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専門部署を設置して安全衛生の取り組みを強化越谷市

取り組みのポイント

  • 職員の安全衛生を担当する専門部署として「安全衛生管理課」を設置
  • 全ての安全・衛生委員会が月1回の委員会開催を実施
  • 職員安全衛生調整会議を通じて各委員会が情報を共有

越谷市では、月1回の委員会開催などが事業場ごとに実施されています。また、課題であるメンタルヘルス対策では、産業保健スタッフの充実や産業医面談の強化等が図られています。こうした活動を安全衛生の専門部署である「安全衛生管理課」が中心となって推進する越谷市の取り組みを紹介します。

1 安全衛生の専門部署を設置

越谷市では、平成24年度まで、労働安全衛生に関する業務を人事課厚生担当が所管していました。しかし、平成25 年度、市は同課から安全衛生業務等を切り離し、これを単独で処理する安全衛生管理課を新設しました。設置の経緯 について、安全衛生管理課長の菊地 栄一氏はこう語ります。「メンタルヘルス不調の職員が増加していたことなどから、 健康確保等への取り組みの充実、強化が求められていました。当課の新設はその対応の一環であり、安全衛生の専門部署として課レベルでの推進体制を整え、各種対策をこれまで以上に推し進めていこうというものです。」

写真:菊地課長

研修等を充実させ職員のスキルアップを図っていますと語る菊地課長

設置時には6人であった職員数も、現在は7人と体制強化が図られ、産業医面談や研修会の実施回数の増加、全国安全週間等における取り組み(職場巡視や啓発)を新たに実施するなど、安全衛生活動の充実につながっています。また、 専門部署として役割がより明確になったことから、同課は職場巡視や研修会等の機会を通じた安全衛生活動の積極的 なアピールにも努めています。安全衛生管理課主幹の井上 雅樹氏は「青い腕章を付けて職場巡視を行うことで、職員 も衛生委員会の存在に気付くようになりました。活動が周知されてきたことの表れを感じます。」と語りました。

写真:壁に貼られている標語

安全・衛生週間の期間中安全衛生標語が庁舎内に掲示される

写真:職場環境のチェックをする委員のみなさんの様子

照度測定など作業環境のチェックを行う委員。青い腕章で活動をアピール

さらに、懸案であった健康管理対策の充実も図られました。産業医面談は従来の月1回(午後)から毎週1回(午前・ 午後)へと増加。コマ数では8倍となっています。保健師で安全衛生管理課副課長の佐々木 明美氏は、「産業医の助言を得て職場復帰支援がより迅速に行われるようになりました。また、これまでは発症後の事後的な対策に時間が割かれていましたが、産業医面談の回数を増加したことで、メンタル不調の予備軍的な職員を把握し所属長と連携を図るなど予防的対応についても早期対応が可能となりました。」と効果について語りました。

安全衛生管理課の設置は、 安全衛生を重視する市の姿勢の表れです。その期待に応えるべく、同課は安全衛生の向上に日々取り組んでいます。

写真:佐々木副課長

産業医との連携が深まったと話す佐々木副課長

2 調整会議による委員会相互の連携

労働安全衛生法令では、毎月1回の安全・衛生委員会開催を定めていますが、「議題がない」、「委員が集まらない」等の理由から実践できていない自治体も少なくありません。そうした中、越谷市では、市職員安全衛生管理規程に基づき設置された6つの安全・衛生委員会全てで月1回の委員会開催が適切に実施されています。

越谷市安全衛生管理体制

図:越谷市安全衛生管理体制図

菊地課長は「市の管理規程に定められた事項ですから。」と当然のように話しますが、委員会を形骸化させないための工夫を怠りません。例えば、年度当初に開催日と議題の概要をあらかじめ決めておくことで委員への意識づけを図ります。これにより参集率も高まるといいます。また、健康診断受診状況や職場環境測定の結果等の報告事項も多数あるので、毎回様々な意見が交わされ、委員会の活性化が図られています。ほかにも、全ての委員会が年間活動計画を作成し、効果的な活動の実施とその評価、検証を行い、次年度計画に活かすなど、安全衛生の基本的事項を確実に実施しています。

写真:隔月で実施される空気環境測定の様子

隔月で実施される空気環境測定

ところで、こうした活動が全庁的に展開される背景には、本庁舎衛生委員会の強力な指導があるものと思われますが、意外なことに、6つの委員会は規程上対等であり、メンタルヘルス対策等の全庁的な取り組みを除き、本庁舎衛生委員会が他の委員会の活動に介入することはないといいます。独立性の高い組織体制にありながら、統制のとれた取り組みが実施されている理由の一つには、市が独自に設けた「市職員安全衛生調整会議」の存在があります。委員会相互の情報共有の場として設けられた調整会議には、各委員会から委員と事務局の代表者が参加し、公務災害防止に向けた共通目標の確認や年度計画の取り組み状況等の報告が行われます。その効果について、井上主幹は「各委員会の活動概要が把握でき、お互いによい刺激になります。」と語りました。また、菊地課長は「本庁舎衛生委員会が各委員会の見本となるよう心掛けています。調整会議を通じて、他の委員会委員の意識を高めるなど、啓発にもつながっていると思います。」と評価します。

