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Report15 Kagoshima City

統括的役割と現場の実践力を発揮し安全衛生を推進 鹿児島市

取り組みのポイント

  • 統括的役割を担う市役所委員会が代表者会により横の連携を確保し安全衛生を推進
  • 新規採用職員面接の充実や職場等と連携した復職支援などメンタルヘルス対策の強化
  • 現場職員が議題を考え提案する参加型の委員会や民間企業を活用した安全研修等の実施

鹿児島市では、統括的組織である市役所安全衛生委員会が毎年度事業計画を策定し、効果的・継続的な活動を実践しています。全庁的な取り組みとしては、相談支援の充実や産業医等と連携した復職支援等の実施により、メンタルヘルス不調者の減少等の改善効果を図っています。各事業場の取り組みとしては、清掃事務所による毎月の委員会開催や安全教育の徹底などが積極的に行われています。こうした市役所安全衛生委員会を中心とした体制で、各事業場委員会が現場の実践力を発揮し進めている鹿児島市の安全衛生の取り組みについて紹介します。

1 代表者会の設置により横の連携を確保

鹿児島市では、市役所、交通局、水道局、市立病院、船舶局及び消防局の6つの部門別に安全衛生委員会が設置され、それぞれが独自の活動を展開しています。このうち、市役所安全衛生委員会は、3千人を超える職員を管轄する事業場委員会であるとともに、各支所や保健所等の事業場に設けられた18の安全衛生委員会を束ねる統括的な機能も有しています。

鹿児島市安全衛生管理体制

鹿児島市安全衛生管理体制

同委員会の事務を担当する人事課安全衛生係では、統括機能を適切に発揮させるため、各委員会の事務担当職員で構成される「安全衛生職場委員会代表者会」を主宰し、情報交換、連絡調整を行っています。代表者会の意義について、人事課安全衛生係主幹の黒木 秀一氏はこう語ります。「各委員会の情報交換の場として機能しています。また、各事業場の意見を集約し、市役所委員会に伝える役割も果たしています。異なる職種、職場の意見はとても貴重です。優れた取り組みがあればそれを参考に各委員会で試みるなど、好事例を水平展開することで、活動の活性化につながっています。」

黒木主幹

事務局として市の安全衛生全般を 管理する黒木主幹

代表者会での情報共有や連絡調整等を踏まえ、市役所委員会では、事業計画を毎年度策定し、健康相談や健康診断等の周知、安全衛生ニュース等を通じた情報提供、安全衛生週間における集中的な啓発活動など、全庁的な安全衛生の取り組みを進めています。また、職場巡視では他の委員会の管轄する職場を回り、より客観的な視点からチェックを行うなど、統括的立場から市の安全衛生をけん引しています。

2 試し出勤や新規採用職員面接等のメンタルヘルス対策

市ではメンタルヘルス不調により休業している職員の円滑な復職を支援するため、平成23年度から「試し出勤」を実施しています。制度の運用にあたって中心的な役割を担うのが人事課に配置された2名の保健師です。保健師で人事課安全衛生係主査の上栗 美幸氏は「休職中から定期的に面接し、試し出勤による復職を助言しています。本人から利用の意向が示されれば、まず、主治医の意見を確認し、その後、受け入れ方法等について嘱託医や所属長等と協議を行うとともに、本人を交えて具体的なスケジュールを立てます。」と支援の流れについて語りました。

職場から希望があれば、保健師がレクチャーを行うなど、受け入れる側への支援も行っています。試し出勤の期間は平均6週間程度。復帰後も保健師や嘱託医による面談等のフォローアップを行うなど、円滑な復職を目指し必要な支援を継続します。

試し出勤の実施により、33%であった再発率(復職後1年以内に再発し休業となる職員の割合)が、実施後4年間平均で約10%にまで減少し、懸案であったメンタルヘルス不調再発の大幅な改善が図られています。

上栗主査

「職場にも過度な負担がかからないよう注意しています」
と語る上栗主査

また、新規採用職員のメンタルヘルス対策では、平成26年度から、採用3か月経過後に全ての新規採用職員との面接を2名の保健師で行い、不調等が把握できた場合には必要な助言を行うなど、早期対応につなげています。上栗主査は「それまでは、採用後1年以内でメンタルヘルス不調に陥る職員が5人程度いましたが、平成26年度は1人に留まりました。保健師2人での対応は大変ですが、実施した効果はあったと感じています。」と語りました。

