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Report9 Kanazawa City

先を見据えた活動で安全衛生を向上 金沢市

取り組みのポイント

  • 市役所安全衛生委員会に保健所長等がオブザーバーとして出席し助言・提案
  • 職場環境改善を図る心の健康状態調査や職場復帰支援相談員による内部スタッフの支援
  • 地方公共団体で初めて労働安全衛生マネジメントの認証を取得しリスクを低減

金沢市では、保健所長等が市役所安全衛生委員会に衛生の専門家として出席して助言・提案を行っています。職場巡視では、選考基準により選定された対象の事業所に、事前にチェックリストを送付して、計画的、効率的な巡視を行っています。また、個人の気付きと職場環境改善を図る心の健康状態調査や職場復帰支援相談員による内部スタッフの支援によりメンタルヘルス対策を充実・強化しているほか、環境局では地方公共団体で初めて労働安全衛生マネジメントの認証を取得しリスク低減を図るなど、先を見据えた活動により安全衛生の向上を図る金沢市の取り組みを紹介します。

1 保健師等が委員会に出席し助言・提案

市では7つの事業場安全衛生委員会を設置していますが、最大規模の市役所安全衛生委員会には、産業医のほか衛生に関し経験を有するもの等がオブザーバーとして委員会に出席しています。職員課福利厚生グループ主査の中川 知之氏は「定期健康診断の受診状況やメンタルヘルス相談の件数等の報告や審議があるので、出席してもらっています。委員の大半は事務職の委員なので、特に衛生関係の議事で深く議論するには衛生や保健に精通した職員の出席が不可欠です。」と趣旨を語りました。

中川主査

「常に計画的、効率的な活動を考えて取り組んでいます」と語る中川主査

現在は保健所長と職員課に配置された保健師が、毎回市役所委員会に出席しています。オブザーバーは市職員安全衛生委員会規則に規定されたものではありませんが、臨機応変に保健衛生の専門家の出席を認め、特に健康管理やメンタルヘルス対策、過重労働対策等への助言、提案等を受けることで、効果的に安全衛生の向上を図っています。

2 チェックリストの事前送付等による効果的な職場巡視

各地方公共団体では効果的な職場巡視となるようさまざまな工夫を凝らしていますが、市役所委員会では平成26年度から巡視前に職場巡視事前チェック表を対象課所から提出してもらって、課所の概要を把握してから職場巡視を実施しています。中川氏はその意義についてこう語りました。「事業所の巡視では、その職場の実態を知らずに行くと、巡視ポイントや指摘事項の改善状況などが十分把握できません。また、保育所など同じ機関を回っても、保育所ごとに実情が異なるので巡視のポイントも変わります。そこで効果的に巡視するため、事前に資料を出してもらうようにしました。」

さらに、巡視先は選考基準に基づき年度ごとの対象機関を示したパトロール実施計画表に基づいて決定しています。中川氏は「そもそも安全点検パトロールは公務災害未然防止のために行うものですから、リスク低減のためには指摘事項の改善状況を確認しなければならない事業場や公務災害の発生した事業場を優先すべきです。」と、限られた人員での効果的な巡視について語りました。

巡視先の選考基準

巡視先・内容 目的
前回巡視計画での点検施設の再パトロール 指摘事項の是正状況の
確認を主眼
前回巡視計画での予定外施設のパトロール① 施設内での
公務災害が発生した施設の点検
前回巡視計画での予定外施設のパトロール② 未実施の新規施設等の巡視

3 職場復帰支援相談員による内部スタッフの支援等メンタルヘルス対策の強化

平成25年度は前年度に時間外勤務の多い課所で、前年度までに実施していない19課330人を対象に実施され、個人結果は直接職員に、組織結果は所属長に通知されています。また、各安全衛生委員会では結果報告と審議が行われ、各所属では組織結果をもとに職場環境改善の取り組みが行われています。

各所属での職場環境改善取り組み事例

正・副担当を明確にするなど職場内相互支援の活性化を促進
グループミーティングを定期的に開催
課員に対する積極的声かけ実践
朝礼または夕礼の実施

また、平成24年度から精神科医を市独自の職場復帰支援相談員に選任しています。この制度について中川氏はこう語りました。「メンタルヘルス不調による休職者を職場へ復帰させる際、精神科医等のより専門的な知識が必要となる場面があります。そこで、産業医・保健師が精神科医の相談員に、復帰の可否について助言等をもらうことで、より一層の円滑な職場復帰を推進できると考えます。」  

