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有機的な連携で安全衛生を向上 青森市

取り組みのポイント

  • 複数の衛生管理者が分担して、労働安全衛生法令どおりの週1回の職場巡視を実施
  • 副市長がトップの安全衛生管理委員会が各事業場委員会の取り組みを活性化
  • 職員に「目配り・気配り」を促すメンタルヘルス対策のガイドライン等を策定

青森市は、最大規模の本庁等において、衛生管理者が労働安全衛生法令どおりの週1回の職場巡視を行っています。また、各安全衛生委員会の総括的組織として「安全衛生管理委員会」を設置し、各安全衛生委員会のレベルアップを図っています。企業局交通部では「運輸安全マネジメント委員会」と安全衛生委員会が連携して、災害の未然防止に取り組んでいます。こうした有機的な連携により安全衛生の向上を図る青森市の取り組みを紹介します。

1 衛生管理者が週1回の職場巡視を実施

最も職員数の多い本庁衛生委員会に属する課所に対しては、平成24年度から労働安全衛生法令に定められた週1回の職場巡視を実施しています。人事課副参事の三浦 大延氏は「大きな公務災害があったわけではありませんが、それまで法どおりの職場巡視は行われていませんでした。それで、法令順守の点からしっかりやりたいと考えて、平成24年度から実施することにしました。」と経緯を語りました。

写真:三浦副参事

「工夫してできることから法令順守を進めています」と語る三浦副参事

職場巡視は複数の衛生管理者が分担して行い、結果はチェックリストに記録されて、本庁衛生委員会の事務局である人事課に報告されます。そして、人事課は安全衛生上問題がある事項については、すぐに当該所属に対策を講じるよう連絡します。三浦副参事は「施設の改修等が必要で時間や費用を要する場合でも、危険を放置することのないよう、まずは仮の対策を講じるよう連絡しています。そして、予算の確保後などにしっかりした対策を講じてもらいます。」と、週1回の職場巡視を生かした迅速な事後措置で、リスクの除去・低減に取り組んでいる様子を語りました。

巡視結果は、毎月開催される本庁衛生委員会にも報告され、問題箇所については各委員に周知が図られています。また、産業医が必ず参加して行われる委員会の職場巡視では、報告された問題箇所に留意してパトロールが行われており、週1回の職場巡視は委員会が行う職場巡視の事前情報としても活用されています。

2 安全衛生管理委員会による委員会活動の活性化

企業局を除く各安全・衛生委員会の総括的組織として、市は「安全衛生管理委員会」を設置しています。年次休暇の取得促進等、管理委員会では全庁的な取り組みについて報告・検討が行われ、各安全・衛生委員会の活性化が図られています。

青森市安全衛生管理体制

青森市安全衛生管理体制

また、本庁衛生委員会や市民病院衛生委員会、企業局交通部安全衛生委員会など、ほとんどの安全・衛生委員会が法令どおり毎月1回委員会を開催していますが、今年度、月1回開催していない委員会に対しては、管理委員会から月1回の開催が要請されました。三浦副参事は、管理委員会による各安全・衛生委員会活動の充実・強化について「月1回開催できない委員会は、業務多忙や交代勤務で職場を抜けられない等の事情があるようです。しかし、それは他の委員会でも同様なので、管理委員会のトップである副市長から、月1回開催するよう話がなされました。今後は、市全体で月1回開催が進んでいくと思います。」と語りました。

3 「目配り・気配り」を促すメンタルヘルス対策等

行政需要の多様化等、地方公共団体を取り巻く厳しい状況を反映し、地方公務員の長期病休者数に占める、いわゆるメンタルヘルス不調者は増加傾向(※)にあります。青森市でも、病気休職者に占める精神的疾患の割合は増加傾向にありました。

※「地方公務員健康状況等の現況」((一財)地方公務員安全衛生推進協会、平成26年11月発刊)では、「精神及び行動の障害」の長期病休者数に占める割合(10万人率)が年々増加し、51.5%になりました。

そこで市では、国の指針に対応する「心の健康づくりガイドライン」の策定やパワーハラスメント対策のための冊子「誰もが働きやすい職場を目指して!」等を矢継ぎ早に整備し、メンタルヘルス対策の一層の充実・強化を図っています。

中でも「心の健康づくりガイドライン」や精神的疾患対応マニュアルでは、随所に管理監督者等の「目配り・気配り」をうたっています。三浦副参事は「一昔前は、課長補佐など業務の進行管理がメインの職員が、目配り・気配りをしていました。しかし、現在は主幹等の中間管理職が、プレイングマネージャーとなっていますので、部下に目配り・気配りしていくのは、なかなか難しい状況にあります。そこで、職員に『目配り・気配り』を促したいと考えて『心の健康づくりガイドライン』などに『目配り・気配り』を盛り込みました。」と理由を語りました。

