のパフォーマンス向上のため、ひいては市民サービスのさらなる充実のため、働き方改革「SWITCH」を推進しており、今年度9月の時点での時間外勤務は、全庁で前年度比14.4%減と確実に効果が表れ始めています。労務課課長補佐の濵脇 充氏いわく、「人事部は全庁的に比較して時間外勤務が多い。働き方改革を推進する我々が範を示さないといけない。」の言葉どおり、人事部労務課の属する総務局にあっては前年度比36.6%と大幅な削減を達成しています。

 

4 充実したメンタルヘルス対策と職員の健康支援

このほか、堺市ではメンタルヘルス対策も充実しています。心の健康の保持増進のための各種研修やメンタルヘルスチェックを「第一次予防」、また、心の不健康な状態への早期対応のための様々な相談体制を「第二次予防」、さらに、円滑な職場復帰と再発防止を「第三次予防」と位置付け、職場復帰のための事前訓練や復職指導を実施しています。復職指導は、職場復帰1か月経過後に、産業医が本人と上司に面談を実施しています。労務課主査の宮島 伸恵氏によると、「本人の面談後、上司と面談を行い、場合によってはその後3者面談となることもあります。」とのこと。状況に応じた臨機応変な対応で職員の職場復帰を支えています。

写真:宮島氏

メンタルヘルス対策について話す宮島氏

また、健康管理室では、職員の健康管理を支援するため、随時、「健康情報」を発信しています。これは、簡潔にまとめたリーフレットのようなもので、職員には、がん健診や熱中症、健康管理などのテーマについて関心を持って読まれています。

写真:たくさんのイラストを使った広報誌が並べられている

職員の健康管理のための庁内広報誌

写真:数人の女性スタッフが机に向かって作業している様子

職員の健康を支える健康管理スタッフ

 

アドバイザーより一言

写真:アドバイザーの高木氏

職域ごとの安全衛生組織とは別に中央安全衛生委員会を設置するなど、活発な安全衛生活動をされています。また、職場における衛生管理のキーマンとなる衛生管理者の2人体制を確保するために、有資格者の養成にも取り組まれています。安全衛生活動や健康情報については、庁内ホームページを利用して効果的に情報発信されています。

公務災害分析においては、堺市独自の分類表を設け、職務内容に即した災害分析が事故の型、災害要因別に集計されています。

今後は、事故の型と災害要因を組み合わせた災害分析などを行い、より有効な災害防止対策の検討に活用されることをお勧めします。 

堺市が進めている“SWITCH”(「働き方改革」プラン)は、長時間労働の防止に効果をあげています。全職員参加型の取り組みであり、特に管理職が時間管理をしっかりとマネジメントされたことが成果として現れています。メンタルヘルス対策と合わせて、活動の推進による労働環境のさらなる改善をご期待いたします。

中央労働災害防止協会 近畿安全衛生サービスセンター
安全管理士 髙木 秀文

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City profile

堺市

堺市の位置図

  • 面積 149.82km2
  • 人口 839,310人
    ※平成27年国勢調査
    (2015年10月1日現在)
  • 人口密度 5,602人 /km2

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City office

堺市役所

写真:堺市役所

〒590-0078
大阪府堺市堺区南瓦町3-1
取材先:労務課

職員数 9,323人
【内訳】
一般行政 3,386人
教育 4,417人
消防 895人
公営企業等 625人
 (2017年4月1日現在)

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