地方公務員災害補償基金 Fund For Local Government Enployees' Accident Compensation

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花巻市

取り組みのポイント

  • 毎月開催される各職場委員会と全庁を総括する衛生委員会合同会議による安全衛生管理体制の確立
  • 管財関係課職員が同行する効果的・効率的職場巡視の実施
  • 消防本部において効果を上げている初任職員指導制度
  • 清掃センター等における効果的な朝礼やKY(危険予知)活動等

花巻市では、現在、設置されているすべての各職場衛生委員会において、毎月1回、委員会を開催しています。

また、全国労働衛生週間の時期をとらえて全庁で一斉に実施される職場巡視では、管財関係課職員が同行する巡視も実施されています。これらの取り組みも含め、花巻市の各職場における安全衛生に係る様々な取り組みを紹介します。

1 毎月開催される各職場委員会と全庁を総括する衛生委員会合同会議による安全衛生管理体制の確立

花巻市に設置されたすべての各職場衛生委員会では、労働安全衛生規則第二十三条1項に従った、毎月1回以上の委員会開催を実行しています。法令で定められた開催回数ではありますが、人員削減と業務の効率化が進められた現在の職場において、毎月1回以上委員会を開催することは決して容易なことではありません。

「法令を遵守し、毎月、委員会を開催してはいますが、ひと月はあっという間で、正直きびしいところはあります。」花巻市衛生委員会の事務局業務を担当する人事課人事係長の藤原 紫穂氏はそう漏らすが、毎月の委員会を意義あるものとするため、また職場の安全衛生の向上のため、各回のテーマを委員に提案いただくなど、関係者や周りの職員の協力も得ながら頑張っています。

もちろん、他の職場も委員会を毎月開催して行くにあたり、いかに効果的、効率的に開催するか考えています。花巻市消防本部総務課総務係長の髙橋 寿和氏によると、「所属長の会議を毎月開催しているので、その会議の後に消防衛生委員会を合わせて実施しています。」とのこと。別の会議と合わせての開催は、出席する側からすれば効率的でありがたいものです。当然ながら、主催者が同じであれば、主催者側は両方の会議の準備を同時並行で行わなければならず、それだけのご苦労があるはずですが、やはり、委員会を毎月開催し、職場の安全衛生の推進につなげたい、という思いでやっておられるようです。

なお、花巻市では、3つある総合支所について、いずれも職員数が50人未満ですが、それぞれ衛生委員会が設置されています。藤原係長によると「職員数は50人未満ですが、本庁から離れた職場なので、安全衛生面の管理をしっかり行うために衛生委員会を設置しています。」と、ここでも安全衛生に関する意識の高さがうかがえました。

また、花巻市はこれらすべての衛生委員会が集まる場として花巻市衛生委員会及び事業所衛生委員会合同会議を年2回開催しています。この会議では公務災害の発生状況や時間外勤務時間数、各種安全衛生の取り組み等について、市全体での統計データや実施状況等による協議を行っており、ここでの話し合いの結果はイントラネットを通じて全職員に周知されるほか、参加者が持ち帰って、各職場の安全衛生管理に役立てています。

花巻市の安全衛生管理体制 (2017 年4月1日現在)

図:花巻市の安全衛生管理体制

写真:藤原氏

委員会の毎月開催の苦労を話す 藤原氏

写真:髙橋さん

初任職員指導制度の効果を話す 髙橋氏

 

2 管財関係課職員が同行する効果的・効率的職場巡視の実施

花巻市では、全国労働衛生週間(毎年10月1日から7日まで)をとらえて全庁一斉に職場巡視を実施しています。この際、花巻市衛生委員会の管轄する本庁舎及び新館においては、衛生委員会の委員のほか、契約管財課の職員が同行して職場巡視が行なわれます。藤原係長は「各職場の不安全な状況を契約管財課の職員が同行して一緒に確認することで、スムーズな改善につながっている。」と言います。管財関係職員が直接状況を把握することで、職場のレイアウト変更やパソコンの導入などで、邪魔になったり新たに必要となった電気配線の整備や窓のカーテンをブラインドへ変更するなど、管財関係課の承認が必要な事案について速やかな対応が可能となっているようです。安全で快適な職場環境の形成を円滑に進める上で、管財関係課の職員が職場巡視に同行するのも有効な方法の一つではないでしょうか。

 

3 消防本部において効果を上げている初任職員指導制度

消防本部では、新規採用者に効果的に且つ、個人の能力に応じて成長できる環境を構築するため「初任職員指導制度」を導入しています。この制度は消防学校初任科を卒業した職員の指導について、統一した指導項目を設けることで初任職員の知識及び技能の標準化を図るとともに、新規採用者1名に対し同じ職場から採用5~10年目の先輩職員2名が世話役となり、日常業務や個人訓練のフォローアップを行う制度です。

