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Report7 Kouchi City

チーム力による安全衛生の取り組み 高知市

取り組みのポイント

  • 部局別委員会を設置して職種別の安全衛生活動を促進
  • 産業保健スタッフの一員である衛生管理者の役割を重視したメンタルヘルス対策を推進
  • 産業医を中心とした巡視チームが職場巡視を実施
  • 自動車教習所を活用し、業務の特性を踏まえた安全運転研修を実施

高知市では、産業医を中心に保健師や人事労務の担当職員がチームを組んで、毎月の職場巡視を実施しています。また、産業保健スタッフである衛生管理者を職場の相談窓口として、産業医や保健師等と連携した事業場内メンタルヘルス推進体制を設けています。こうしたチーム力により安全衛生の向上を図る高知市の取り組みを紹介します。

1 部局別委員会を設置して職種別の活動を促進

高知市の安全衛生は、市職員安全衛生委員会を中心とした体制で展開されています。職員の約8割を対象とする同委員会には、清掃工場や保育所、学校給食など職種も場所も異なる様々な職場が含まれ、その管轄は広範囲に及びます。そこで、市は市委員会の中に4つの部局別委員会を設置し、職種に応じた取り組みが行える体制を整備しています。

高知市安全衛生管理体制

高知市安全衛生管理体制

部局別委員会は、委員会開催や年間活動計画の作成、安全教育等の活動をそれぞれが独自に企画、実施しています。例えば、環境業務課や清掃工場では毎月1回以上委員会を開催するなど法令に準拠した取り組みを実践しています。また、学校給食では、平成24年度に公務災害件数が急増したことから、産業医等と協力をして、1年半をかけて安全作業マニュアルの見直しを図り、公務災害防止に努めています。このほか、保育幼稚園課でも役務員を対象とした剪定研修を実施するなど、各委員会の活動は活発です。

活動の状況は市委員会に報告されるため、統括部門として市委員会が適切に把握、管理することができます。また、各部局別委員会の代表が委員として市委員会の構成メンバーとなっていることで、全庁に関わる問題を提起し、対策を協議するなど、連携体制もしっかりと確保されています。

安全作業マニュアル

学校給食委員会が作成した安全作業マニュアル

2 産業保健スタッフの連携によるメンタルヘルス対策

市では、健康管理室(人事課)に配置した2名の保健師が随時対応する健康相談をはじめ、精神科医による相談対応や各種階層別研修、職場復帰を支援するための慣らし出勤制度等、様々なメンタルヘルス対策を実施しています。また、安全衛生の要である衛生管理者を職場の相談窓口とする体制を整えるとともに、衛生管理者を対象とした研修を実施し、産業保健スタッフの一員として円滑なメンタルヘルスケアが推進されるよう支援しています。

こうした産業医や保健師、衛生管理者等による相談対応の取り組みは職員にも浸透し、ここ数年、相談件数が増加しているといいます。健康相談を担当する保健師で人事課健康管理室主任の長崎 美保氏は「健康相談はほぼ毎日利用があります。職員本人からの相談だけでなく、その上司や同僚など1件の案件に対して複数人からの相談に応じることも少なくありません。」と相談対応の状況について語りました。

長崎主任

健康相談について語る長崎主任

また、人事課長の諸石 信廣氏は「悩みには、家庭や職場環境などいろいろなケースがあります。特効薬はないが、早く気付いて対策がとれればと考え早期相談を促しています。長くなればなるほど回復が遅れるので、今後、ストレスチェック制度などをうまく活用していきたいです。」と市のメンタルヘルス対策の考え方について語りました。

このように、高知市では相談体制の充実など様々なメンタルヘルス対策を講じていますが、残念ながら、全国的な傾向と同様に、メンタルヘルス不調による休職者は増加傾向にあります。メンタルヘルスに特効薬はありません。市では、一つひとつできることを積み重ねていくことで、対策を着実に進めています。

3 産業医を中心にチームで推進する職場巡視

労働安全衛生法令では産業医の職場巡視を規定していますが、医師の多忙など時間的な制約等から、地方公共団体の中には効果的な巡視が行えないという例も見受けられます。こうした中、高知市では産業医と事務局が連携した効果的な職場巡視が実施されています。

