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目配り、気配りの視点から安全衛生を推進東広島市

取り組みのポイント

  • 下部組織を設置し安全衛生委員会の活動を活性化
  • 職員10人未満の職場に安全衛生推進者を選任
  • 他の自治体の事例等を参考に安全対策を強化
  • 所属長をキーパーソンとしたメンタルヘルス対策を推進

東広島市では、消防局を除くほとんどの職場を市安全衛生委員会が管轄しています。多くの職場を抱える委員会では、事務局である職員課が中心となって、保育所等への集中的な職場巡回など、出先機関や小規模職場を意識した取り組みを実施しています。こうした多様な職場に対する目配り・気配りの視点から安全衛生の向上を図る東広島市の取り組みを紹介します。

1 多様な職場への目配りで安全衛生活動を推進

東広島市安全衛生委員会が管轄する職場は、市長部局のほか、水道局、教育委員会など広範囲に及び、対象職員は1000人を超えます。規模の大きな委員会ですが、その活動には多様な職場・職種への目配り、気配りが見て取れます。

東広島市安全衛生管理体制

図:東広島市安全衛生管理体制

例えば、毎月第二水曜日に実施される産業医等による職場巡回(産業医巡視)は、対象を出先機関に絞って行われています。保健師で職員課主査の市野 裕子氏は「事務局の目が届きにくい保育所等の出先機関に対して、こちらから出向いて状況を把握しようということで始まりました。」とこの取り組みの経緯について語りました。当日は巡視とあわせて健康相談も実施し、職場環境、健康状況の両面をチェックしています。

また、委員会の下部組織として設置された「給食調理員安全衛生部会」には、現場のある職場・職種の連携への配慮が伺えます。部会設置の目的について、市野主査は「給食現場における安全衛生は、調理員の経験や知識、技能等に負うところが大きいので、調理員同士で作業環境や作業管理の実態等を話し合える場を設けました。」と語りました。部会では調理員による職場巡視や定期的な研修、連絡会の開催など、職場委員会的機能を発揮し、積極的な活動が展開されています。

ほかにも、保育士等を対象とした「腰痛予防講座」の開催や10人未満の職場への安全衛生推進者の設置など、現場のある職場や小規模な職場を意識した取り組みが行われています。多様な職場を抱える委員会を適切に、効果的に運営するためのポイントは、こうした目配り、気配りにあるようです。

写真:職員課の皆さん

職員課の皆さん。事務局として安全衛生を推進する市野主査(前列左)と下宮課長補佐(前列右)

2 事例を参考に職場の安全をパワーアップ

市安全衛生委員会では、研修や健康診断、ストレスチェック制度等を全庁的に実施していますが、特に目を引くのが職場巡視の充実です。出先機関を対象とした産業医巡視のほか、本庁舎を中心とした委員会巡視、給食調理員安全衛生部会による巡視など、対象別、目的別に展開しています。

このうち、委員会巡視では、事務局が作成した「チェックリスト」を用いることで、巡視漏れを少なくし、評価基準の均一化を図る等の工夫が見られます。また、巡視対象とならなかった本庁の各職場については、「チェックリスト」 による自己チェックの実施と委員会への結果報告を求めるなど、その取り組みは徹底しています。

委員会巡視の結果は、事務局が報告書をまとめ、改善に役立つ参考情報として全庁に周知されます。また、各所属から提出された自己チェックリストについても、毎年、各課の対応事例を付し、フィードバックしています。

写真:調理場の収納棚の整理状況を確認している職場巡視の様子

調理場の収納棚の整理状況を確認
(給食調理員安全衛生部会職場巡視より)

写真:チェックリスト

他団体の事例を参考に作成された委員会巡視用のチェックリスト

このような市の熱心な取り組みには、他の団体の事例が生かされています。「自分たちの知識や経験だけではとてもカバーしきれないので、他の事例を研究し、その良い点を取り入れるようにしています。」と市野主査は語りました。

ロッカーの上から書類や荷物が撤去されたなど、本庁執 務室の環境は以前に比べ改善されたといいます。更なる改善に向けて、職員課課長補佐兼給与厚生係長の下宮 文子氏はこう語ります。「事務局が再三指摘、注意してきたことにより、職員も自分の問題として捉えるようになったのではないでしょうか。こうした職員の気づきを促すことで、安全衛生の向上に少しでもつなげていきたいです。」

写真:安全点検報告書

委員会巡視の結果をまとめた安全点検報告書

 

