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Report8 Nagano City

職場と個人の活動を促す安全衛生の取り組み 長野市

取り組みのポイント

  • 安全衛生委員会の月1回開催の推進と50人未満でも委員会設置の安全衛生管理体制
  • 災害事例の全庁共有や分かりやすいマニュアルによるリスクアセスメントの実施
  • 日常生活のリズムを整える通勤訓練や職場研修によるメンタルヘルスへの理解促進

長野市は、安全衛生委員会の月1回開催を進め、50人未満の事業場にも委員会を設置して安全衛生活動を推進しています。公務災害は全庁に周知されて類似災害の未然防止が図られ、清掃センターではリスクアセスメントにより日常業務のリスク低減に取り組んでいます。また、メンタルヘルス不調による休業者は試し出勤前に通勤訓練が行えるほか、職場ごとでメンタルヘルスを選択できる職場研修も実施されています。こうした職場と個人それぞれの活動を促す長野市の取り組みを紹介します。

1 安全衛生委員会の月1回開催の推進等の取り組み

市は7つの事業場安全衛生委員会を設置していますが、ほとんどの委員会が月1回開催しています。中でも最大規模の市職員安全衛生委員会は、委員会や事務局である職員課での労働安全衛生法令どおり開催すべきとの意識の高まりを受けて、平成25年度から月1回の開催に舵を切りました。

長野市安全衛生管理体制

委員会名称 課所数 職員数
市職員安全衛生委員会 101課所 2,055人
職場安全衛生委員会(清掃センター) 1所 55人
職場安全衛生委員会(衛生センター) 1所 20人
職場安全衛生委員会(第一学校給食センター) 1所 29人
職場安全衛生委員会(第三学校給食センター) 1所 32人
上下水道局労働安全衛生委員会 7課所 182人
職場安全衛生委員会(消防局) 9課所 471人

市職員委員会の月1回の開催について、職員課厚生担当課長補佐の丸山 輝美氏は「開催日程は年度当初に年間スケジュール表で候補日を示しておいて、委員会の終わりに次回の日程を再度調整して決定します。議題はおおむね年間計画に基づいて取り上げていきますが、現場の実情などを見ながら開催の都度内容を決定しています。」と状況を語りました。

平成26年6月の改正労働安全衛生法によるリスクアセスメントやストレスチェックの義務化など、安全・衛生委員会の果たす役割がますます大きくなっている状況の中で、市では月1回の開催に取り組むことで、審議事項の増加等に対応しています。

丸山課長補佐

「日程調整は大変ですが月1回は意見を聴く場が必要です」と語る丸山課長補佐

また、市では一事業所が50人未満でも安全衛生委員会を設置しています。労働安全衛生法令で設置義務のない事業所に安全衛生委員会を設置することについて、職員課厚生担当主査の中村 旭氏は「事務職が中心の支所については、市職員安全衛生委員会に含めています。しかし、し尿処理を所管する衛生センターや調理業務を行う学校給食センターは、危険性・有害性を伴う業務がありますので、公務災害の防止を図るため法令以下の規模でも委員会を設置しています。」と経緯を語りました。

中村主査

「各委員会が年間計画を立てて災害を減らそうと取り組んでいます」と語る中村主査

2 災害事例の全庁共有やリスクアセスメントによる公務災害防止

市では全庁的に公務災害の防止を図るため、災害が発生した場合は公務災害原因調査・安全対策報告書を被災職員の所属長に提出させています。報告書には検討参加者を記載することとなっており、所属内での災害原因や安全対策の共有が図られています。そして、公務災害事例は一覧表にまとめられて、総括安全衛生管理者から市独自の安全衛生管理責任者である各所属長に周知することで、類似の公務災害の未然防止を促進しています。

また、各職場安全衛生委員会でも公務災害防止のさまざまな取り組みが行われています。特に清掃センターの職場安全衛生員会では、平成18年度から施行された改正労働安全衛生法によるリスクアセスメントの努力義務化に伴い、委員会で検討を重ねて手順を分かりやすくまとめた「長野市清掃センター リスクアセスメントマニュアル 」を作成し、平成23年度からリスクアセスメントを実施しています。

