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新庁舎開設・中核市移行を機に安全衛生を更に充実 那覇市

取り組みのポイント

  • 安全衛生委員会の再編による推進体制の強化
  • 個別健診導入を機に全職員の個人面談を実施
  • マンパワーを駆使し相談支援や研修等メンタルヘルス対策を充実
  • デイケアプログラムを活用した先進的な復職支援プログラムを推進

那覇市では平成25年1月に、それまで分散設置されていた本庁舎、教育委員会庁舎等が一体となった新庁舎を開設しました。また、同年4月には中核市へ移行し、保健所業務を開始しています。市では中核市移行等に伴い、安全衛生委員会の再編を図りました。また、スペースの都合から新庁舎内での実施が困難となった職員健康診断の受診方法については、集団受診方式から個別受診方式に切り替えるなどの見直しを行い、受診率向上につなげています。こうした職場や職員を取り巻く環境の変化等に適切に対応し、安全衛生を進めている那覇市の取り組みを紹介します。

1 安全衛生委員会の再編により強化された推進体制

那覇市では、平成25年度の中核市移行に伴い、安全衛生委員会の体制について見直しを図りました。その内容は、保健所安全衛生委員会の新たな設置や、教育委員会安全衛生委員会については、事務局が市長部局と同じ新庁舎へ移転したことからこれを廃止し、職員安全衛生委員会に統合するという大掛かりなものでした。

その際に問題となったのが学校給食業務に従事する調理員の安全衛生確保への対応でした。調理員は公務災害の発生率が高い職種です。その安全衛生を職員安全衛生委員会が適切に管理することは困難と市では考えました。そのため、当面の措置として各学校で構成する連絡組織を設け、学校給食等に係る個別の安全衛生活動を実践してもらうこととしました。その後は人事課と教育委員会とが検討を重ね、平成26年度に学校給食安全衛生委員会を設置。法令に基づく委員会として学校給食に関わる職員が中心となった運営が図られています。また、保健所委員会でも研修会が定期的に開催されるなど那覇市の安全衛生は新庁舎開設、中核市への移行を契機に着実に強化されています。

那覇市安全衛生管理体制

那覇市安全衛生管理体制

2 健康診断結果の全職員面談を実施

市では平成25年度から、健康診断の結果について保健師が総合庁舎に勤務する全職員との面談を実施しています。人事課元気応援グループ主幹の宮良 努氏は経緯について「新庁舎内で健診場所を確保できなかったことから、それまでの集団健診から個別健診へと切り替えを図りました。その際に保健師の提案で全職員面談を実施したものです。集団健診と異なり実施時期が分散されるので、健診結果が届き次第、順次職員面談を行うことが可能となりました。」と語りました。当初は受診率が下がるのではという不安もあり、常に受診状況を確認し未受診者には早期受診を促したといいます。今では職員に定着し、ほぼ100%近い受診率を確保するとともに、面談を通じて職員の不調等を把握しやすくなり、早期対策につなげることも可能となりました。元気応援グループが一丸となって取り組んだことにより、当面する課題の解決にとどまらず、更に進んだ改善が図られました。

宮良主幹

「個別健診を導入するにあたっては
医療機関との調整が課題でした」と語る宮良主幹

3 充実したスタッフによるメンタルヘルス対策の推進

市ではメンタルヘルス対策にも積極的に取り組んでいます。平成15年頃からメンタルヘルス不調者が増加したため、その対策を最重要課題と位置づけ、マンパワーの強化を図ってきました。現在は人事課に配置した3名の保健師と非常勤の産業医、管理栄養士、心理相談員とを合わせた計10名という充実した健康管理スタッフを擁し、様々な取り組みを展開しています。

例えば、随時実施している心と体の健康相談では、保健師が電話やメールも合わせ約4千件の相談に応じているほか、心理相談員や産業医(精神科)によるメンタルヘルス相談、産業医(内科)による健康相談など多様な相談窓口を設けています。また、職場カウンセリングでは、超過勤務の多い職場などリスクの高い職場を保健師と心理相談員が直接訪問し全職員と面談を行います。推進役の一人、保健師で元気応援グループ主査の松原 千枝子氏は職場カウンセリングのねらいについて「早期発見が目的です。ちょっと元気がないなと思う職員がいた場合は、所属長に報告し見守りを促すなど職場とうまく連携をとることが大切です。」と語りました。平成26年度は出先機関も含む5課所で243人のカウンセリングを行うなどマンパワーを駆使した積極的な取り組みを実践しています。

