地方公務員災害補償基金 Fund For Local Government Enployees' Accident Compensation

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Report2 Kagoshima Prefecture

鹿児島県

取り組みのポイント

  • 各職場安全衛生委員会と全庁をまとめる総括安全衛生委員会、各種関係会議によるきめ細やかな安全衛生管理体制
  • 地域ごとに配置された産業医と地区衛生管理者による地域密着の安全衛生活動
  • 職場巡視チェックリストやリスクアセスメントシートを活用した積極的な職場の環境改善への取り組み
  • 職員の心と体の健康を支える各種研修会や健康相談事業等

都道府県や政令市等の大規模な自治体では、行政運営はもちろん組織自体の運営についても自ずと大規模にならざるを得ません。鹿児島県では、安全衛生管理において手薄な地域が生まれないよう、地域ごとに産業医や地区衛生管理者等を配置し、地域に密着した安全衛生活動を展開しています。

また、昨今どの自治体でも課題となっているメンタルヘルス対策についても、職員が生き生きと業務に取り組むことが出来るよう様々な支援策を講じていますので、ご紹介します。

1 各職場安全衛生委員会と全庁をまとめる総括安全衛生委員会、各種関係会議によるきめ細やかな安全衛生管理体制

鹿児島県では、本庁等を一つの事業場とした77課・室等からなる本庁等衛生委員会のほか、法令に基づき各事業場ごとに設置された24の衛生委員会及び安全衛生委員会が設置されています。また、それらを含めた全庁を総括する機関として総括安全衛生委員会が設置され、年2回、全庁の安全衛生管理に関する課題について協議を行っています。

このうち、県立病院局では県内に5つある各病院に衛生委員会が設置され、それぞれ委員会を毎月開催し、安全衛生管理に努めているほか、3つある保健所衛生委員会についても、毎月1回、委員会を開催しています。

このほか、総括安全衛生委員会に下部組織として「心の健康づくり専門部会」を設置し、県が策定した「心の健康づくり計画」に関する進捗状況や今後の運営等、必要な事項について協議を行っています。

また、各地域、各安全衛生等委員会等において適切な安全衛生管理がなされるよう、毎年度当初に「福利厚生担当者会議」が開催され、会議において安全衛生を取り上げるとともに、各地域の担当者の交流により、県全体としての安全衛生に関する取り組みのボトムアップが図られています。

鹿児島県の安全衛生管理体制 (2017 年4月1日現在)

図:鹿児島県の安全衛生管理体制

 

2 地域ごとに配置された産業医と地区衛生管理者による地域密着の安全衛生活動

鹿児島県では、本庁を含めて県内を15のブロックに分割し、各地域にそれぞれ産業医と地区衛生管理者を設置しています。地区衛生管理者は、各地区を管轄する保健所に勤務する保健師から選任され、担当する地区の安全衛生管理業務のうち衛生にかかる事項を管理するとともに、産業医の業務の補助をしています。

県内各地域についてすみずみまで管理することは容易ではありませんが、鹿児島県では、地域ごとに産業医と地区衛生管理者を設置することで、地域密着のきめ細かい安全衛生管理が可能となっています。総務事務センター技術補佐兼健康管理係長の赤瀨 和代氏が、「安全衛生や職員の健康管理に関して、地域による不公平があってはなりません。」と言うように、鹿児島県では、以前からあった地域ごとの管理体制を維持し、県内全体のきめ細かな安全衛生管理を徹底しています。

また、地区衛生管理者において、県全体の職員の健康管理の状況や相談体制、事例などの情報共有を図るため、年に1回、地区衛生管理者連絡会が開催されています。地域の業務に携わるだけでなく県全体の状況を把握し、各地域が共有することで、地域による偏りをなくすことにつながっています。

写真:赤潮氏

職員の健康管理について熱心に語る赤瀨氏

写真:連絡会の様子を並べた様子

県内各地区の衛生管理者が集まる「地区衛生管理者連絡会」

 

3 職場巡視チェックリストやリスクアセスメントシートを活用した積極的な職場の環境改善への取り組み

職場巡視は、各職場において巡視計画が立てられ計画的に進められています。例えば、本庁等衛生委員会では、巡視後の改善報告を関係所属に対して求めるとともに、巡視時の指摘事項と提出された改善報告書の内容を委員会で報告します。指摘事項や改善報告は、委員会の結果として各職場にも配布というかたちで共有されます。さらに、改善後すぐに状況が戻ってしまうこともままあることから、抜き打ちで再巡視を行い指導することで、改善状況が維持されるよう図っているとのことでした。

大島支庁徳之島事務所安全衛生委員会では、平成25年度からリスクアセスメントシートを導入しています。平成28年度は、各課から職場の安全衛生懸案事項について11件の提出があり、案件ごとに検討した結果、3件について委員会出席者全員による職場巡視を行ったそうです。もちろんその結果は委員会報告として関係所属で共有されるとともに、総括安全衛生委員会事務局にも提出され、委員会で報告されるなどにより全庁共有が図られています。