マニュアルの目的には「職場の全員が参加して」と全職員で取り組むことがうたわれています。また、最初のステップでは危険性又は有害性(リスク)の特定にあたっては「日常業務について、作業手順書を作成する。」と定めています。国の指針でもリスクの調査前の入手資料として作業手順書が示されていますが、委員会では手順書の作成をリスクアセスメントの手続きに明記し、リスクの洗い出しに漏れがないようにしています。そして、リスクの見積り、低減措置の検討、実施及び記録等一連の活動を行い、年度末にはリスク低減措置効果の確認等の見直しを行います。見直しにより出てきた課題は委員会で調査審議を行い、次年度の安全衛生計画に反映するPDCAサイクルで回すことにより継続的に改善を図っています。  

こうした全庁や各職場安全衛生委員会の取り組みにより、平成25年度の公務災害件数は平成23年度から約3割減少しています。

清掃センターリスクアセスメント実施フロー

清掃センターリスクアセスメント実施フロー

3 通勤訓練や職場研修等の日常的なメンタルヘルス対策

全国的に地方公共団体のメンタルヘルス不調による長期病休者が増加する中、市でも増加傾向にありました。そこで、平成12年度から新任課長や現職の課長補佐・係長等全ての管理職を対象にメンタルヘルス研修を開始し、平成18年度には病気休業職員に係る職場復帰支援制度実施要領及び実施マニュアルを、平成19年度には心の健康づくり計画を策定するなど、メンタルヘルス対策の充実・強化を図っています。

中でも職場復帰支援制度要領は、病気休業の長さにより4段階に分けて、その区分に応じて試し出勤の有無や復職決定者、復職後の面談時期等を変える細やかな対応を定めています。また、同要領は試し出勤の前に、休業者が職場復帰のための準備として、通常の通勤方法で職場又は医務保健室まで通う通勤訓練の制度を定めています。これは自己の日常生活のリズムや労働基礎体力の回復と安全な通勤の可否を判断するために、休業者の申し出 により実施されています。平成23年度から職員課に初めて正規職員の保健師として配置された課長補佐の塚田 悦江氏は、効果についてこう語りました。「まずは家から出るリズムを作ってもらうために、毎日、医務保健室に始業時間までに通いましょうという取り組みです。本人とは病気の状況などについて会話しています。長時間いるわけではありませんが、利用した休業者からは試し出勤の前に自信がついたなど、前向きな意見が聞かれました。」

塚田課長補佐

「早期の相談が増えたと感じて います」と語る塚田課長補佐

その他、毎年度新規採用職員には、職業性ストレス簡易調査票を活用した研修を実施しています。また、全職場が年2回自らテーマを決めて実施する職場研修では、メンタルヘルスが選定テーマの一つに掲げられています。平成25年度は15部署がこのテーマで研修を行い、職場単位でメンタルヘルスについて学んでいます。  

これらの取り組みにより相談件数が増加するなど、全庁的にメンタルヘルスへの理解が図られ、メンタルヘルス不調のより一層の早期発見、早期対応が促進されています

アドバイザーより一言

アドバイザー/芳賀 伸之

市の安全衛生管理規則では、労働安全衛生法が定める各管理者の補助者選任など市独自の実施事項を定めているほか、安全衛生委員会は同法の適用単位事業場ごとに組織され、月1回の開催や活発な議論が行われていることは良いことです。さらに「ハチ刺され防止」・「草刈機の安全操作」等、農山村地域を多く有する市の特徴を踏まえた注意喚起や、具体的な防止対策を記載した公務災害の一覧を職員に公表し再発防止の呼びかけを行っていることで、公務災害の一層の減少が期待されます。

また、通勤訓練は休業者の生活のリズムを戻すことに役立つ、市独自の良い取り組みです。  

今後は、抽出された課題と改善項目、実施スケジュールを盛り込んだ次年度の安全衛生管理実施計画案を委員会で審議するとともに、毎月の委員会では計画の実施項目について、具体的な実施方法の確認や進捗状況の把握を行って、確実に改善を進めることをお勧めします。

中央労働災害防止協会 関東安全衛生サービスセンター
安全管理士 芳賀 伸之

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City profile

長野県長野市

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  • 面積 834.85km2
  • 人口 384,680人
    (2014.11.1現在)
  • 人口密度 461人 /km2

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〒380-8512
長野県長野市
大字鶴賀緑町1613
取材先:職員課

職員数2,844人
【内訳】
一般行政 1,796人
教育 281人
消防 471人
公営企業等 296人
(2015.4.1時点)

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