地方公務員災害補償基金 Fund For Local Government Enployees' Accident Compensation

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Report4 Toyama City

タイマー消灯で長時間労働対策を更に前進 富山市

取り組みのポイント

  • 多様な委員会の活動促進と協議会を活用した連携体制
  • ワーク・ライフ・バランスの観点からタイマー消灯を導入し長時間労働対策を強化
  • 産業医、看護師等が連携した健康管理対策の推進

富山市では事業場ごとに委員会を設置し、業務や規模に応じた活動を実践するとともに、横断的な組織として連絡協議会を設けるなど、事業場個々の活動促進と必要な連携確保の下での安全衛生を推進しています。また、従来から力を入れていた長時間労働対策をワーク・ライフ・バランスの観点から更に強化し、健康維持と生活の調和の促進に積極的に取り組んでいます。こうした活動を通じて安全で快適な職場づくりを進める富山市の取り組みを紹介します。

1 多様な事業場が協議会を介して連携

市では、富山市安全衛生管理規程に基づき、8つの衛生委員会と3つの安全衛生委員会を設置しています。これら11の委員会は、消防や保健所、保育所、総合行政センターなど、職種別、場所別を基本として設けられたものです。ほかにも、上下水道局や市民病院などが、各々の管理規程に基づき委員会を設置・運営しているなど、事業場ごとに多様な委員会が設けられています。

各委員会の活動については、事業場の規模や業務内容等が異なることを考慮し、共通・統一的な取り組みは特に設けず、それぞれが独自の安全衛生活動を実践することを基本としています。

富山市安全衛生管理体制

富山市安全衛生管理体制

※安全衛生管理体制は平成28年度に行政組織の再編に伴う見直しが検討されている

事業場単位での活動を基本とした現実的な体制をとる一方で、事業場をまたがる重要事項等については、部局横断的な組織である安全衛生連絡協議会を活用して取り組むなど、市では全庁体制の仕組みもしっかりと整えています。

連絡協議会は市安全衛生管理規程に基づく11委員会の委員長により構成される組織ですが、市では、所管外の上下水道局労働安全衛生委員会等とも連携をとることで、全庁的な体制を確保しています。例えば、協議会が平成27年度に開催した研修会では、上下水道局労働安全衛生委員会や市民病院衛生委員会等にも広く参加を呼び掛けました。職員課副主幹の中田 陽子氏は「新しく委員となった職員の中には、委員会活動について詳しく知らないという職員もいます。委員の資質向上は全ての委員会の課題でもあるので、協議会として全委員会に声をかけました。」と経緯を語りました。

ほかにも、50人以上の職員がいる学校への衛生委員会の設置や50人未満の職場に安全衛生推進者、衛生推進者を設置するなど、体制整備に努めています。

このように、市では、多様な委員会の活動促進と協議会を活用した連携により、効果的な安全衛生を進め、公務災害防止に取り組んでいます。

協議会主催研修の様子

各委員会の委員を対象とした協議会主催研修の様子

2 タイマー消灯で長時間労働対策を強化

長時間労働対策として、ノー残業デー等に取り組む自治体は多くありますが、富山市でも「さわやかナイスディ」と銘打ち、毎週水曜日の定時退庁を推進しています。平成2年度と比較的早い時期に開始されたもので、同市の長時間労働対策への積極的な姿勢が感じられます。現在は、ワーク・ライフ・バランス推進の観点からこの取り組みを更に強化し、本庁舎においてタイマー消灯(自動制御システムによる執務室照明の一斉消灯)が行われています。

職員課課長代理の中田 祐一氏は「さわやかナイスディでは、午後6時退庁を原則としていました。しかし、実際の現場では、多忙な中でこのルールが徹底されていない面もありました。そこで、平成23年度に庁舎改修を行い、決められた時間になると執務室照明が一斉に消灯されるタイマー消灯システムを整備しました。」と経緯について語りました。

各執務室はタイマー消灯により、水曜日は午後6時(それ以外の日は午後8時)に一斉に自動消灯されますが、緊急の用務を要する場合は、点灯時間の延長協議書を職員課に提出しその承認を受けることで、当該執務室に限り消灯が解除され、時間外勤務が可能となります。タイマー消灯システム導入により、定時退庁の促進と時間外勤務における事前協議の徹底が図られるなど、従前に比べ厳格な運用が図られています。

