Report4 Kashiwa City
公務災害の削減に向けた着実な取り組み 柏市
取り組みのポイント
- 安全衛生委員会の開催日を定例化し、総括安全衛生管理者等の年間日程を確保
これにより12ある全ての委員会が毎月1回開催 - 職員数の多い本庁舎の各所属には、本庁等安全衛生委員会との橋渡し役として「快適職場推進リーダー」を配置
労働安全衛生規則は、月1回以上の安全・衛生委員会の開催を定めています。しかし、さまざまな理由により、月1回開催していない地方公共団体が見受けられます。一方、柏市では、平成25年度から12ある全ての安全衛生委員会が、毎月1回開催しています。こうした着実な安全衛生活動により公務災害の削減を目指す、柏市の取り組みを紹介します。
1 全ての安全衛生委員会が毎月1回開催
市は、安全衛生管理規程等により12の安全衛生委員会を設置し、月1回の委員会開催を定めています。しかし、「議題がない」「議長となる総括安全衛生管理者(部長級職員)の日程確保ができない」等の理由により、平成22年度までは年数回という委員会もある状況でした。
柏市安全衛生管理体制
人事課給与厚生室の野原 孝氏はこう語ります。「公務災害は、ここ数年10数件で横ばいの状況が続いていました。しかし、当市と同規模で公務災害の少ない市がありました。そこで、当市でももっと公務災害を減らせるのではないか。それには、まず全ての委員会の活性化が必要と考えて、月1回の開催を促すことにしました。」
「各委員会と連絡を密にして月1回
開催を進めました」と語る野原氏
そこで平成23年度から、月1回開催の障壁となっている委員会の運営方法や各委員の意識を、給与厚生室がリーダーシップを取って一つひとつ変えていきます。他の委員会の議事や給与厚生室が収集した安全衛生情報を各委員会に提供したり、議長等の日程確保を図るため委員会開催日を定例化するなどしたのです。
月1回開催への取り組み
区分 | 開催の障壁 | 取り組み |
---|---|---|
運営方法 | 多忙な議長(総括安全衛生管理者)や産業医等の日程確保が困難 | 委員会開催を定例化し、年度当初に年間日程を確保 |
議題がない | 各委員会事務局に他の委員会の議事や内外の関係情報を提供 | |
委員の意識 | 多忙な日常業務のかたわら月1回の出席は難しい | 委員会開催を毎月第3水曜日に定例化し、業務との調整を促進 |
委員会で発言することがない | 全委員から発言を求めるシナリオを作成し、事前に議長と打合せ | |
専門用語が多く難解である | 難解な用語は使用せず、できるだけ分かりやすい言葉で説明 |
こうして、年々開催回数が増加し、平成25年度からは全ての委員会が毎月1回開催されています。各委員会では、例えば夏季は熱中症対策等、その時々のタイムリーな議題に対して熱心な話し合いが行われており、名実共に充実した委員会が開催されています。
また、各委員会の事務局担当者会議を年1回開催し、委員会間の情報共有を図っていましたが、平成25年度からは試行的に委員会の相互交流も始めました。これは、委員が他の委員会に参加し、活動状況をつかんでもらおうとするものです。異なる委員会の様子を実感してもらうことで、委員会のさらなる活性化が期待できます。
2 職場と安全衛生委員会との橋渡し役「快適職場推進リーダー」を配置
安全衛生委員会は一生懸命活動しているのに、なかなか全庁的に安全衛生の取り組みが広がらない…。そんな悩みを抱える地方公共団体もあると思います。平成20年度までは、柏市も似たような状況でした。野原氏はこう語ります。「それまで委員会の活動は、事務局とのやり取りに留まり、なかなか広がりませんでした。しかし、委員会の活動を各所属で生かしてもらいたい。そこで、各所属に一人ずつ委員会と所属の橋渡し役を置こうと考えました。」
そうして、平成21年度に多くの所属で組織される本庁等安全衛生委員会の活動を、各所属に十分つなげるために「快適職場推進リーダー」を設置したのです。