写真:全ての事業場の職員を対象に開催されるメンタルヘルス研修の様子

全ての事業場の職員を対象に
開催されるメンタルヘルス研修

このように、制度上は横並びでありながらも、本庁舎衛生委員会がリーダーシップを発揮し、他の委員会をけん引することで、市は統制のとれた全庁的な安全衛生活動を展開しています。

写真:井上主幹

各委員会とも安全衛生の意識は高いですと語る井上主幹

3 各事業場で展開される安全衛生活動

それぞれの事業場ごとに積極的な活動が展開される越谷市の安全衛生。例えば、学校給食事業所安全衛生委員会では毎年度「学校給食運営の手引き」の見直しを図っています。一番気を使っていることは、各職場(所長、栄養士、調理員)の意見を反映させること。このため、まずは現場である給食センターのミーティング等で検討し、所長会議や栄養士会議でさらに検討を重ねるなどの手順を踏み、共通認識を図っています。

写真:学校給食運営の手引き

学校給食運営の手引き

また、環境資源事業所安全衛生委員会では、DVD教材を使用した安全教育や近隣事業場の視察等を実施しています。委員会も毎月1回、年間で12回開催していますが、うち1回はごみ処分業務の委託先事業者と合同で実施するなど、安全意識の共有に努めています。現在、同委員会では、KYT研修を検討しているそうです。市リサイクルプラザ運転業務主任の川尻 誠氏は「事故を起こさないためにも職員の意識改革は必要です。そのため、職員にKYT研修を受講させたいと考えています。予算面から課題も多くありますが、全職員に受講させたいので、外部研修への参加ではなく、事業場内研修を目指して検討を進めています。」と更なる安全の向上に意欲を見せています。

写真:川尻主任

事務局として委員会活動をけん引する川尻主任

こうした各事業場の取り組みについて、井上主幹は「どの事業場も安全衛生の意識は高いです。お互いの良いところを参考にして活動の質を高めていきたい。」と語りました。それぞれの事業場に共通する安全衛生意識の高さ。各担当者のお話を伺い、事故のない安全な職場を築きたいという強い思いが伝わってきました。

アドバイザーより一言

写真:アドバイザーの川口氏

越谷市では安全衛生の専門部署である安全衛生管理課を中心とした体制を整備しています。市職員安全衛生管理規程に基づく安全・衛生委員会は6つありますが、その全てで毎月欠かすことなく委員会を開催するとともに、各委員会の代表が参加する職員安全衛生調整会議を開催し、意見集約と事務局からの情報提供により、統制の取れた活動を行っています。

委員会単位で作成する安全衛生管理計画では、基本的な事項を全組織統一するとともに、作業部門における安全活動の充実など各組織が固有の事項を追加していくことで、漏れのない計画を策定しています。そして新年度計画には前年度の自己評価結果を記載するなど、PDCAの視点を取り入れています。

メンタルヘルス対策では、精神科医による相談回数を増やすなど様々な施策を行っています。社会的にメンタル不調者が増加傾向にある中、横ばいを維持していることからも、これらの施策が功を奏しているものと思われます。

今後はストレスチェック制度による集団的な分析などを活用し、更なるメンタルヘルス対策が進むものと期待しています。

中央労働災害防止協会 関東安全衛生サービスセンター
安全・衛生管理士 川口 泰史

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City profile

埼玉県越谷市

埼玉県越谷市の位置図

  • 面積 60.24km2
  • 人口 339,049人
    (2016年12月1日現在)
  • 人口密度 5,628人 /km2

見どころ

写真:南越谷阿波踊り 日本三大阿波踊りの一つ
南越谷阿波踊り

特産品

写真:クワイ 越谷市を代表する農産物の一つとして知られる「クワイ」

広報キャラクター

写真:広報キャラクターのガーヤちゃん 越谷特別市民「ガーヤちゃん」

City office

越谷市役所

写真:越谷市役所

〒343-8501
埼玉県越谷市
越ヶ谷四丁目2番1号
取材先:安全衛生管理課

職員数 2,789人
【内訳】
一般行政 1,462人
教育 286人
消防 327人
公営企業等 714人
(2016年4月1日現在)

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