職場巡視の流れ

職場巡視の流れ

事務局の重要な役割の一つに、産業医への情報提供がありますが、人事課では、巡視前に調査を実施し、対象となる職場の安全衛生状況等を把握するとともに、産業医に情報を提供します。また、巡視の精度を高めるため、当日は、産業医に同行し、チームとして職場巡視に取組んでいます。

指摘を行う場合は、現状と対策を具体的に提示します。例えば、保育所の調理室の例では、「調理室外からの呼びかけにスムーズに対応できるようインターホンの導入を検討してください」など。また、指摘だけでなく、良い点もしっかりと評価しています。巡視後は、各職場から巡視結果を踏まえた改善報告が適切に提出されるなど、 職場の安全衛生の取り組みとして定着しています。

諸石人事課長はこう語ります。「産業医のほかに、保健師、人事課職員、対象課所の主管課職員など、メンバーをしっかり揃えて対応しています。また、それぞれの立場、視点からチェックを行い、結果をできるだけ丁寧に所属に示すように心がけています。そうした姿勢が現場にも伝わっているのではないでしょうか。」

諸石課長

職場巡視について語る諸石課長

産業医をはじめ、各担当者がそれぞれの職種、役割に応じた多様な視点から、チームとして巡視を行うことで、漏れのない確認、きめ細かな助言を行う。今後も、このような基本姿勢の下で巡視を実施し、職場とともに課題解決に取り組んでいきます。

4 自動車教習所を活用した安全運転研修

環境業務課委員会は、一般廃棄物の収集、運搬業務に係る安全衛生を推進する部局別委員会です。同委員会では毎月1回の委員会開催をはじめ、年間活動計画に基づく様々な安全衛生活動を実践しています。中でも安全運転研修は、運転技能研修を市内の自動車教習所に委託するという、他ではあまり例を見ない取り組みです。環境業務課相談サービス係長の大原 信明氏は「収集職員には日々安全運転や運転マナーを指導していますが、より安全を期すためにも、運転のプロから適切な指導を受ける必要があると考えました。そこで市内にある教習所に相談したところ、運送業向けの実技講習を実施しているところが1カ所あり、協力を得ることができました。」と経緯について語りました。

大原係長

環境業務課の取り組みについて語る大原係長

ごみ収集運搬は、運転手だけでなく、集積場所までの案内役、現場での車両誘導役などチームで作業が行われます。こうした業務特性を踏まえた研修とするため、その内容について教習所と協議し、①運転技能②ナビゲーション技能③誘導技能を中心とするカリキュラムが作成されました。このカリキュラムに基づき、自動車教習所教官が職員の指導を行っています。結果については各職員個人の評価だけでなく、事業場全体の総括評価を受けることで、組織としての改善につなげています。

事業場が自ら開拓したこの取り組みは、安全意識の高い職場だからこそ実現できたといえます。平成27年度には予算を拡充し、収集車両に関わる全職員を対象とするなど、更に充実・強化が図られています。

アドバイザーより一言

アドバイザー/田村氏

市安全衛生委員会では、職場巡視の結果、公務災害の発生状況等について調査審議されています。メンタルヘルス対策では、その充実が図られている松山市を視察する等、好事例を取り込んでいこうとする意識の高さを感じました。また、全国労働衛生週間にあわせ、心身の健康に関するチェックリスト等を職員に案内するなど、安全衛生の情報発信においても前向きな姿勢を感じました。

部局別委員会も積極的な取り組みを実践されています。学校給食委員会では、「安全作業マニュアル」を現状を反映する内容に改定し、安全作業を行う下地として現場で活用されています。清掃工場委員会では、安全衛生方針と目標を設定し、毎月開催する安全衛生委員会において各係の報告を審議されています。環境業務課委員会では、職場に合った安全運転研修を自動車教習所に依頼され、また、ヒヤリハット活動やKYTも実施されています。仕事に安全衛生を取り込んでいこうとする意識の高さを感じました。

今後は、現状の4部門以外にも事業場(部門)ごとに安全衛生委員会を設置されることをお勧めします。

中央労働災害防止協会 中国四国安全衛生サービスセンター
安全管理士 田村 聡

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City profile

高知県高知市

高知県高知市位置

  • 面積 308.99km2
  • 人口 335,991人
    (2015.4.1現在)
  • 人口密度 1,087人 /km2

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高知県高知市
本町5丁目1-4
取材先:人事課

職員数2,758人
【内訳】
一般行政 1,681人
教育 336人
消防 367人
公営企業等 374人
(2015.4.1時点)

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