Report5 Atsugi City
厚木市
取り組みのポイント
- しっかりとした年間活動計画と各委員の意見に基づく協議事項により計画的に毎月開催される安全衛生委員会
- 公務災害の発生事例と再発防止策を全庁で共有し公務災害を大幅に削減!
- 厚木市独自のユニークな働き方改革「あつぎスマート・ワーク宣言」
- 遊び心もあわせ持つバラエティーに富んだ魅力的なセルフケア企画
安全衛生委員会の毎月開催は、人員削減により職場のスリム化が図られた今日では、どちらの自治体も厳しいとお考えでしょう。厚木市では、各委員の協力により、年間活動計画や各回の協議事項を事前に定め、毎月、計画的に委員会を開催しています。
また、職場の環境改善の一環として、「あつぎスマート・ワーク宣言」により働きやすい職場づくりを目指しているほか、職員の心と体の健康を支援する様々な取り組みを行っていますので紹介します。
1 しっかりとした年間活動計画と各委員の意見に基づく協議事項により計画的に毎月開催される安全衛生委員会
厚木市では、法令に基づき「厚木市職員安全衛生管理規程」を定め、事業場ごとに安全衛生委員会を設置しています。このうち、「その他の事業場職員安全衛生委員会」は、こども未来部を除く市長部局の本庁舎及び第二庁舎の各部局等を対象として設置されています。
同委員会では、毎年度、しっかりとした年間活動計画を定め、計画的に労働安全衛生活動を進めています。全国安全週間や労働衛生週間の啓発の準備・推進、ストレスチェックや検診、ワクチン接種、各種講習会など、毎月の労働安全衛生にかかわるイベントのほか、メンタルヘルス相談を含む健康相談の実施日、面接指導や労働安全衛生の各種業務を計画して一覧にまとめています。どの自治体も実施している事業や業務かもしれませんが、このように一覧を提示し、委員会を通じて全職員に提示することで、各職員の意識付けが確かなものになるのです。基本的ですが、大事な取り組みの一つと言えるのではないでしょうか。
厚木市の安全衛生管理体制(2017 年4月1日現在)
また、同委員会は毎月開催されていますが、その苦労として、職員課給与厚生係副主幹の成田 憲正氏はこう言います。「やはり、職員は通常業務を行いながら委員会に参加するため日程調整が難しい。」また、「毎回、マンネリ化しないよう新しいことを考えるには、資料作りなど時間もかかります。」いずれもなかなか解決できる問題ではありませんが、同委員会では、委員会を効果的・効率的に運用するため、開催に当たって各委員から意見を集め協議事項を決定しています。あらかじめ各委員から意見を聴取した上で、提出時期等も考慮し、年間計画として毎月の協議事項を決定しています。毎回、何を話し合うか悩んでいる自治体もあるかもしれませんが、厚木市のように、年間で協議事項を決めておくことで、中身のある有意義な委員会を安定して開催することが可能となります。さらに、各委員に意見を求めることで、各委員にとっては各職場の状況について改めて考える機会になり、自らが出した議題について協議することで、より真摯にその課題に向き合えるのではないでしょうか。
ところで、先に記載しましたが、この「その他の事業場職員安全衛生委員会」にこども未来部は所属していません。こども未来部は単独で安全衛生委員会を設置しています。これは、子どもたちを相手にする職場であること、またそれに伴う安全衛生面の管理や発生する公務災害の特殊性などを考慮した上でのことだそうです。
効果的な委員会の開催に気を配る成田氏
2 公務災害の発生事例と再発防止策を全庁で共有し公務災害を大幅に削減!
