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Report15 Sasebo City

先を見通した安全衛生の取り組み 佐世保市

取り組みのポイント

  • 職域別の事業場委員会の設置により進めた月1回開催と中央委員会による情報共有
  • 本庁舎等委員会の離島部も含めた全職場への職場巡視の実施と2段階で評価する指摘事項
  • 異動等により心身リスクが高まる職員には健康診断の有所見がなくても保健指導を実施
  • 水道局は見込みの時間外勤務の時間数で国の基準を上回る過重労働対策を実施

佐世保市は、職域別の事業場安全衛生委員会の設置等により月1回の開催を進めたほか、本庁舎等安全衛生委員会では毎年度離島も含めて全所属への職場巡視を実施しています。また、 異動等による生活リズムの変化等で心身のリスクが高まるおそれが予測される職員には、定期健康診断で有所見がなくても保健指導等を行っています。さらに水道局では、見込みの時間外勤務の時間数に応じて国の基準を上回る過重労働対策を講じるなど、先を見通した佐世保市の取り組みを紹介します。

1 職域別の事業場委員会設置等による月1回開催の推進

市では、平成13年度までは本庁舎を一つの事業場として安全衛生委員会を置いていました。しかし、平成14年度から職域を基本とする職場安全衛生委員会を設置しました。その経緯について職員課主査の菊永 昌和氏は「労働安全衛生法に沿って本庁舎を一事業場として安全衛生委員会を設置していましたが、各部局の部長クラスが委員のため日程調整が困難で月1回の委員会開催ができていませんでした。それでは法令順守の点から望ましくありませんし、市の中核である本庁舎の委員会が月1回開催していなければ、各事業場委員会に月1回の開催を浸透させることもできません。それで、本庁舎の中でも職域ごとに委員会を設置すべきとの委員会意見を踏まえて、現在の職場安全衛生委員会が設置されました。」と語りました。

佐世保市安全衛生管理体制

佐世保市安全衛生管理体制

また、職場委員会の設置と同時に総括的な機関として副市長を委員長とする市職員中央安全衛生委員会が設けられ、各職場委員会の活動をけん引しています。菊永主査は「中央委員会では委員長である副市長が、出席している他の委員会の総括安全衛生管理者である部局長に月1回の開催を促すことで、各職場委員会の月1回開催が進みました。」と中央委員会の主導力を語りました。

本庁舎等委員会は他の職場委員会のモデルとなるため平成14年度から月1回開催していますが、職員課係長の船本 朋子氏は日程調整についてこう語りました。「開催日は毎月第4水曜日と定例化し、各委員に年間通して予定を入れてもらうようにしています。そして、できる限り出席を促すよう委員会の最後に次回の日程を確認して、各委員にスケジュールを確実に入れてもらっています。」  

こうした職域ごとの職場委員会の設置と中央委員会のけん引、開催日の定例会等の取り組みにより、現在では職場委員会は毎月1回の開催が定着しています。

菊永主査

「本庁舎等委員会は必ず月1回
開いてきました」と語る菊永主査

船本係長

「中央委員会で各委員会の取り組みを
共有しています」と語る船本係長

2 本庁舎等委員会の全職場への職場巡視と2段階評価の指摘事項

市は平成17年度から平成21年度までに6町を編入合併し、長崎県内でも第2位の面積を有するとともに離島部にも市域が広がっています。そうした広い市域にもかかわらず本庁舎等委員会では、毎年度全ての所属の職場巡視を行っています。  

巡視は、メンバーがあらかじめ巡視先の前年度の指摘事項を把握し、改善状況について必ず確認を行います。結果は取りまとめられて委員会で指摘内容が審議されますが、総務部次長兼職員課長の田所 和行氏は「巡視メンバーは指摘事項について、早急に改善が必要なものについては『要改善』、その程度に至らないものは『要注意』と評価します。その後、事務局で一覧表にした原案を作成し、委員会で評価の妥当性等について審議してもらいます。」と優先度を付ける取り組みを語りました。  

そして、委員会での審議を経て、巡視結果については指摘事項のない所属も含めて結果の一覧表を通知するとともに、改善が必要な所属には1か月以内に対応策の回答を求めています。こうして本庁舎等委員会の所属では、毎年度継続してリスク低減が促進されています。