3 職場ミーティングによる再発防止対策

公務災害を少しでも減らすためには、発生した事故を検証し、再発防止対策を講じておくことが大切です。不幸にして公務災害が発生してしまった場合、市はその対策として職場に「再発防止ミーティング報告書」の作成、提出を義務付けています。「発生した災害について、どのような場所・状況だったのか、どのような行動をとったのか、どうすれば防げたのか、今後どのような対策をとるのか等を職場で徹底的に話し合ってもらいます。この内部検証が重要です。」と市野主査は言います。

徹底した話し合いを経て作成された報告書には、災害状況がより分かりやすいよう写真や略図等を添付し、事務局に提出されます。そして、委員会において、より客観的な視点から検証した後、関連する事業所等に対して情報提供を行い、周知を図っています。速やかな原因究明と今後の対策、そして情報を共有し類似の災害を防ぐこと、これが再発防止のポイントです。市の実施する「再発防止ミーティング報告書」は、そうした基本を押さえた好事例といえます。

再発防止に向けた取り組みのフロー

4 所属長向け手引書等で職場のラインケアを推進

東広島市における相談体制フロー図

図:相談体制フロー図

メンタルヘルス不調の職員が増加傾向にあるなど、市の 安全衛生にとって、メンタルヘルスへの対応は大きな課題 です。このため、市では産業医や保健師等による相談支援 をはじめ、各種研修の実施、セルフケア、ラインケア、復職支援など、さまざまな対策 を講じてこの問題に取り組ん でいます。

特徴的なのは、所属長の役 割を重視した取り組みを多く 展開していること。「所属長 を意識したのは、職場におけ るラインケアをしっかり実施 してもらうためです。」と市 野主査は言います。

例えば、階層別メンタルヘルス研修において、所属長は 昇任1年目と2年目の連続した受講が義務付けられていま す。これは、2年目に入ると慣れや油断が生じやすくなる ことから講じられた措置です。また、部下に対するケア活 動への対処として所属長用の「手引書」を作成。現場にお けるマニュアル、また、所属長研修における教材としても 活用しています。

「保健師だけですべての事案に対応することは困難です。 所属長の理解と行動が必要となるので、そのためにできる 限りの支援をしていきたいです。」と市野主査は語りました。

こうした取り組みによって、以前に比べ早期に復職でき るケースが目立ってきたといいます。下宮課長補佐は「早 期受診につながった結果ではないでしょうか。所属長だけ でなく、職員、職場の理解も進んできています。徐々にで はありますが、体制は着実に整いつつあります。」と取り組 みの効果を語りました。

写真:手引の写真

職員課が作成した「所属長の対応手引」

アドバイザーより一言

写真:アドバイザーの田村氏

委員会による本庁舎職場巡視では、 巡視時の写真を活用した安全点検報 告書を作成し、指摘だけでなく好事例 も紹介するなど、効果的に職場環境改 善に取り組まれています。  

ストレスチェック制度導入にあたって は、実施前に安全衛生委員会で、周知方法、実施体制、実 施方法、情報の取り扱い、職員に対する不利益な取り扱い の防止等についてしっかりと調査審議されているなど、メ ンタルヘルス不調の未然防止の段階である一次予防につ いても話し合われており、制度の趣旨を正しく理解して実 施に向けて適切な対応が図られています。  

お話を伺う中で、事務局職員の方が幾度となく「気づい てほしい」という言葉を使われていたことが印象に残って います。安全衛生は一人ひとりの「気づき」と、みんなで 「気づきあう」ことが大切です。現在の取り組みをしっかり と継続されて、更なる、安全・健康・快適職場づくりを目指 していかれることを期待します。

中央労働災害防止協会 中国四国安全衛生サービスセンター
安全管理士 田村 聡

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City profile

広島県東広島市

図:広島県東広島市位置図

  • 面積 635.16km2
  • 人口 185,837人
    (2016年11月30日現在)
  • 人口密度293人 /km2

見どころ

写真:酒まつりの様子 酒まつり

特産品

写真:東広島の日本酒 東広島の日本酒

キャラクター

イラスト:観光マスコットののん太 東広島市観光マスコット
「のん太」

City office

東広島市役所

写真:東広島市役所

〒739-8601
広島県東広島市
西条栄町8番29号
取材先:職員課

職員数1,542人
【内訳】
一般行政 949人
教育 161人
消防 283人
公営企業等 149人
(2016年4月1日現在)

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