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Report5 Kurasiki City

機能的な推進体制で取り組む安全衛生 倉敷市

取り組みのポイント

  • 事業所単位の職場委員会を設けるなど機能的な安全衛生管理体制を整備
  • 安全衛生の専門係を設置しメンタルヘルス対策など健康管理対策を充実・強化
  • 顧客満足向上の観点から整理・整頓を徹底し安全で快適な職場環境づくりを推進

倉敷市では、整理・整頓の徹底による職場環境の改善やメンタルヘルス対策の充実・強化など様々な安全衛生対策に取り組んでいます。各対策を効果的に推進するため、市では、事業所単位での職場委員会の設置や安全衛生に特化した担当係を設ける等の活動しやすい推進体制を整備しています。こうした機能的な体制のもとで進められている倉敷市の安全衛生の取り組みを紹介します。

1 中央安全衛生会議が統括する推進体制

倉敷市では市職員安全衛生管理規則により、職種を基本とする5つの安全衛生委員会(以下「委員会」という。)を設置しています。このうち、環境事業委員会では、所管する全事業所に職場安全衛生委員会(以下「職場委員会」という。)を設け、安全衛生に係る基本的な対策など、委員会に準じた取り組みが事業所単位で展開されています。職場委員会設置の経緯について、人事課安全衛生係主任の高橋 祥子氏は「清掃事業に係る部署で構成される環境事業委員会は、現場を多く抱えています。そこで、それぞれの実情に応じて活動しやすい体制とするため、下部組織として職場委員会が設置されています。」と語りました。

倉敷市安全衛生管理体制

倉敷市安全衛生管理体制

また、水道局を除く各委員会の統括的組織として「市中央安全衛生会議(以下「中央会議」という。)」が設けられ、各委員会の活動をけん引しています。中央会議は各委員会の総括安全衛生管理者と職場代表委員等で構成され、トップである総務局長が「主任総括安全衛生管理者」として各総括安全衛生管理者を指揮・監督するとともに、全庁的な活動に係る事項の総合調整を行っています。各委員会の活動は定期的に中央会議に報告されるなど、情報の共有化を図りながら、委員会活動が展開されています。

さらに、市では委員会活動を職員に広く周知するため、平成27年度から全職員に向けて「安全衛生だより」の毎月発行を開始しました。高橋主任は「普段から安全衛生委員会活動を職員に周知し、意識を高めてもらうことで、委員会の活動が支持され、活性化につながるものと考えました。」と経緯を語りました。

安全で快適な職場環境が形成され、職員が安心して職務に専念できるようにするためには、安全衛生委員会の活動が重要となります。市では、安全衛生だよりの毎月発行等の新たな取り組みを試みながら、委員会活動の活性化に力を注いでいます。

高橋主任

「委員会の活動を多くの職員に
知ってもらいたいです」と語る高橋主任

安全衛生だより

人事課安全衛生係が作成・発行する
「安全衛生だより」

2 安全衛生係を設置しメンタルヘルス対策等を強化 

倉敷市で安全衛生を担当する人事課安全衛生係は、平成24年度に設置された比較的新しい係です。以前は、職員厚生係として福利厚生とともに安全衛生を担当していましたが、同係が「給与厚生係(厚生部門を従前からある給与係に統合)」と「安全衛生係」に改編された経緯があります。専門担当係の設置を機に、市ではメンタルヘルス対策等の充実、強化を図っています。

例えば、メンタルヘルス研修では、ラインケア研修における対象管理職の範囲を拡大するとともに、産業カウンセラーを講師とする研修を新たに企画するなど、研修体制を強化しています。とりわけ、ラインケアは市が特に重視する取り組みです。保健師で人事課安全衛生係主任の片山 岐美恵氏は「部下のメンタル不調のサインに気づくことは予防の意味からも大切です。また、実際に対応に悩んでいる管理職も多いという現状があります。このため、現場で適切なラインケアが実践されるよう研修を強化するとともに、管理職からの個別相談にも随時応じています。」と語りました。