市では上司と部下、同僚同士の人間関係の希薄化もメンタルヘルス不調の内的要因として捉え、「目配り・気配り」を促進するなど職員の意識変革も促しながら、メンタルヘルス対策を進めています。

写真:人事課主査の小山 美穂氏

「不調者が珍しくない状況を改善したいです」と語る人事課主査の小山 美穂氏

写真:事課主査の山上 幸男氏

「メンタルは職員一人ひとりに考えてもらいたいです」と語る人事課主査の山上 幸男氏

メンタルヘルス対策等の取り組み

取り組み 時期 内容
職員支援室の設置 平成21年度 職員OBを1名配置し、仕事上での悩み等に対して支援
各庁舎に自動血圧計を整備 平成23年度 保健室の負担軽減を図るため、職員互助会で職員用の自動血圧計を各庁舎に整備
慣らし勤務の本格実施 平成25年度 市が傷害保険料を負担し、復職する場合は原則として実施
「心の健康づくりガイドライン」の策定 管理監督者に「目配り・気配り」を促すなど、現在の職員に不足がちな対応を付加
「誰もが働きやすい職場を目指して!」の作成・配付 パワーハラスメントの理解・防止を図るために、職員の関心を高めるタイトル名で安全衛生管理委員会が作成
人事課に保健指導等を行う保健師を配置 平成26年度 保健室の保健師に加えて、正規職員の保健師を1名配置
精神的疾患対応マニュアルの作成・配付 不調者の状態にあわせた管理監督者や同僚職員の対応のポイントを分かりすく取りまとめ

4 交通部の運輸安全マネジメント委員会と連携した取り組み

バスの運行を行う企業局交通部では、運輸安全マネジメント制度の開始を受けて、平成18年から「運輸安全マネジメント委員会」を設置していますが、交通部安全衛生委員会と安全に係る情報を共有することによって、公務災害の未然防止を図っています。市交通部管理課主査の久米田 貴彦氏は「公務災害や交通事故を防ぐために、運輸安全マネジメント委員会で協議した資料を、次の安全衛生委員会の際に配付して、各委員に説明しています。安全衛生委員会では、災害について天候等別の視点から資料を求められるなど、踏み込んだ分析・検討にもつながっています。」と情報共有による相乗効果を語りました。

こうした安全衛生委員会と運輸安全マネジメント委員会の連携や次年度の安全衛生委員会開催計画に対する意見提出、転倒防止の手作りポスターの掲示等により、交通部の平成23年度から平成25年度までの公務災害件数は1件となっており、運輸事業職員の全国平均の割合を下回る状況となっています。

写真:久米田主査

「統計的な情報は両委員会で共有するようにしています」と語る久米田主査

アドバイザーより一言

写真:アドバイザー/阿部氏

本庁や各出先施設に安全・衛生委員会を設置し、法令上の体制と管理を実施しているほか、市長部局では副市長を責任者とする安全衛生管理委員会を設置して、傘下の各委員会に必要な助言を与えているのは良い取り組みです。また、企業局では交通部、水道部ともここ数年公務災害が低い水準に保たれています。特に交通部は運輸安全マネジメント委員会と連携をとり、事故の傾向を把握しています。

メンタルヘルス対策では、「心の健康づくりガイドライン」などを作成して管理を進め、精神疾患を発症した場合の対応マニュアルの整備や職場復帰に係わる「ならし勤務制度」も本格実施されていることは良いことです。

今後は公務災害を人、物、管理や事故の型別等に分析して災害の未然防止に活用するほか、メンタルヘルス対策では、あいさつ運動など職場内のコミュニケーションを高める具体的な活動を進めることをお勧めします。

中央労働災害防止協会 東北安全衛生サービスセンター
安全管理士 阿部 美明

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City profile

青森県青森市

図:青森市位置

  • 面積 824.62km2
  • 人口 296,202人
    (2014.11.1現在)
  • 人口密度 359人 /km2

見どころ

写真:青森ねぶた祭 日本の火祭り 青森ねぶた祭

特産品

写真:あおもりカシス 生産量日本一!あおもりカシス

ゆるキャラ

イラスト:ねぶたん ねぶたん

City office

青森市役所

写真:青森市役所

〒030-8555
青森県青森市
中央1-22-5
取材先:人事課

職員数2,540人
【内訳】
一般行政 1,170人
教育 271人
公営企業等 1,099人
(2014.4.1時点)

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