厚木市では、過去に発生した公務災害について、発生事例や再発防止策を全庁で共有し、公務災害の発生件数が多い部署には改めて注意喚起を行うとともに、安全衛生委員会において事例を報告し、再発防止策等について積極的な意見交換を行った結果、平成28年度の公務災害件数は、平成27年度と比較して45件から30件と30%以上減少しました。
他の職場の発生事例や再発防止策が、各職場における類似の災害の発生を未然に防ぐための参考になったことはもちろん、情報を共有し注意喚起を熱心に行うことで、職員の安全に対する意識が大いに高まったことが、30%以上の削減という成果につながったと言えるでしょう。
3 厚木市独自のユニークな働き方改革「あつぎスマート・ワーク宣言」
厚木市では、働き方改革の一環として「あつぎスマート・ワーク宣言」に基づき、長時間労働の削減や職員の健康管理等について積極的に取り組んでいます。
平成29年度からの取り組みで、「私は、職員が市民サービスの向上に尽くし、家族や友人、自分も大切にする「バランス感覚(人間性・情熱・能力)」に優れた職員を目指せるよう、仕事をスマート(無駄なく・手際よく)に進めるとともに、職員のワーク・ライフ・バランスの取り組みを推進し、「働きやすい(風通しの良い)職場」を実現する。」ことを宣言し、市長以下部長級36人が宣言書に署名して始まったという大変ユニークなものです。
この「あつぎスマート・ワーク宣言」は市長以下課等長までが宣言をし、働き方について職員への姿勢を示したものですが、所属長が率先して変わることで、職員への変化も求めるものです。その変化の内容は、例えば、
- おもいやりのある上司- おもいやりのある部下
- 部下の話は最後まで聞く- 上司の話は素直に謙虚に受け止める
- 部下のやる気を促し愛をもって最後までサポートする- 仕事を途中で投げ出すことなく最後までやり遂げる
また、
- 時間外は仕事を指示しない- 不要不急な時間外勤務はしない
- 働きやすい職場環境を作る- 整理・整頓・清潔・清掃(4S)に努める
- 代休・年休取得を促進し健康管理をサポートする- 食事・睡眠・運動を意識し健康管理に努める
など、職員が健康で働きやすい職場づくりを目指すためには、やはり、上司と部下の双方が心がけて初めて達成できるものであるということを、改めて感じさせる内容となっています。
また、同宣言に基づく取り組みとして「夕礼」が実施されています。ノー残業デーを徹底するため、終業時に夕礼を行い定時退庁を促しています。夕礼や時間外管理シートの作成を含む長時間労働の防止策が功を奏し、平成29年4月から9月までの時間外勤務時間総数が、前年度比で10%以上の削減と言う大きな成果につながっています。
これらの対策が継続されれば、職員全員が心身ともに健康で働きやすい職場が実現され、市民へのサービスも向上することは間違いありません。
参事兼職員課長の府川 浩明氏は、「変えていくためには、まず、所属長が変わらなければいけない。」として、スマート・ワーク宣言を強力に推進しています。所属長が変わり、そして職員が変わっていく光景が目に浮かびます。取材をさせていただいた部屋には、各課等長のスマート・ワーク宣言とともに所属職員の皆さんと一緒に笑顔で写った写真が飾ってありました。
あつぎスマート・ワーク宣言
スマート・ワーク宣言の推進に
意欲的に取り組む府川課長
各課等長のスマート・ワーク宣言と集合写真
スマート・ワーク宣言を推進する
職員課長のスマート・ワーク宣言
◎ 「あつぎスマート・ワーク宣言(働きやすい職場宣言)」 についてはこちら
≪厚木市ホームページ≫http://www.city.atsugi.kanagawa.jp/shiminbenri/kurasi/koyou/saiyou/smartwork/d038290.html
4 遊び心もあわせ持つバラエティーに富んだ魅力的なセルフケア企画
職員の健康支援策はどこの自治体も実施していますが、厚木市では遊び心のある様々な企画が実施されています。職員課主幹兼給与厚生係長の田中 直樹氏が「職員厚生会(互助会)と連携して実現させました。」と言う「アロマテラピーセルフケア講座」では、希望者を募りアロマの効用を学んだほか、自分の好きな香りを選んでアロマスプレーを作るなどし、職員にも大変好評だったとのことでした。また、体の健康に着目し、「本気のターザンごっこ、手ぶらでバーベキュー」をテーマとしたアスレチック&キャンプ体験などを実施しているほか、「筋力トレーニング」を取り入れた健康管理セミナーを実施しているとのことで、職員の健康増進のため様々な興味深い企画をされていました。
職員の健康支援策について話す田中氏
メンタルヘルス対策としてのアロマテラピー体験
アドバイザーより一言
厚木市職員安全衛生管理規程を昭和63年に制定し、社会情勢の変化に応じて適宜改正しています。環境センター、その他の事業場(本庁舎など)等では、毎月委員会を開催しています。また、市立病院では毎月職場巡視を行っており、その他の事業場でもリスクの大きさ等に応じて実施しています。指摘箇所及び改善点は文書で発行し共有化を図っています。
厚木市では、ストレスチェック制度が義務化される以前、平成6年からストレスチェックを実施していました。また、「あつぎスマート・ワーク宣言」により、働きやすい職場づくりを推進しており、各課等長を中心に所属職員一同の写真を撮影するなど啓蒙を図っています。ユニークで優れた活動であり、今後も継続してください。
今後は、安全衛生活動の目標(ありたい姿、極力数値目標が望ましい)を設定するとともに、目標を達成するための実行計画を現在の行事計画にプラスすることをお勧めします。進捗を確認し必要に応じて改善措置を行うことにより、より高い安全衛生水準を目指しスパイラルアップできます。今後の活動に期待いたします。
中央労働災害防止協会 関東安全衛生サービスセンター
安全・衛生管理士 川口 泰史