Report12 Oita City
ポイントを強化する安全衛生の取り組み 大分市
取り組みのポイント
- 統括的な安全衛生委員会と担当者会議の開催等により施策から実務までの情報共有を促進
- 分かりすい清掃事業の「安全作業マニュアル」と学校現場の「ハチ刺され被害防止マニュアル」
- 同僚によるケアを促進するなど同僚を思いやる風土づくりのメンタルヘルス対策
大分市は、統括的な安全衛生委員会と横断的な事務局担当者会議を開催して、職種別等を基本とする各支部委員会間の情報共有を推進しています。また、清掃事業の「安全作業マニュアル」と学校現場の「ハチ刺され被害防止マニュアル」は分かりやすい内容で、公務災害の未然防止を図っています。さらに、メンタルヘルス対策では新規採用職員や30歳等の節目年齢の全職員が同僚の変化に気付けるよう、ストレスチェックと研修を実施するなど安全衛生のポイントを強化する大分市の取り組みを紹介します。
1 多層的な安全衛生管理体制による情報共有
市の市長部局では市職員労働安全衛生規程により、職種別、場所別を基本に9つの支部安全衛生委員会を設置するとともに、総括的機能を有する市職員安全衛生委員会を設置して、支部委員会間の情報共有を図っています。
大分市安全衛生管理体制
また、支部安全衛生委員会の事務局担当者で構成される横断的な安全衛生委員会担当者会議を開催して、実務レベルでの情報共有を行っています。職員厚生課参事補兼福利厚生担当班グループリーダーの安東 英児氏は「実務担当者が集まった会議により実務にかかわる細かい部分での情報共有ができますし、顔合わせしておけば本音で話し合いがしやすいです。」と意義を語りました。
こうした多層的な安全衛生管理体制を敷くことで、公務災害件数やメンタルヘルス不調者数など全庁的な情報から、各支部委員会の衛生管理者の計画的な養成など実務的な情報まで共有を図っています。
冷静に状況を見ながら着実に
安全衛生の前進を図る安東参事補
実直に取り組む職員厚生課福利厚生担当班
主査の和田 徹二郎氏
2 分かりやすい「安全作業マニュアル」と
「ハチ刺され被害防止マニュアル」
各支部委員会ではさまざまな安全衛生活動に取り組んでいますが、本庁委員会の職場巡視では巡視チェックリストに3段階の前回評価が記入されています。趣旨について安東参事補はこう語りました。「前回の巡視と異なる委員が巡視したときに、巡視先の指摘事項を把握してもらうためにチェックリストに入れています。これによって改善状況の確認も容易になっています。」
また、環境部委員会に属する環境部清掃業務課では、平成20年度にそれまでの安全作業の手引きを改訂し、清掃事業における収集・運搬作業上の留意点をまとめた「安全作業マニュアル」を作成し、部内の各所属に配付しています。マニュアルは1ページに基本的な作業手順と職場や作業にひそむ危険要因、その危険が引き起こす現象をイラスト入りで分かりやすく表示しています。
イラスト入りの安全作業マニュアル(抜粋)
全ての作業手順にイラストが挿入され視覚的にも分かりやすいマニュアル
新規採用職員や異動者には、このマニュアルを活用して研修を実施しており、収集・運搬作業における危険への感受性を高めて公務災害の未然防止を図っています。さらに各清掃センター・清掃事業所では常時安全衛生旗等を掲揚し、職員の安全衛生意識の向上に取り組んでいます。
「目で観る安全衛生」の基本となる 安全衛生旗等を常時掲揚
その他、教育委員会安全衛生委員会では、平成23年度にハチ刺されによる小学校での公務災害発生に対して、刺された場合の応急処置などを示した対策マニュアルが必要との委員意見を踏まえ「ハチ刺され被害防止マニュアル」を作成しました。マニュアルはハチの種類の説明から始まり、攻撃までのプロセスや屋外作業時の注意事項、刺された後の一般的な対応等が分かりやすくまとめられています。なお、このマニュアルは教育委員会以外の関係部署にも配付され水平展開が図られています。
3 同僚を思いやる風土づくりのメンタルヘルス対策
市は病気休暇者に占める精神疾患による者の割合が増加傾向にあったことから、より計画的にメンタルヘルス対策に取り組むため、平成22年度に市職員メンタルヘルス対策推進プランを策定し、平成23年度には管理監督者が日常的に配慮すべき事項や逆効果な助言、豊富な事例編・Q&A編を盛り込んだ管理監督者マニュアルを作成しました。
また、平成25年度には「同僚を思いやる風土の醸成」と「職場復帰支援の強化」を最重要課題とした第2次推進プランを策定しました。第2次プランに同僚の気づきを盛り込んだ点について安東参事補は「若手の職員が年上の管理監督者に相談するのは、敷居が高いときもあると思います。そこで、相談窓口やラインケア研修の充実とともに、隣や前に座っている職員の変化に気付いて声をかけることも重要だと考えました。」と経緯を語りました。
その組織風土づくりに向けて、平成25年度から新規採用職員及び各年代0歳の節目となる全職員には、ストレスチェックの実施及び結果説明を兼ねたメンタルヘルス研修が開催されています。研修内容は年代が上がるにつれてラインケアの内容を増やし、同僚への気づきを促進しています。さらに、平成26年度からは正規職員の保健師が1名増員され、職員厚生課配置の保健師は3名体制に強化が図られました。
労を惜しまず活動する職員厚生課の保健師の皆さん
左から岩本 周子氏、今井 久美氏、伊﨑 可生里氏
なお、平成23年度から毎年度、表紙のPRタイトルを変えてストレスマネジメントや相談窓口を掲載したリーフレット「気づきのセルフケア」を、職員厚生課の保健師が手作りして配付しています。そして、リーフレットには「ご家族の方の気づきが、早期発見・早期対応に欠かせません。是非、ご家族と一緒にご覧ください。」との文面が入れられています。保健師で職員厚生課の今井 久美氏は「メンタルヘルス不調の改善には家族の協力が欠かせませんので、渡すときは『絶対持って帰ってください』と言っています。また、全職員に促したいので、市長部局以外の消防局・水道局や嘱託職員にも配付しています。」と目的を語りました。
その他、平成26年度から総務部長、人事課長等幹部職員による「職場における悩み相談」が開始されるなど、推進プランの策定以後、市ではメンタルヘルス対策の着実な強化・充実が進んでいます。
アドバイザーより一言
市の安全衛生規程に基づき管理体制を構築し、主任総括安全衛生管理者や産業医等が選任され各職務を遂行しているほか、統括・横断的な市職員安全衛生委員会と安全衛生委員会担当者会議を開催し、市長部局の各支部委員会の活性化・標準化及び情報の共有化を図っています。
清掃センター・事業場では、安全旗等を掲揚し安全衛生意識の高揚を図り、清掃・収集作業の「安全作業マニュアル」は作業手順や危険性の説明に写真・イラストを使い、初心者にも分かりやすい工夫がされています。
また、市のメンタルヘルス対策推進プランに基づき、同僚が不調者に早期に気付く風通しの良い職場風土づくりを行っているほか、保健師がセルフケアのリーフレットを毎年配付している等、充実したメンタルヘルスケアを実施しています。
今後は、委員会の活性化を図るため年間活動計画に月別行事予定を盛り込むことや、公務災害防止の安全教育・研修の回数を増やすことをお勧めします。
中央労働災害防止協会 中国四国安全衛生サービスセンター
安全管理士 杖原 安昭