さらに、平成26年度からは30・40歳代の中堅職員のメンタルヘルス研修を実習型研修にしたほか、20歳代職員に対する研修を導入するなど、市ではメンタルヘルス対策に本腰を入れて取り組んでいます。

職場復帰支援相談員の概要

職場復帰支援相談員の概要

4 地方公共団体初の労働安全衛生マネジメントの認証取得

市環境局施設管理課の東部環境エネルギーセンター(旧クリーンセンター)は、平成17年度に地方公共団体で初めて労働安全衛生マネジメントに関する認証のOHSAS(オーサス)18001を取得しました。労働安全衛生マネジメントシステムは、PDCAサイクルを核とする組織的かつ体系的な安全衛生のための取り組みを推進する仕組みとして、平成11年度に国から指針が出されていますが、その経緯について環境局施設管理課長の坂井 恒氏は「環境エネルギーセンターでは平成12年にISO14001を取得して、環境マネジメントシステムに取り組んできました。その後、労働安全衛生の規格となるオーサスができましたので、一層の安全衛生向上のためにオーサスにも取り組むことにしました。ISOと同じような仕組みなので、一緒にやっても手間はそんなに増えないことも認証取得を後押ししました。」と語りました。

坂井課長

「よりよい安全衛生のために職員の発案でオーサスを導入しました」と語る坂井課長

こうしてオーサスに基づく取り組みが始まり、東部環境エネルギーセンターでは、許容できないリスク325件を洗い出し、平成25年度末までに317件のリスク低減が図られました。平成25年度には前年度から稼働した西部環境エネルギーセンターでもオーサスの取り組みが開始され、リスク度の最も高い10件について低減措置が講じられており、結果は安全衛生委員会等で審議されて次年度目標に反映されています。  

また、毎年度オーサスの研修が実施されています。施設管理課西部環境エネルギーセンター管理グループ長の竹田 正弘氏は「初めて環境エネルギーセンターの業務に携わる新規採用職員や異動者には、4月にオーサスの研修を実施しています。年度内には必ず1回、東西各センターのオーバーホールの時期に職場研修としてオーサスとISO両方の研修を行っています。」と継続した意識啓発の取り組みを語りました。

施設管理課担当課長兼西部環境エネルギーセンター所長の中村 透氏は、オーサスの研修を受けた感想をこう語りました。「私も4月に異動してきて、すぐにオーサス等の研修受けました。オーサスを全て理解して活動するのは大変ですが、基本的な安全衛生の仕組みを念頭において職場に入っていけますので、公務災害の未然防止にとても有効な研修だと思います。」こうして、市の環境エネルギーセンターでは、日々、安全な職場環境で環境に優しい方法により業務が行われています。

竹田グループ長

「全職員からリスクを出してもらって取り組んでいます」と語る竹田グループ長

中村所長

「職員一人ひとりがしっかり安全を考えるようになっています」と語る中村所長

アドバイザーより一言

アドバイザー/藤田 政次

メンタルヘルス対策では、産業医、保健師が必要に応じて外部の精神科医師の助言を受ける仕組みは、あまり例を見ない好事例です。また、ストレスチェックの結果がまとめられ、各課が分析結果により職場環境の改善に取り組んでいることは良いことです。

今後は、外部の専門家による安全衛生診断の受診や労働安全衛生法の改正に係る専門性の高い課題に対応するための専門委員会の設置、オーサスの清掃事業(収集・運搬)への展開をお勧めします。

中央労働災害防止協会 中部安全衛生サービスセンター
安全管理士 藤田 政次

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City profile

石川県金沢市

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  • 面積 468.22km2
  • 人口 464,752人
    (2014.11.1現在)
  • 人口密度 993人 /km2

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石川県金沢市
広坂1-1-1
取材先:職員課

職員数3,269人
【内訳】
一般行政 1,644人
教育 426人
消防 418人
公営企業等 781人
(2014.4.1時点)

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