新規採用者は、初任教育が修了するとまず現場に配属されますが、当然ながら夜勤等にも就くことになります。ほかの職員と24時間行動を共にする中で、訓練から職員の食事の用意まで業務に付随するすべてのことを行っていかなければならず、世話役や他の先輩職員から多くのことを学んでいきます。「初任教育を終えて職場に配属されたばかりの職員は、最初は何をやったら良いかわかりません。世話役は年齢も近いので悩みや分からないことも気軽に相談できます。」消防本部の髙橋係長が同制度のメリットを話してくれました。

職場全体が新規採用者の指導を理解し相談しやすい環境を作ることで、業務を覚えるだけでなく心の不安も取り除くことにつながっているようです。制度を導入してから新規採用者の退職はゼロだそうです。

現場での迅速な判断と緊密な連携が要求される消防という業務においては、職員同士の意思の疎通は欠かせません。このような人間関係の構築が求められる消防業務には、「初任職員指導制度」は必要な制度と言えるのではないでしょうか。

写真:初任職員指導制度の説明書類の写真

新人消防職員を力強くサポートする初任職員指導制度

 

4 清掃センター等における効果的な朝礼とKY(危険予知)活動等

清掃センターでは、毎日朝礼を行っています。また、朝礼時には危険予知活動表によるKY(危険予知)活動を実施しています。毎回、輪番で担当者を決め、当日の作業内容を踏まえてその日の危険なポイントを提示します。危険なポイントについて、どう対処すれば良いかを職員全員で考え、ひとつの対応策に集約します。「大切なのはみんなで話し合うということです。」清掃センター施設業務係の阿部 勝人氏は言います。「お互いに顔を合わせコミュニケーションをとることが大事。ひとたび災害が発生すれば、職場が困るのはもちろん、損するのはケガをした本人。危険を回避し災害を防止するには情報を伝達しあい共有すること。そのために朝礼は欠かせません。」職員の安全と健康を守り、働きやすい職場を目指す。そんな熱意が伝わってきました。

写真:大川所長

清掃職員の安全と健康に気を配る阿部氏

写真:机の上にある2枚のKY活動表

清掃業務の現場で効果を上げるKY活動表

一方、小中学校の給食を作る給食センターにおいては4S活動を実施しています。教育委員会の石鳥谷学校給食センター所長の大川 広行氏の話では、「調理後の清掃の際、担当を決めて職員全員で実施している。」とのことでした。

また、調理員の研修の際は、地方公務員災害補償基金が企画・作成したDVD「学校給食事業の公務災害ゼロを目指して」を活用しているとのことでした。

このほか、花巻市では、地方公務員災害補償基金からの委託を受け、(一財)地方公務員安全衛生推進協会が実施している「職場環境改善アドバイザー派遣事業」を活用しています。安全や衛生に関する専門家が各職場を巡視し、安全衛生面から見た職場の診断や環境改善に向けたアドバイスを行うというもので、施設設備の改修、改善など、職場の安全衛生の向上に役立てているとのことでした。

また、長時間勤務についてはどこの自治体も大きな課題となっているところですが、花巻市においては、各職場の勤務状況を把握し、年度途中での職員の採用や人事課予算での臨時補助員などで、必要な部署へ人員配置を行うなど、柔軟な対応をとっていました。

写真:阿部氏

給食センターの安全衛生管理体制について語る大川所長

 

アドバイザーより一言

写真:アドバイザーの阿部氏

各事業所の「安全衛生管理規程」に基づき、法定の安全衛生管理体制を構築し、安全衛生計画に基づいた安全衛生活動を積極的に実施しています。

特に、平成22年度から毎年度「職場環境改善アドバイザー派遣事業」を利用(6年間16か所)し、各職場環境の改善や日々の安全衛生活動に積極的に活用しています。

清掃センターでは風通しのよい職場環境づくりを念頭に積極的な声がけによる各自の体調チェック、朝礼時の相互情報伝達を通じての親密な人間関係の構築による明るく生き生きとした職場風土作りを推進しています。

消防本部では「初任職員指導制度」を導入し、無理なく効果的に消防業務の早期習得と安全衛生意識の向上につなげています。特に、日々の活動終了後は必ず意見交換をして検証と反省を行い、実施結果報告書に反映させています。

公務災害の再発防止や類似災害の防止を図るためには、一人ひとりの安全衛生に対する意識を高めていくことが重要です。今後は「安全衛生に関する基本的な知識(法令や必要な知識・ルール)」などの研修会等を計画的に実施していくことをお勧めします。

中央労働災害防止協会 東北安全衛生サービスセンター
安全管理士 阿部 美明

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City profile

花巻市

花巻市の位置図

  • 面積 908.39km2
  • 人口 97,702人
    ※平成27年国勢調査
    (2015年10月1日現在)
  • 人口密度 108人 /km2

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City office

花巻市役所

写真:花巻市役所

〒025-8601
岩手県花巻市花城町9-30
取材先:人事課

職員数 926人
【内訳】
一般行政 597人
教育 136人
消防 147人
公営企業等 46人
 (2017年4月1日現在)

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