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目標管理の手法による継続的な安全衛生対策の推進 八王子市

取り組みのポイント

  • 全ての委員会で月1回開催を実践するなど法令遵守を徹底
  • 事業場ごとに安全衛生重点目標を設定し定期的に検証するなど目標管理手法による継続的な安全衛生対策を推進
  • 全職員が受講する研修の設定など職員一人ひとりの意識を高める安全衛生教育を推進

八王子市では、職員の安全管理、衛生管理を専門に担当する安全衛生管理課が中心となって、安全衛生委員会の毎月開催や衛生管理者の職場巡視等の法令遵守の取り組みを徹底しています。また、各事業場委員会の重点目標の設定や目標達成に向けた活動など全庁的な取り組みを実施し、公務災害の防止、安全で快適な職場づくりを進めています。こうした安全衛生管理課のリーダーシップのもとに展開される八王子市の取り組みを紹介します。

1 安全衛生推進本部と安全衛生委員会が一体となった全庁体制を整備

市では中央委員会的組織である市職員安全衛生委員会(以下「市委員会」という。)と7つの事業場委員会を設置するとともに、安全衛生推進本部を設ける二層構造の推進体制を整備しています。推進本部は市委員会の委員(職員組合推薦委員を除く)等で構成される事業者側組織であり、事業者の責務として、市の安全衛生の基本的な方針や対策を打ち出すなど、安全衛生推進に関する決定機関としての役割を有しています。一方、労働者側組織としては組合推薦委員で構成される安全衛生推進対策会議があり、市では労使双方の協調を図るため、推進本部で決定した事項はまず対策会議に周知し、その後に市委員会で検討、協議するという手順をとっています。このように労使間調整を十分に行うことで、委員会の円滑な運営、効果的な活動の展開が図られています。

八王子市安全衛生管理体制

八王子市安全衛生管理体制

また、すべての事業場において委員会の毎月開催や衛生管理者による毎週1回以上の巡視が定例化されているなど、市では全庁的な法令遵守の徹底を図っています。安全衛生管理課の職員は、本庁舎等事業場安全衛生委員会の事務局として毎月の開催を実践するだけでなく、各事業場委員会にも毎回出席し活動状況の把握に努めています。また、事業場委員会の中で安全衛生に関する情報提供等を行う等のサポート的役割も果たしています。ほかにも安全衛生推進本部や市委員会の事務局も兼ねるなど多くの業務を抱えていますが、安全衛生を推進する専門部署として人材をフル活用し、事業場安全衛生委員会活動の活性化、レベルアップを図っています。

左から小坂主査、 髙木主査、市川課長、武藤主査

安全衛生管理課の皆さん(左から小坂主査、 髙木主査、市川課長、武藤主査)

2 目標管理の手法による継続的な対策

市の安全衛生管理は、「安全衛生基本方針」に基づく「安全衛生重点目標」の設定、目標の実現に向けた対策とその検証という組織的、体系的な仕組みによって進められています。安全衛生管理課主査の武藤 美幸氏は「従来から「安全管理方針」を定めていましたが、内容が総花的な計画となっていたことからこれを見直し、PDCAサイクルの考え方を取り入れた活動を展開しました。」と経緯を語りました。

※PDCAサイクルとは、計画(Plan)、実施(Do)、評価(Check)、改善(Act)のモデルを回しながら、連続的かつ継続的に安全衛生水準の向上を図っていくものです。

基本方針・重点目標等の体系

基本方針・重点目標等の体系

「安全衛生基本方針」は、平成18年度に市委員会の審議を経て決定されたもので、「ライン(職制)における安全衛生活動を実践し、ゆとりを持ち、健康で安心して働ける職場をつくる」ことを主眼に、①全員参加の安全衛生活動の推進②安全作業の徹底③安全運転意識の高揚と交通安全対策の強化④心身両面にわたる健康づくりの推進⑤快適な職場環境の形成の5つを基本実施事項として掲げています。「安全衛生重点目標」はこの基本方針に基づき毎年度設定されるもので、本年度、市委員会では最重点目標を「心とからだの健康づくり」、重点目標を「安全で安心して働ける職場環境づくり」としています。設定された目標は庁内LANへの掲示や職員研修での周知など、全職員に向けた周知を図っています。

また、各事業場委員会では市委員会の目標を参考に、誰が、いつまでに、なにをするのかという具体的な取り組みを定めますが、この取り組みについては可能な限り数値目標を設定し、客観的な評価が容易となるよう努めています。実施状況については半期ごとに検証が行われ、その結果を市委員会に報告。市委員会が適切に進行管理を行うとともに、全事業場委員会で情報を共有し、他の事業場の優れた取り組みを参考としながら重点目標の着実な達成を目指しています。

