地方公務員災害補償基金 Fund For Local Government Enployees' Accident Compensation

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Report6 Okazaki City

仕組みを工夫し安全衛生を推進 岡崎市

取り組みのポイント

  • 市役所庁舎は衛生管理者でもある庁舎管理担当が毎日職場巡視を実施
  • 電子会議による月1回の意見聴き取りやドライブレコーダーを活用した公務災害防止
  • 主治医の意見提出を組み込むなど主治医との連携を強化した復職支援制度

岡崎市は、最大規模の市役所を衛生管理者に選任された庁舎管理担当者が巡視することで、労働安全衛生法令どおり週1回以上の職場巡視を実施しています。また、一般事業場衛生委員会ではリアルタイム性の高い電子会議を活用して、毎月1回委員からの意見を聴いています。さらにメンタルヘルス不調による休職者等の復帰支援では、主治医から情報提供を受ける流れを組み込むなど、仕組みを工夫して安全衛生を推進する岡崎市の取り組みを紹介します。

1 継続する衛生管理者による週1回以上の職場巡視

市は9つの事業場安全・衛生委員会を設置していますが、全ての事業場委員会の衛生管理者が、労働安全衛生法令に定められた週1回以上の職場巡視を実施しています。中でも市役所には東庁舎、西庁舎等4つの建物がありますが、衛生管理者に選任された庁舎管理を担う財産管理課の職員が、毎日職場巡視を行っています。

人事課職員厚生班班長(主幹)の近藤 幸実氏は「財産管理課には、衛生管理者のほかに建築物環境衛生管理技術者(通称ビル管理技術者)等さまざまな資格を有する職員がいます。そこで、市役所の事務職場等で組織する一般事業場衛生委員会では、常に財産管理課の職員を衛生管理者に選任し、本来業務である庁舎管理で庁内を巡回する中で、維持管理だけでなく安全衛生の視点でも確認してもらっています。」と経緯を語りました。

岡崎市安全衛生管理体制

岡崎市安全衛生管理体制

地方公共団体では週1回以上の衛生管理者による職場巡視は、まだまだ進んでいない状況です。特に地方自治法第4条に規定されている地方公共団体の事務所、いわゆる市役所、町村役場等は最も規模が大きい事業場のため、委員会が行う庁舎全ての職場巡視が終わるのは数年がかりという団体も見られます。そうした状況の中で、市では庁舎管理部署の職員を衛生管理者に選任し、維持管理業務の中で職場巡視を行うことで、毎日の職場巡視を継続しています。

また、近藤班長は財産管理課の職員が巡視することのメリットをこう語りました。「財産管理課の職員が危ない所を見つけると、業務として早急に財産管理課の手持ちの材料を工夫して対策を講じてくれるので助かります。」こうして、市役所では迅速にリスクの低減が図られています。

2 電子会議による月1回の意見聴き取り

市の安全衛生管理規程では、安全・衛生委員会は「原則として毎月1回以上開催するものとする。」と定めています。このため、8つの安全・衛生委員会は、定例化等の工夫により毎月1回開催していますが、対象となる所属が最も多い一般事業場委員会は、電子会議による開催も併用しています。この電子会議は、庁内イントラネット内で共有者を限定できるシステムを利用して、事務局が衛生委員に会議資料を提示し、委員は意見を自由に掲示板に書き込める仕組みとなっています。書き込まれた意見は委員であればいつでも見ることができ、意見を即時に書き込むことでリアルタイムな意見交換も可能です。こうした開催方法について近藤班長は「一般事業場委員会は、幹部職員や出先機関の職員がいるので、日程調整が整わず会議が開催できないこともありました。しかし、月1回は議事を提案して意見を聴くようにしたいということで、電子会議での開催を行っています。」と経緯を語りました。

近藤班長

さまざまな工夫により安全衛生の向上を図る近藤班長

労働安全衛生法令が定める安全・衛生委員会は、各委員が出席する会議が想定されています。しかし、一般事業場委員会では、年数回の開催にとどまるよりは、月1回は委員の意見を聴くことが必要と考えて、書面の持ち回りよりリアルタイム性の高い電子会議も活用して委員の意見を聴いています。

3 交通事故防止などの公務災害防止の取り組み

市では公務災害の防止を図るため、公務災害が発生した場合には災害の概要が記載された災害発生報告書とは別に、所属長から再発防止対策報告書を提出させています。その報告書には原因、反省点及び管理者の指導・改善策が記入されて人事課に集約されており、同様の公務災害を把握したときは、全庁的に注意喚起を図っています。

