Report4 Anan City
委員会の毎月開催を継続し安全衛生を着実に推進 阿南市
取り組みのポイント
- 全ての事業場で月1回の委員会開催を実施
- 安全衛生だよりを毎月発行し活動をアピール
- 産業医を増員し健康相談業務等を充実・強化
- 「公務災害防止月間」を設定し全庁的活動を展開
阿南市では、安全・衛生委員会の月1回以上の開催という労働安全衛生規則の規定を適切に実行しています。これは、委員会活動は市の安全衛生の基本という考えのもとに、歴代の担当者が取り組んできた成果です。また、毎月発行する「安全衛生だより」も、委員会開催と並ぶ命題として担当者に引き継がれてきました。基本だからこそきっちりと行わなければいけない。こうしたシンプルな取り組みを確実に積み重ね、職場の安全衛生向上に努める阿南市の取り組みを紹介します。
1 月1回の委員会開催を継続
阿南市では、市安全衛生委員会規程に基づく本庁等委員会と環境管理部委員会及び市消防衛生管理規程に基づく消防衛生委員会の3つの委員会が設置され、その全てで月1回の委員会開催が実施されています。「毎月必ず開催すること。」歴代の担当者は、事務引継の際、前任者からこう言われるそうです。人事課厚生係係長の西岡 賦文氏は「毎回の議題設定や資料作成、議事録作成など大変な面もありますが、歴代担当者が苦労して実施してきた取り組みですから、しっかりと継続していきたいです。」と担当者として、毎月開催への思いを語ってくれました。
阿南市安全衛生管理体制
もちろん、ただ開催すればよいというわけではありません。事務局の説明だけで終わってしまうことのないよう、委員会運営には気を配ります。重視するのは適切な議題設定。熱中症など時期によって発生しうる問題をタイムリーに取り上げたり、社会的関心事であるメンタルヘルス対策を毎回議題に設定する等の工夫をしています。こうした取り組みにより、各委員の発言も活発になり、十分な討議が行われるようになりました。例えば、職場巡視における職場の選定は委員の意見等を踏まえ行われます。また、衛生管理者資格取得に係る費用の予算措置も委員の提案をきっかけに実現した施策です。
本庁等委員会開催風景
人事課長の井上 正嗣氏は、委員会運営のあり方、重要性についてこう語ります。「委員会や部会に参加する職員は、年齢や職種、職位も様々です。それぞれの立場から意見を出し合い、知恵を絞れば、よいアイディアも生まれます。そういう場として、委員会や部会を運営するよう心掛けています。」
御自身も安全衛生事務の担当者として
毎月開催に携わった経験を持つ井上課長
毎月1回の委員会開催をしっかりと実施する阿南市。安全衛生に携わる職員が基本的な活動を日々積み重ねながら、着実に充実・強化が図られています。
2 給食調理場への巡視を重点的に実施
安全・衛生委員会の毎月開催に伴い、年間を通して様々な活動が展開される阿南市。職場巡視では、委員会ごとにオリジナルのチェックシートを用いた効率的な巡視が実施されています。本庁等委員会では、各委員が手分けをして本庁舎内の全ての職場を回ります。一方、出先機関については、給食調理場や保育所等を重点的に実施。公務災害発生件数が多い給食調理場に対しては、調理作業の時間に合わせて巡視することで、職場環境、作業環境の問題点等の発見に努めています。
現業の職場も管轄する本庁等委員会は、安全面の課題も少なくありません。井上課長は、「調理や保育等の職場では、ストレッチを行うなど、自分でできるケアをすることも大切です。機会を捉え、職場や職員に伝えるよう努めています。また、ミーティングなどで、危険について話し合うだけでも効果はあるはず。KYT(危険予知訓練)などの有効な対策を検討していきたい。」と災害防止に向けた今後の対応について語りました。
学校給食調理場での職場巡視の様子
環境管理部委員会職場巡視の様子
ほかにも、市では毎年6月を「公務災害防止月間」に設定し、各職場に事故防止を呼びかけています。期間中の重点目標は、本庁等委員会の中で検討されます。平成28年度は、「交通労働災害の防止」や「ストップ!転倒災害」等を目標に、運転前の自己点検や職場内の転倒危険箇所のチェックなど、職場ごとに主体的な取り組みが実施されています。
庁内向けに作成・配付されたチラシ
(公務災害防止月間)