また、専門的ケアとしては、精神保健福祉士と保健師等による健康相談や、産業カウンセラーによる定例相談等を実施していますが、安全衛生係設置後は相談件数が増加傾向にあるといいます。その要因について、精神保健福祉士で人事課安全衛生係副主任の大野 綾子氏はこう語りました。「健康に不安がある場合は早期に相談を受けるよう研修や職場巡視等の際に呼びかけるとともに、安全衛生だより等で開催情報を提供するなど、効果的に周知できていることが大きいと思います。また、健康管理を専門に扱う係が実施していることが、職員に安心感や信頼感を与え、より利用しやすくなったという面もあるのかもしれません。」

こうした取り組みのほかにも、健康診断未受診者全員への電話督促や産業医と連携した有所見者への対応、復職支援プログラムによる支援等がマンパワーで展開されているなど、安全衛生係の設置を契機に、市の健康管理対策は着実に進展しています。

片山主任

「職場においては管理職による
ラインケアが第一です」と語る片山主任

大野副主任

「職員厚生係時代に比べ相談はかなり
増えています」と語る大野副主任

3 市民を意識した職場環境改善の取り組み

職場の安全の基本は整理・整頓です。倉敷市では10年以上前から、書類等の整理・整頓を徹底し、安全で快適な職場づくりに努めています。人事課主幹兼安全衛生係長の武内 信道氏は取り組みの目的をこう語りました。「CS※(顧客満足)の向上という観点から行っています。市役所は窓口対応が多い職場です。職員の机やキャビネットの上に書類が積み上げられている光景は、市民に良い印象を与えません。市民に気持ち良く市役所を利用してもらうためにも、整理・整頓された清潔な職場環境の維持が大切だと考えています。」

武内主幹

「市民の要望に応えるという視点を意識しています」と語る武内主幹

この取り組みはまず、ファイリングシステムによる文書管理から始められました。文書管理方法を見直すとともに、外部講師による研修を数年間実施するなど、徹底的に改革したといいます。そして、ファイリングシステム定着後は、CSを踏まえた安全衛生活動として、執務室内の整理・整頓等の職場環境改善を実践しています。取り組みの成果について武内主幹は「ファイリングシステムの厳格な運用により、全課所で必要な書類がすぐに出てくるようになっています。机周りの整理・整頓も徹底されているので、置いてある荷物につまずいて災害が発生したという例もほとんどありません。」と語りました。

職員退庁時には書類はすべてキャビネットに収納され、机の上はすっきりと整理された状態が維持されています。職場の安全衛生向上とともに、顧客満足向上の方策でも あるこの取り組みは、しっかりと職員の間に根付いています。

※CS=Customer Satisfaction の略で顧客満足のことをいう

キャビネット

キャビネットには書類が整然と並ぶ

職員退庁後の執務室の様子

職員退庁後の執務室の様子
机上に置かれているのはパソコンと電話のみ

アドバイザーより一言

アドバイザー/原田氏

市職員安全衛生管理規則に基づき職域ごとに安全衛生管理体制が整備されています。また、市中央安全衛生会議を設置し、各委員会の調整等を行うとともに、 事務局が毎月「安全衛生だより」を発行するなど、各職域の安全衛生の情報化が図られています。

健康管理においては、産業医とスタッフとの連携した対応が行われているとともに、メンタルヘルス対策に係る研修(セルフケア、ラインケア)を階層別に計画的に実施されています。

執務室については、机の上、書棚等の整理・整頓の良好な状態が確認できました。

今後は、安全衛生年間計画を策定し、同計画に基づく活動の推進をお勧めします。また、公務災害があった場合は、同種災害の防止を図るため、毎月発行している「安全衛生だより」に情報を掲載し、水平展開を図ることをお勧めします。

中央労働災害防止協会 中国四国安全衛生サービスセンター
安全・衛生管理士 原田 宗徳

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City profile

岡山県倉敷市

岡山県倉敷市位置

  • 面積 355.63km2
  • 人口 483,970人
    (2015.12.末現在)
  • 人口密度 1,361人 /km2

見どころ

美観地区 倉敷を代表する観光スポット
美観地区

特産品

倉敷児島のデニムジーンズ 国産ジーンズ発祥の地
倉敷児島のデニムジーンズ

City office

倉敷市役所

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〒710-8565
倉敷市西中新田640番地
取材先:人事課

職員数3,368人
【内訳】
一般行政 1,932人
教育 508人
消防 442人
公営企業等 486人
(2015.4.1時点)

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