このような職場環境改善に係る推進員制度は、各地方公共団体においてもみられるところですが、柏市では、各所属での取り組みを着実に推進するため、原則として課長補佐クラスの職員を指名しています。「若手職員では、先輩に対して言いづらいことがあると思います。そこで、職場の状況を把握し、かつ発言力のある人ということで、統括リーダー(課長補佐級)という発想が出てきました。」と人事課給与厚生室長の小島 利夫氏は語りました。
気付いた危険個所を衛生管理者等に連絡する、ノー残業デーの巡視メンバーに加わって見回りの実効性を高める、整理整頓推進月間では作業の中心的役割を担う等、快適で安全な職場づくりの形成に快適職場推進リーダーが大きな役割をはたしています。
「制度としては十分浸透して
きました」と語る小島室長
「本庁全課で91名のリーダーが頑張っています」と給与厚生室主査の三田上 稔子氏
3 毎年度着眼点を変える職場巡視等の取り組み
職場巡視は、職場におけるリスクの除去・低減を図る上で大変重要です。しかし、毎年同じチェック項目で巡視を行っていると、マンネリ化し表面的になる可能性がないとは言えません。そこで、平成23年度から本庁等安全衛生委員会では、毎年度、新たなテーマを盛り込んだチェックリストを作成し、着眼点を変えて職場巡視を実施しています。
各年度テーマ一覧
年度 | 内 容 | 理 由 |
---|---|---|
平成23年度 | 指摘事項等チェック欄全てを自由記述式に変更 | 前年度と全く異なる様式として、各委員の意識改革を促し、職場巡視の活性化を図るため |
ロッカー・棚上の荷物、動線の確保、温湿度の確認 | 大震災及びそれに伴う節電に対応するため | |
平成24年度 | 気積の確認 | 部署の異動に対応するため |
平成25年度 | 窓口で凶器となるおそれのある物の確認 | 行政暴力に対応するため |
新たなテーマは、巡視メンバーに十分周知し、共有されています。野原氏は「今年度はこのテーマで行いたいと委員会に諮り、同意をもらいます。巡視メンバーには事前に趣旨を説明し、巡視当日は特に留意してもらっています。」と、実施までの流れを語りました。
また、衛生管理者の資格を有する職員の年齢層が上がっていました。このため退職や人事異動により不足することがないよう、平成24年度から、それまで3人分だった衛生管理者の資格取得に要する経費を5名分確保し、有資格者の増員を図っています。これにより毎年度新しい衛生管理者が誕生し、委員会等で活躍しています。
給与厚生室は、さまざまなアイデアで市の安全衛生に係る取り組みを引っ張ってきました。小島室長が「当室にはアグレッシブな職員が揃っていますので、自発的、積極的に意見を出してくれます。」と語るように、柏市は職員の豊富なアイデアにより安全衛生の向上に取り組んでいます。
アドバイザーより一言
安全衛生委員会の開催を定例化して、業務多忙下でも確実に委員会を開催していることは、他の地方公共団体に参考となる取り組みです。各委員会の審議は活発に行われ、月1回開催しつつ委員会本来の役割が果たされています。さらに事務局担当者会議での情報交換は、委員会の活性化に有効です。
本庁等安全衛生委員会で使用されているチェックリストは、着目点、前回指摘事項が記載され、3段階で評価するもので、使いやすいものです。巡視テーマは毎年度見直しが行われ、チェックリストのPDCAができています。
また、本庁において課長補佐クラスを「快適職場推進リーダー」に指名し、4S等職場の安全衛生活動を徹底・担保しています。
今後は、これまでの良い取り組みに加え、年間計画の達成率の把握、公務災害の削減、及びメンタルヘルスケアの推進により、さらに安全衛生を推進されるようお願いします。
中央労働災害防止協会 関東安全衛生サービスセンター
衛生管理士 松村 博