3 読ませることを意識した安全衛生だより
安全衛生活動を職員に周知するため、地方公共団体の多くが、安全衛生ニュース等の広報・啓発活動を行っています。その性質上、内容は委員会の開催結果、健康診断や相談等の事務的な情報が中心となりますが、阿南市本庁等委員会が発行する「安全衛生だより」は、少し趣が異なります。クイズや産業医のコラムなどを盛り込み、毎号4ページから成るバラエティに富んだ力作です。
安全衛生だよりに掲載中の産業医のコラムは職員にも好評
クイズは「衛生管理者試験に挑戦!」と題して、毎回過去問題を1問出題。「衛生管理者の資格取得に必要な知識はどういうものかを知ってもらいたい」という西岡係長の発案で始まった企画です。また、産業医のコラムは「DR.かじさんの言葉の輝き」などタイトルも個性的。安全衛生にこだわらず、個人的な話を含めた‘ざっくばらん’な内容となっています。
もちろん、委員会活動や各種のお知らせも丁寧に掲載しています。特に委員活動概要では、毎回、会議風景の写真を載せ、リアリティを演出。また、職場巡視結果の報告では、巡視の様子とともに、好事例に選ばれた職場の声を取り上げます。職員のコメントは必要以上に脚色しないとのこと。こちらも、「リアリティがあってよい」と職員に好評のようです。
以前は市民向け広報を担当していたという西岡係長。個性豊かな「安全衛生だより」には、かつての経験を活かした工夫が随所に見て取れました。
本庁委員会の会議写真を掲載
(安全衛生だより)
4 産業医増員などメンタルヘルス対策を強化
阿南市では、精神疾患に起因する長期病休者が増加しているなど、メンタルヘルス対策が職員の健康管理上の大きな課題となっています。対策強化の一環として、市は平成28年度、産業医(精神科医)を1名増員し、3名体制としました。これにより、医療・健康相談も充実。その効果について、西岡係長は「精神科医の産業医相談新設に伴い、利用件数が増加しました。早期発見につなげる意味でもよい傾向だと思います。」と語ります。産業医への相談では「医療・健康についてどんな相談でも構いません。」と気軽に相談できることを職員にアピールしています。
また、メンタルヘルス教育では、臨時職員を含む全職員を対象としたセルフケア研修を実施。これは、市の業務を行う者で、ストレスを感じる可能性のある全ての者を対象とするとの考えから実施しているものです。
このほか、徳島県市町村職員共済組合が実施する「メンタルヘルス対策事業」を活用し専門家の助言、指導を受けるなど、外部支援策も積極的に取り入れ、メンタルヘルス対策の強化に努めています。
産業医3名体制の効果について語る西岡係長
全職員を対象としたセルフケア研修
平成28年度導入予定のストレスチェック制度への対応については、本庁等委員会に「メンタルヘルス対策部会」を設置。実施体制や情報の保護、職員への周知方法等について、産業医を交えて検討を進め、平成28年10月、臨時職員等を含めた全職員を対象とするストレスチェックが実施される予定です。
ストレスチェック実施後は、その結果を踏まえ、どのように職場環境改善につなげていくのかなど、検討事項や取り組むべき課題は少なくありませんが、西岡係長は「衛生面の取り組みを適切に実施することで、事故防止等の安全面と合せ、バランスのとれた活動に取り組んでいきます。」と前向きに語ってくれました。
アドバイザーより一言
安全・衛生委員会を毎月1回必ず開催するなど、基本的な取り組みを適切に実施されています。また、毎年6月を市独自の「公務災害防止月間」として設定し、広報・啓発活動等を展開されるなど、安全衛生に対する意識の高さが伺えます。毎月発行される「安全衛生だより」は、内容があまり固いものにならないよう工夫をされています。衛生面においても、精神科医、整形外科医、内科医と3名の担当産業医が、それぞれ月1回医療・健康相談を実施されるなど、良好な体制を整えています。
一方で、給食調理場や保育所等で発生した公務災害の中には、類似の事例も見受けられます。
今後は、当該職場において再発防止対策を適切に講じた上で、他の事業場へも類似災害防止のため水平展開を図るとともに、ヒューマンエラーによる災害防止のためのKYTの導入をお勧めします。
中央労働災害防止協会 中国四国安全衛生サービスセンター
安全管理士 矢野 剛一