また、平成26年度の愛知県の交通事故による死者数は全国最多となっており、岡崎市の交通事故情勢も厳しい状況でした。そこで、運転業務のある事業場委員会では、特にドライブレコーダーを利用した取り組みを進めています。消防事業場衛生委員会は、平成21年度から消防車等のドライブレコーダーの映像を利用した危険予知訓練を行っています。また、道路管理業務を管轄する現業事業場安全衛生委員会では、作業車両に設置されたドライブレコーダーの映像を安全管理者が確認し、安全運転の意識向上を図っています。総合現業事務所で副統括主任の渡邊 尚登氏は「安全管理者として、適宜ドライブレコーダーの映像を確認しています。そして、きちんと一時停止していない場合などを見つけたときは、運転者に注意して安全運転を促します。また、ドライブレコーダーを搭載することで安全運転の自覚が高まり、搭載車両ではこれまで公務災害が発生していません。」とその効果を語りました。

地方公共団体のバス事業や清掃事業ではドライブレコーダーの導入が進んでいますが、市も公用車の更新時等にはドライブレコーダーを設置し、それを活用することで交通事故に起因する公務災害の未然防止を図っています。

ドライブレコーダー活用等の取り組み

委員会名 取り組み
消防事業場委員会 平成21年度からドライブレコーダーの映像により全職員対象にヒヤリハット訓練を実施
現業事業場委員会 平成24年度から安全管理者が作業車両のドライブレコーダーを抜き打ちでチェック
清掃事業場委員会 平成26年度にごみ収集車に自動車学校の講師が同乗して、収集作業での運転について確認・指導

4 主治医との連携を強化した復職支援

市では新規採用職員への研修の実施等、さまざまなメンタルヘルス対策に取り組んでいますが、平成21年度には「復職支援システム実施要綱」を定め、主治医との連携を強化して復職支援に力を入れています。保健師で人事課職員厚生班の寺田 実知子氏は、強化の内容についてこう語りました。「復職判定は産業医や専門医の判定を経ますが、復帰するまでは主治医の情報が重要です。そこで、要綱に基づき病気休暇に入るときには職員本人から主治医が情報提供文書を作成することについての同意書を、復職時には主治医が生活上の留意点や業務上の配慮等を記載した情報提供書を提出してもらっています。」  

この情報提供書には、主治医が現況や生活上の留意点、復職後の通院・服薬回数を記入するほか、業務上の配慮は11の選択肢を選ぶようになっており、復職後の職員の状況把握や復職先の所属長が行う配慮に役立つものとなっています。

寺田氏

長年にわたりメンタルヘルス対策に尽力する
寺田氏

保健師の粥川 英代氏

人事課職員厚生班で健康管理を担う
保健師の粥川 英代氏

また、同要綱とともに休職者等の円滑な職場復帰を図るため「職場復帰訓練実施要領」が定められましたが、休職者等本人が職場復帰訓練を申し出る申出書には主治医の同意欄が設けられ、主治医の同意を得て復帰訓練を行うこととなっています。

市では、こうして復職までの流れに主治医の意見・判断を組み込むことで、職員のより一層の円滑な復職に取り組んでいます。

アドバイザーより一言

アドバイザー/山口氏

安全衛生管理体制では、安全衛生委員会を毎月1回開催するとともに、積極的に職場巡視が行われており良好です。また、特筆すべきこととして、消防事業場委員会と現業事業場委員会では、交通事故対策としてドライブレコーダーを活用した訓練・指導が行われ、その効果も見られており、大変好ましい取り組みです。

メンタルヘルス対策、長時間労働対策では、心身の不調者に対する職場内の仕組み(職場復帰訓練、疲労蓄積度自己診断チェックリストの活用等)が整備されていますので、このことからも保健スタッフが適切に対策に取り組まれています。

今後は、公務災害の多い事業場において、現状把握と問題解決法を取り入れた安全衛生教育の実施や危険予知トレーニング等の計画的な実施をお勧めします。また、市全体の安全衛生の現状把握と取り組みの推進状況等について調査・審議し、必要な取り組みの一層の促進を図るために、合同安全衛生委員会の開催回数を増やすことが望まれます。

中央労働災害防止協会 中部安全衛生サービスセンター
安全・衛生管理士 山口 好孝

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City profile

愛知県岡崎市

愛知県岡崎市

  • 面積 387.24km2
  • 人口 380,205人
    (2014.11.1現在)
  • 人口密度 982人 /km2

見どころ

岡崎観光夏まつり花火大会 岡崎観光夏まつり花火大会

特産品

八丁味噌 八丁味噌

ご当地キャラ

オカザえもん オカザえもん

City office

岡崎市役所

〒444-8601
愛知県岡崎市
十王町2-9
取材先:人事課

職員数3,494人
【内訳】
一般行政 1,670人
教育 190人
消防 363人
公営企業等 1,271人
(2014.4.1時点)

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