松原主査

職員の健康管理に尽力する松原主査

また、メンタルヘルス教育としては、アルコールとタバコをテーマとした研修を集中的に実施しています。これは、メンタルヘルス不調者との面談の中で、飲酒や喫煙の問題が多かったことから始まった取り組みです。受講者からは「自分が多量飲酒に該当することを知った」などの声も多く聞かれたといいます。松原主査は「アルコールもタバコも薬物であることを改めて考え、受講者がメッセンジャーとなって家族や同僚にも伝えてもらうことをお願いしています。職員や職場の健康づくりの発信源となってほしいです。」と研修への期待を語りました。

こうしたマンパワーによるメンタルヘルス対策を積極的に講じたことなどから、メンタルヘルス不調を抱える職員は平成18年度をピークに減少しています。

メンタルヘルス研修

メンタルヘルス研修
~アルコール&タバコ リタラシー~ の様子

4 デイケアプログラムを活用した復職支援

近年、全国的にメンタルヘルス不調により休職する職員が増加しており、円滑な復職を行うための支援に取り組む自治体は少なくありません。那覇市でも平成19年度から復職支援に取り組んでいます。具体的には、職員とその主治医、所属職員、産業医等との連携のもと復職支援プランを作成し、リハビリ出勤の期間や所属長による業務上の配慮、定期面談等のフォローアップなどの基本事項を定めて計画的な支援を行います。リハビリ出勤は病気休暇中に実施されるため、事故等に遭った場合の補償がネックとなりますが、市では職員互助会である那覇市職員厚生会が当該職員のための保険に加入し、万一の事態に備えています。宮良主幹は「可能な限り安心できる環境を整えることが大切です。対象職員のリスクを回避するだけでなく、所属も安心してリハビリ出勤を支援することができます。」とその効果について語りました。

職場復帰支援のフロー

職場復帰支援のフロー

また、市では、職場復帰後に再発し再び休職になってしまうケースが多く見受けられたことから、再発防止にも力を注いでいます。デイケアプログラムの活用もその一つです。これは、復職後6か月以内の職員から申し出があった場合、沖縄県総合精神保健福祉センターが実施しているうつ病のデイケアへの定期的な参加を認めるもので、通所は職務専念義務免除として取り扱われます。宮良主幹は「不調な場合は早めにデイケアを受け回復してほしいという配慮から、治療の一環として職免を認め、その活用を促しています。」と経緯を語りました。

療養からの復職は、新規発生の抑制と並ぶ市のメンタルヘルス対策の大きな目標です。市では、対象職員ととともに受け入れる側の職場にも十分配慮した取り組みを進めることで、早期の復職支援を図っています。

アドバイザーより一言

アドバイザー/土屋氏

定期健康診断は従来、集団健診で実施されていましたが、平成25年度からは、市内の健診機関6か所を指定して、各職員が健診機関に受診の申し込みを行い、4月~9月の期間に受診する個別健診に変更されていますが、そのことが職員一人ひとりの意識を高め、結果的に受診率の向上につながっています。

メンタルヘルス対策では、禁煙及びアルコール教育を重視した教育が併せて実施されていたのが特徴的な取り組みです。また、健康相談では産業医や栄養管理士、心理相談員、保健師など相談窓口がきめ細かに設定されており、いつでも相談できる体制が取られています。

職場復帰後(6か月)の再発防止対策として沖縄県が実施している「うつ病のデイケアプログラム」(3か月、全12回)へ勤務時間中に通所することを可能にするため、職務専念義務の免除制度を設けていますが、これは注目すべき市独自の対策です。

今後は、安全衛生委員会を毎月1回以上確実に開催し、発生した公務災害等について、原因・対策の検討を行い再発防止対策に努められることをお勧めします。

中央労働災害防止協会 九州安全衛生サービスセンター
安全管理士 土屋 幸一

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City profile

沖縄県那覇市

沖縄県那覇市位置

  • 面積 39.57km2
  • 人口 322,581人
    (2015.4.1現在)
  • 人口密度 8.152人 /km2

見どころ

那覇大綱挽 那覇大綱挽
~ギネス認定を受けた
世界一の大綱挽~

特産品

なはのマグロ 市の魚「なはのマグロ」

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〒900-8585
沖縄県那覇市
泉崎1丁目1番1号
取材先:人事課

職員数2,339人
【内訳】
一般行政 1,373人
教育 425人
消防 270人
公営企業等 271人
(2015.4.1時点)

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