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Report12 Morioka City

職場単位の取り組みで安全衛生を向上 盛岡市

取り組みのポイント

  • 市職員安全衛生委員会による総合調整機能を生かした安全衛生管理体制を整備
  • 所属長と職員のつなぎ役となる安全衛生主任を職場単位で設置
  • 職場ごとに時間外勤務縮減取組計画を策定し長時間労働対策を実践
  • 企業の取り組みを学ぶ安全衛生委員会視察を実施

市職員安全衛生委員会を中心とする盛岡市の安全衛生管理体制にあって、その要となるのが、市が独自に設けた安全衛生主任です。職場ごとに設置された安全衛生主任は、所属長と職員とを仲介する役割を担い、機動性、実効性の高い活動を展開しています。また、長時間労働対策では、時間外勤務縮減の目標を職場ごとに設定し、実現に向けた取り組みを実施しています。こうした職場を単位として実効性のある安全衛生を進める盛岡市の取り組みを紹介します。

1 市職員安全衛生委員会を中心とした体制の整備

盛岡市では、市職員安全衛生管理規程に基づき、市職員安全衛生委員会(以下「市委員会」という。)など6つの安全衛生委員会を設置し、職員課人事係が全体を管理しています。最大規模の組織である市委員会は、本庁各課など73課所の職場を管轄するとともに、安全衛生管理計画の作成など市の安全衛生の中心的な役割を担います。一方、他の5委員会は、保健所や分庁舎など職員50人以上の出先機関等を基本として設置されたもので、市職員安全衛生管理規程上では事業所委員会と規定され、市委員会とは異なる取り扱いがされています。

盛岡市安全衛生管理体制

盛岡市安全衛生管理体制

職員課人事係長の菅原 宏文氏は「市委員会を中央委員会的な位置付けとし、各事業所委員会を統括しています。例えば、安全衛生管理計画については、市委員会が全体の計画を作成し、これに基づき、各事業所委員会が個別計画を作成します。活動状況は定期的に報告されるなど、市委員会として各事業所委員会の活動を管理しています。」と管理体制の概要について語りました。

市委員会は、総括安全衛生責任者である副市長をトップに構成され、長時間労働対策やメンタルヘルス対策等の全庁的な取り組みについても総合的な調整機能を発揮し、円滑、効果的な実施を図っています。

2 安全衛生主任が職場の安全衛生をけん引

市は、職場における安全衛生活動の推進役となる「安全衛生主任」を設置しています。安全衛生主任は主に課長補佐級の職員が指名され、所属長の命を受けて職場の安全衛生に関する事務を処理します。職員課人事係主任の板垣 充氏は、「職員の安全衛生は所属長の責務ですが、適切に対応するためにはフォローする者が必要となります。このため、安全衛生主任を設置し、所属長とともに職場の課題把握、解決に取り組む体制を整備しています。」と設置の経緯について語りました。市長部局の全職場に例外なく設置されるので、安全衛生推進者の配置基準以上に手厚い体制となっています。

板垣主任

「5人未満の小規模な職場にも安全衛生主任を設置しています」
と語る板垣主任

安全衛生業務を遂行するにあたっては、労働安全衛生法令や市の取り組み等の基礎的な知識が必要とされるため、市では、年度当初に安全衛生主任を対象とした研修会を開催し、資質向上を図っています。期待されるのは、所属長と職員とのつなぎ役としての役割です。菅原係長は「安全衛生主任は現場に精通する立場から、所属長の補佐や職員からの相談窓口等の多様な役割を担っています。全庁的な対策や連絡事項については、安全衛生主任が主体となって職場への周知等を行います。職場内の体制が構築されたことにより、機動力、実行力は高まっていると思います。」と語りました。

菅原係長

安全衛生主任の役割について語る菅原係長

安全衛生に関する各職場への連絡は、職員課から各安全衛生主任へダイレクトで行われています。また、年3回、執務環境や健康診断受診状況などを把握する「職場チェック」も各安全衛生主任から職員課に提出されるなど、職場における安全衛生のけん引役として、職員課にとっても頼りになる存在です。このように、市では安全衛生主任の設置という独自の取り組みを講じて、安全衛生の一層の推進を図っています。