他にも、隔月発行だった健康情報「耳よりコラム」の毎月発行や精神科の嘱託医増員等のメンタルヘルス対策の充実・強化が図られるなど、市の取り組みは着実に前進しています。

3 毎月の委員会開催等による公務災害防止の取り組み

鹿児島市清掃事務所では、法令に基づく月1回の委員会開催が実施されていますが、開催にあたっては、事務局が用意する議題とは別に、職員提案の議題を毎回設定し参加意識を高める等の工夫が見られます。衛生管理者で管理係主任の金里 知二氏は「事務所には4つの係がありますが、事前準備として、まず、係ごとに委員会で取り上げるテーマを話し合います。その後、係代表である数人の安全衛生委員会委員が意見を集約し、委員会に提案します。委員会の結果は当日の係ミーティングで職員に報告されます。」と概要を語りました。委員会の毎月開催については、形骸化している、議題がなくて困るといった事業場の声も多く聞かれますが、同事務所では、職員提案をルール化することで、職員参加型の委員会を実現し、その活性化を図っています。

同事務所の取り組みには、このような工夫が随所に見受けられます。例えば、安全教育の一環として実施している車両誘導研修は、民間企業を活用した事務所オリジナルの企画です。車両誘導時の事故防止を図るため、運送事業者や警備会社等の社員を講師に迎え、収集作業時の誘導やプラットホーム(ごみを投入するための車両搬入場)での誘導など、毎回テーマを変えた研修を実施しています。平成27年度の研修では、安全管理者で管理係主査の橋口 勉氏と金里主任が作成した「プラットホームの誘導手順」の検証も行われるなど、目的を明確にした有益な研修が実施されています。

車両誘導研修の様子

警備会社から講師を迎えて実施した
車両誘導研修の様子

職場巡視の様子

収集作業現場で実施された
職場巡視の様子

安全教育の徹底は臨時職員についても同様です。橋口主査は「少し慣れた頃に事故が発生しやすい傾向があったため、年度当初だけでなく、6か月経過後にも研修を実施しています。研修で不安があるなと感じた職員に対しては、現場巡視により作業内容をチェックしています」と概要を語りました。

こうした安全衛生の丁寧な取り組みが、清掃事務所における公務災害発生件数の抑制につながっています。橋口主査と金里主任が中心となった安全衛生取り組みは、現場の声を聴く風通しのよい職場だからこそ、上手く実践できているのではないでしょうか。

橋口主査(左)と金里主任(右)

清掃事務所の安全衛生を担当する
橋口主査(左)と金里主任(右)

アドバイザーより一言

アドバイザー/渡邉氏

長時間労働対策では、毎水曜日にノー残業デーを設定し、パソコン立ち上げ時に「今日は定時退庁日・・・」等の表示が出てくるなど、その周知を効果的に図っています。

メンタルヘルス対策では「試し出勤」を導入し、再発率が導入前の3分の1程度に改善されています。また、新規採用職員対策としては、採用3か月後に個人面接を実施し、アドバイスを積極的に行い、不調者が大きく減少しているなどの効果が見受けられます。

清掃事務所では、専門家を講師に招いた車両誘導の研修を実施し誘導方法の統一化を図るなど、積極的に安全衛生に取り組んでいます。

安全衛生を有効に進める最も基本的なポイントは「自分たちの職場にどんな危険が存在しているか」という問題意識を持ってPDCAサイクルをまわし続けることです。そのためにも、各事業場に応じた研修会等の拡充、強化を図るなど、危険感受性の向上をはじめとして安全衛生への意識を高める更なる取り組みを期待しています。

是非、皆様方のフレッシュな頭脳で創意工夫をして、いろんなことにチャレンジしてください。

中央労働災害防止協会 九州安全衛生サービスセンター
安全・衛生管理士 渡邉康生

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City profile

鹿児島県鹿児島市

鹿児島県鹿児島市位置

  • 面積 547.57km2
  • 人口 604,697人
    (2015.4.1現在)
  • 人口密度 1,104人 /km2

見どころ

鹿児島のシンボル 桜島 鹿児島のシンボル 桜島

特産品

鹿児島の美味 黒豚料理 鹿児島の美味 黒豚料理

キャラクター

西郷どん 「鹿児島市明治維新
PRキャラクター」
西郷どん

City office

鹿児島市役所

鹿児島市役所

〒892-8677
鹿児島市山下町11-1
取材先:人事課

職員数5,459人
【内訳】
一般行政 2,590人
教育 580人
消防 502人
公営企業等 1,787人
(2015.4.1時点)

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