平成27年度 八王子市安全衛生重点目標

八王子市安全衛生重点目標

3 全職員を対象とした研修など積極的な安全衛生教育の推進

組織として安全衛生活動を活性化させるためには、職員一人ひとりがその意義や目的を理解して行動することが重要です。このため、市では研修等を通じて、職員に対する安全衛生教育を積極的に推進しています。核となるのは安全衛生管理課です。同課が中心となって、管理職職員や一般職員、衛生管理者等の安全衛生スタッフなど、対象別に20を超える研修を企画し、開催回数は200回を超えるという充実した研修プログラムを組んでいます。

注目すべきは必須研修の多さです。例えば、平成26年度は、一般職員を対象とした安全衛生教育を1回当たり約80人、計25回開催し、対象職員2千人が受講しました。また、交通安全研修・運転指導教育は、公用車を運転する全ての職員を対象としたもので、120回開催されています。いずれも形式的な研修とならないよう、毎年度異なるテーマを設定する等の工夫を凝らしています。

さらに、最重点目標「心とからだの健康づくり」の一環であるメンタルヘルス研修にも力を注いでいます。新規採用職員、主査職職員、管理職職員など階層別に実施していますが、平成26年度からは30歳代の職員をターゲットに絞ったメンタルヘルス研修も始めました。保健師で産業カウンセラーでもある安全衛生管理課主査の髙木 みわ子氏は「30歳代の職員はメンタルヘルス不調による長期休暇取得者が最も多い世代でした。一方で健康相談の利用率は最も少ないという結果があり、まずは利用率を上げることの一つの対策として研修を実施しました。」と経緯を語りました。研修を通じて健康相談を周知した結果、利用率は増加していますが、1年では評価が難しいため、経過に留意しながら次の対策につなげていくこととしています。

メンタルヘルス研修と健康相談の取り組み状況

メンタルヘルス研修と健康相談の取組状況

安全衛生教育は、職員の意識を高め、活動の定着につながる有効な取り組みです。安全衛生管理課長の市川 厚夫氏は、研修の意義についてこう語ります。「安全衛生が大事だという意識を職員自身に持ってもらうことが大切であり、そのために全職員向け研修を実施しています。研修の冒頭で、安全とは何か、衛生とは何かを説明し、日々の業務のベースとなる安全衛生を少しでも意識してもらうよう努めています。」

市のメンタルヘルス対策として平成24年度からストレスチェックを実施し9割の職員が受検しています。また、「職場復帰支援プログラム」を利用した職員は毎年ほぼ100%復帰を果たしています。

職員の意識向上を図るとともに、重点目標の設定など目的や対策を明確にして取り組む市の安全衛生は着実に成果を上げています。

アドバイザーより一言

アドバイザー/芳賀 伸之

同市では基本方針に基づいて、毎年度「八王子市安全衛生重点目標」を設定し、具体的目標と取組事項を作成しています。さらに、この具体的目標を達成するため、各事業場で具体的実施事項を計画して実施し、半期ごとに成果の検証を行うなど、PDCAサイクルを取り入れ、職員が働く現場の安全衛生水準の向上を目指した管理の仕組みとなっています。今後は基本方針に掲げられた実施事項をより着実に達成できるよう、毎年度設定する目標については、実施目標(どれだけ実施するか)から達成レベルを示した達成目標(どこまで実施するか)に順次切り替えていくことをお勧めします。

安全衛生教育では、新任職員安全衛生教育(雇入れ時教育)など法令に基づくもののほか、メンタルヘルスに係る相談率がある年代で低いなど、現状で抱えている課題を解決するために企画されたもの等があります。研修講師を安全衛生管理課職員が務めているものも多くあり、事業場や現場の実態に即したきめ細かい教育が可能となっています。なお、法令では特別教育が義務付けられた作業等があります。今後は、そうした研修等も計画に盛り込むことをお勧めします。

中央労働災害防止協会 関東安全衛生サービスセンター
安全管理士 芳賀 伸之

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City profile

東京都八王子市

東京都八王子市

  • 面積 186.38km2
  • 人口 579,740人
    (2015.4.1現在)
  • 人口密度 3,111人 /km2

見どころ

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〒192-8501
東京都八王子市
元本郷町3-24-1
取材先:安全衛生管理課

職員数2,823人
【内訳】
一般行政 2,192人
教育 451人
公営企業等 180人
(2015.4.1時点)

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