また、各委員会の職場巡視のほか、「職場点検実施要領」を定めて担当者による職場点検を月に1回実施しています。各所属では安全衛生推進者や衛生管理者等が選任され、定められたチェックリストにより安全面や職員の健康面などを確認し、状況と対策、意見などを書類に記載します。実施結果は地区ごとに取りまとめられ、各地区の産業医及び地区衛生管理者がチェックし、必要に応じて産業医から指導・助言がなされます。チェック後は総括安全衛生委員会の事務局である総務事務センターに集約されることになります。

写真:リスクアセスメントシート

徳之島事務所で導入しているリスクアセスメントシート

写真:チェックシート

毎月各職場でチェックシートによる職場点検を実施

 

4 職員の心と体の健康を支える各種研修会や健康相談事業等

最近の健康に関する課題としてメタボリックシンドロームの予防があげられます。鹿児島県でもメタボ対策に取り組んでおり、「健康づくり教室」として、「メタボ撃退!実践シェイプアップ(行動変容編)」と題して研修会を実施しています。赤瀨氏が、「日常生活に取り入れてもらえるよう、手軽に出来るものを紹介しています。」と言うように、誰もが気軽に取り組むことのできる、筋膜マッサージやスロージョギングなどを取り入れた研修となっています。

これ以外にも、「生活習慣病予防」や「アルコールとたばこ」など職員の健康を損なう身近な問題についての講話のほか、心の健康についても「心の健康教室」として、「ストレスとその解消法」、「お酒と上手につきあおう」など、ストレスマネジメントに関する講話を県内各地区で開催し、職員に心と体の健康管理を訴えています。

職員の健康相談については、実施日を定めてはいるものの、職員の希望に応じて柔軟に日程を調整して対応しています。また、新規採用者については、毎年度、全員に実施しています。一時期、新採後間もない期間に職員が辞めてしまうという事例があったそうで、それをきっかけとして始めたとのことですが、ストレスチェックの結果も活用しながら相談に応じていることもあり、採用されて間もない職員の不安な気持ちに寄り添うことで大きな支えになっているようです。このほか、定期健康診断で要精密検査が3年以上続いている職員については、職員からの申し出を待たず、産業医から呼びかけて面談を実施しているとのことでした。これら様々な取り組みを合わせ、平成28年度は全庁で1,178件の健康相談があったそうです。

このほか、「職員のためのメンタルヘルスハンドブック」を作成し、職員のメンタルヘルスの支援を行うとともに、あわせて「管理監督者のためのメンタルヘルスハンドブック」を作成し、各所属の管理監督者に対して、所属職員の健康状態や言動・行動などの状態の変化などへの気付きや、日頃からの職員への心配り、相談しやすい職場の雰囲気づくりなどを求めています。

総務事務センター長の内和田 浩巳氏が、「一番大事なのは職場での普段の生活です。そのために普段から各職員に目配りし、フォロー、ケアをしてもらいたい。」と訴えます。心や体の不調も普段の積み重ねから生まれて来るものです。「職場での普段の生活が一番大事」という言葉は、皆さんの心に響くものではないでしょうか。

写真:メンタルヘルスハンドブック

管理監督者のためのメンタルヘルスハンドブック

写真:内和田センター長

職場での普段の生活の重要性を訴える内和田センター長

 

アドバイザーより一言

写真:アドバイザーの土屋氏

鹿児島県においては事業場の範囲を課・所単位で捉えて、職員数が50人以上となるすべての課・所ごとに衛生管理者を選任し、建設関係部署を有する50人以上の課・所等については安全管理者が選任されています。また、50人未満の課・所についても、一定の地区ごとにその地区を管轄する保健所に勤務する保健師のうちから地区衛生管理者を選任し、職員の健康管理等の業務に就かせています。

職員の健康管理については、定期健診の結果を自動入力できる健康管理システムを構築しています。3年連続して「要精検」判定となった者については健康相談を実施するなどの取り組みも行っており、平成28年度の定期健診受診率は100%で、このうち本庁職員の要精検率は45.2%と、厚生労働省が公表した全産業における有所見率53.8%(全国)を大幅に下回っています。

現在、一部の部署で実施されているリスクアセスメントについては、国が示した指針に沿って適切に実施されておりますので、今後は、他部署に水平展開し、公務災害や健康障害の防止に努められることを期待します。

中央労働災害防止協会 九州安全衛生サービスセンター
安全管理士 土屋 幸一

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City profile

鹿児島県

鹿児島県の位置図

  • 面積 9186.94km2
  • 人口 1,648,177人
    ※平成27年国勢調査
    (2015年10月1日現在)
  • 人口密度 179人 /km2

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City office

鹿児島県庁

写真:鹿児島県庁

〒890-8577
鹿児島県鹿児島市鴨池新町10-1
取材先:総務事務センター

職員数 24,834人
(2017年4月1日現在)
【内訳】
一般行政  5,059人
教育  15,280人
警察 3,489人
公営企業等 1,006人
(職員数は県HPより)

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