事前協議手続き

事前協議手続き

タイマー消灯の運用は、時間外勤務の削減だけでなく、業務のあり方を見直すきっかけにもなりました。各部署では業務繁忙期に時間外勤務が集中的に発生しますが、これは定時退庁を促すという管理面からの規制強化だけでは解決しきれない問題です。そこで、市では部局内での応援体制をとり、この問題に対応しています。中田課長代理は「例えば、税務部門においては資産税課では家屋評価等で2月まで忙しい、市民税課は確定申告等で5月まで忙しいなど部署ごとに繁忙期が異なります。このタイムラグをなんとかできないか検討しました。」と経緯について語りました。

その結果、ある課が業務多忙な時期には、同じ部局内から経験者等を応援要員として確保する。また、部内で確保しきれない場合は部局横断的に集めるという仕組みを構築しました。こうした実効性のある取り組みが新たに導入されるなど、タイマー消灯の運用をきっかけに、同市の長時間労働対策は着実に進展しています。

3 産業医と看護師の連携による健康管理の推進

職員の健康管理を効果的に行うためには、医学に関する専門的な知識が不可欠なことから、市では医務室(職員課)に看護師を配置し、職員からの相談に常時対応しています。また、産業医による「医療相談」や臨床心理士による「こころの健康相談」についても、運用面において看護師が中心的な役割を果たしています。

相談はすべて予約制です。職員はまず電話やメールで医務室に申し込みを行い、事前に看護師が相談内容を確認した上で各相談につなげています。看護師で医務室主査の島竹 恵美子氏は「産業医、臨床心理士の相談は毎日の実施ではないので、ある程度の内容を確認して、相談に要する時間等を把握しています。」と語りました。

島竹主査

「医師や臨床心理士が不在の場合も可能な限り
相談に対応しています」と語る島竹主査

こころの健康相談は月1回、医療相談は週1回の実施のため、突発的な相談には対応できないのが実情です。その際には、まず、島竹主査が対応し、必要に応じて産業医と連絡をとりつつ対応を協議するなどの連携体制が確保されています。産業医を務める富山市立富山市民病院外来診療部主任部長の林 茂医師は「自分は週1回の非常勤であるため、看護師が常駐している医務室の体制は非常に役立っています。」と評価しています。

また、医務室では職員健康診断の未受診者対策にも積極的に取り組んでいます。例えば、未受診者に対しては、所属長への通知、次いで職員本人への通知を行いますが、それでも受診されない場合は、医務室から職員本人に電話で受診勧奨を行う等の対策が実施されています。あわせて、産業医が出席する安全衛生委員会において、健診未受診者対策を協議するなど、産業医と看護師が連携を密にした対策が講じられています。こうした取り組みにより、相談業務については、一つひとつの案件にきめ細かに対応できるとともに、健康診断受診率については、平成24年度から3年連続で向上するなどの成果に結びついています。

林医師

本庁と保育所、病院の各事業場で産業医を務める林医師

アドバイザーより一言

アドバイザー/中山氏

富山市においては長時間労働を削減するための仕組みを抜本的に見直し、午後8時に本庁執務室の照明を自動消灯させるとともに、公務上やむを得ず同時刻を超えて超過勤務するときは、事前に協議書を提出させることとしています。長時間労働削減のためには単なる指示・奨励には限界があり、業務執行体制・仕事の進め方の見直しが必要ですが、同取り組みがその契機となり長時間労働の削減につながった好事例といえます。

また、職員に健康確保・増進を促進するため、健康受診率の向上、二次健診受診促進のための方策を講じており、高い受診率を確保しています。特に、一時健診未受診者に対して個別に受診奨励するなどきめ細かな取り組みを行っているのは好事例といえます。

公務災害防止のためには、建築物・設備の安全化とともに職員一人ひとりの安全衛生意識の高揚が不可欠です。そのための方策の一つとして、公務災害事例やヒヤリハット事例の収集と共有化が望まれます。また、法令に基づき各部署に衛生委員会等が設置され定期的に開催されていますが、審議事項が健康診断に係る事項が中心となっているので、安全対策についても適宜審議されることが望まれます。

中央労働災害防止協会 中部安全衛生サービスセンター
安全・衛生管理士 中山 宏

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City profile

富山県富山市

  • 面積 1,241.77km2
  • 人口 418,979人
    (2015.3.31現在)
  • 人口密度 337人 /km2

見どころ

おわら風の盆

特産品

とやまの薬

キャラクター

富山市オリジナルキャラクター
「私立探偵・ペロリッチ」

City office

富山市役所

〒930-8510
富山県富山市
新桜町7番38号
取材先:職員課

職員数3,950人
【内訳】
一般行政 2,072人
教育 419人
消防 465人
公営企業等 994人
(2015.4.1時点)

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