田所次長

「指摘事項に巡視先がすぐ対処してくれることも多いです」と語る田所次長

3 異動者等有所見者以外の職員への保健指導の強化

市では平成17年度に職場復帰支援プログラムを策定し、平成19年度には外部の臨床心理士による相談窓口を設置するなどメンタルヘルス対策の強化を図っています。一方、平成25年度からは有所見者以外の職員に対する定期健康診断後の事後指導に力を入れていますが、これをメンタルヘルスにも役立てています。保健師で職員課主査の山邊 陽子氏は「定期健康診断の結果で有所見者の職員には検査等の通知がいきますが、今は異常がない結果でも、例えば人事異動で勤務地が遠方になったため生活リズムが変わった職員などは、心身の不調が生じるかもしれません。そうした有所見者以外で今後心身のリスクが生じるかもしれないカテゴリーを予測して、該当する職員などに対して事後指導を行っています。」と趣旨を語りました。

リスク予測等のカテゴリー

リスク予測等のカテゴリー

こうして、定期健康診断のデータでは問題のない職員を医務室に呼び出してアドバイスを行っていますが、医務室には栄養士も配置されているため、必要に応じて保健指導とともに栄養指導も実施しています。山邊主査は「身体の相談であっても職員に対応するときは、常にメンタルヘルスの視点を入れて面接しています。健康診断の事後指導でも、メンタルヘルスの1次予防の視点をもって指導していきたいと考えています。」と意気込みを語りました。

山邊主査

「医務室に職員を呼び込むツールを増やしていきたいです」と語る山邊主査

サンプル模型

栄養指導に活用されている3食の
改善メニューが一目でわかるサンプル模型

4 見込み時間数で対策を講じる過重労働対策

市には3つの公営企業があり、それぞれが安全衛生活動に取り組んでいますが、水道局では平成23年度から産業医の予定に合せた定例化により月1回開催しているほか、職場巡視前にはDVD教材により巡視メンバーへの研修を行っています。水道局経営管理課職員係の三宅 泰志氏は「DVDで改めて巡視方法を確認したあとに巡視を行うと、効率よく効果的な巡視が行えますので、巡視直前にメンバー全員にDVDを見てもらっています。」と意義を語りました。  

また、水道局では平成25年度から時間外勤務が見込みで月40時間等を超えるときは報告を要することや、見込みで年間300時間超えの職員には健康診断を実施するなど、国の基準を上回る独自の過重労働対策に取り組んでいます。三宅氏は見込みの時間数で対策を講じる趣旨について「時間外勤務の集計は翌月ですので、実際に対策が動き出すのは事後です。そこで、時間外勤務を減らす意識を高めるために見込みの時間で対策を講じることとしました。」と語りました。  

こうした公営企業独自の安全衛生の取り組みにより、特に水道局と交通局は平成23年度から平成25度まで公務災害件数は0が継続しています。

アドバイザーより一言

アドバイザー/齋藤秀弥

市長部局の安全衛生委員会が毎月1回開催しているほか、中央安全衛生委員会を開いて安全衛生情報を共有しています。また、本庁舎では過重労働対策として委員会が開かれる毎月第四水曜日をパトロールの日とし、委員会後に委員がノー残業デーの実施状況を確認しています。

メンタルヘルス対策では、保健師が人事異動後や産休復帰後など、メンタルが不安定になる可能性の高い者と積極的に面談を行うなど精力的に活動しています。また、気楽に医務室に来る工夫として、体重体組成計を用意してその測定を機に面談し、メンタル状況を確認しているのは良い取り組みです。

今後は公営企業を含めた全ての安全衛生委員会の月1回開催を促進するほか、職場巡視の指摘事項については、リスクアセスメントを必ず実施してリスクに応じた保護方策を行うことや、重大なリスクを見逃さないために予算措置が必要な改善部分も指摘事項にすることをお勧めします。

中央労働災害防止協会技術支援部
安全管理士 齋藤 秀弥

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City profile

長崎県佐世保市

長崎県佐世保市

  • 面積 426.58km2
  • 人口 254,835人
    (2014.11.1現在)
  • 人口密度 597人 /km2

見どころ

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「佐世保バーガーボーイ」と「させぼのボコちゃん」 「佐世保バーガーボーイ」と「させぼのボコちゃん」

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〒857-8585
長崎県佐世保市
八幡町1-10
取材先:職員課

職員数3,231人
【内訳】
一般行政 1,453人
教育 239人
消防 368人
公営企業等 1,171人
(2014.4.1時点)

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