3 時間外勤務縮減取組計画により職場ごとに縮減目標を設定

地方公共団体では、時間外勤務の縮減に向けた取り組みが継続的に行われていますが、職員配置や業務量など様々な要素が絡むことから、その対策も一筋縄ではいきません。

こうした中、盛岡市では、毎年度「時間外勤務の縮減に関する指針」を策定し、職員の健康保持、ワーク・ライフ・バランス推進等の観点から、工夫を凝らした多様な取り組みを実施しています。

時間外勤務の縮減に関する指針の概要

時間外勤務の縮減に関する指針の概要

例えば、「時間外勤務縮減取組計画」では、職場ごとに前年度の時間外勤務時間数を基準とした縮減率を設定し、職員課に提出。その状況は適宜、副市長に報告されます。また、ミーティングを活用した効率的な事務執行として、概ね16時を目安に係単位でミーティングを実施し、係長が定時退庁に向けた業務配分に努めています。他にも、時間外勤務の上限(年間360時間)の設定、定時退庁日の設定等の管理規制強化や部局内での職員応援体制の強化等に取り組むとともに、疲労度のセルフチェック、医師による面接など、職員の健康への配慮にも努めています。

こうした取り組みにより、平成26年度は前年度に比べ全体時間数で7.6%減、一人当たり時間数でも8.1%の縮減が図られるなどの効果を上げています。

4 民間企業の優れた取り組みを学ぶ視察

安全衛生の優れた取り組みを学ぶための先進地視察。それ自体、さほど珍しい取り組みではないかもしれませんが、盛岡市のように、視察場所を民間企業とする例は少ないのではないでしょうか。菅原係長は「委員会として、民間企業の姿勢、取り組みを学ぶために始めました。県内に工場があり、従業員2千人規模の事業所を選定し、現地での視察と意見交換等を行っています。作業内容や活動基盤など、市と民間企業とでは事情が異なりますが、危険回避、災害防止への意識の高さなど見習うべき点も多くあります。」と概要を語りました。

市職員安全衛生委員会の視察

市職員安全衛生委員会の視察で
企業担当者の説明を熱心に聞き入る委員の皆さん

市では実際に、ある企業の健康管理対策を参考に健康診断受診率向上対策の強化を図りました。板垣主任は「受診状況管理の徹底など、受診率100%を目指す企業の姿勢に刺激を受けました。市でも高受診率を意識していましたが、それが十分ではないという認識を持ち、受診状況の把握徹底や未受診者への勧奨、所見がある職員への事後指導など内容の充実を図りました。」と語りました。

このように、民間企業の視点から安全衛生の基本を学び、その取り組みを生かすことで、市は安全衛生水準の向上に努めています。

アドバイザーより一言

アドバイザー/阿部氏

時間外勤務増加傾向に対応するため、「時間外勤務者自己チェック票」 や職場ごとの「時間外勤務縮減取組計画」を策定して、上司による対象者へのヒヤリングや対象者から上司への状況報告など、増加傾向に歯止めをかけようという良い取り組みを実施されています。

また、各所属長の下に「安全衛生主任」を置いて、安全衛生に関わる事務処理を担当させるとともに、安全衛生主任研修会を開催し資質向上に努めています。

民間企業への視察では、安全・衛生面に関わる気づきを自職場内に取り入れるよう学んでいます。健康診断の受診率の引き上げに関しては、各職場責任者からの積極的な働きかけが大事なことなどを学ばれています。

衛生管理者については、毎週一回作業場等を巡視していますが、今後は良好事項も含めた巡視結果の記録を残すことをお勧めします。

公務災害ではチェーンソーでの災害が繰り返されていることから、現業部門に対しては定期的な安全衛生研修の開催や「ヒヤリハット活動」「危険予知活動」「リスクアセスメント」等の導入などをお勧めします。

中央労働災害防止協会 東北安全衛生サービスンター
安全管理士 阿部 美明

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City profile

岩手県盛岡市

岩手県盛岡市位置

  • 面積 886.47km2
  • 人口 298,857人
    (2015.4.1現在)
  • 人口密度 337人 /km2

見どころ

さんさ踊り さんさ踊り

特産品

南部せんべい 盛岡を代表する味
南部せんべい

キャラクター

さっこちゃん さんさ踊り公式マスコット
さっこちゃん

City office

盛岡市役所

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〒020-8530
盛岡市内丸12番2号
取材先:職員課

職員数2,269人
【内訳】
一般行政 1,415人
教育 371人
公営企業等 483人
(2015.4.1時点)

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