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Report7 Fukuyama City

安全衛生の推進で公共サービスの向上を 福山市

取り組みのポイント

  • 職種別で組織されていた安全衛生委員会を、地域別を中心とする構成に再編
    各地域が主体的に取り組むことで、迅速・丁寧な安全衛生活動を推進
  • メンタルヘルス不調の増加を防ぐため、メンタルヘルス計画策定後に短期間でメンタルヘルス対策を整備

福山市は、安全衛生に係る業務を「安全厚生課」が所管していますが、職員の安全衛生を担う課の名称に「安全」を冠する市は、全国的にも数えるほどしかありません。市は安全重視で取り組みを進めるなかで、平成23年度に、より迅速・丁寧な安全衛生活動を促進するため、安全衛生委員会の地域別再編等を行いました。併せて短期間でメンタルヘルス対策の整備を進める福山市の取り組みを紹介します。

1 地域別を中心とする安全衛生委員会に再編

市の安全衛生委員会は、平成22年度まで職種別に部局を中心として構成されていました。この構成は労働安全衛生法の趣旨に合致し、職種に応じた取り組みができることから、多くの地方公共団体で見られる形態です。しかし、福山市では機構改革等により毎年事業所の職員数が変わる中で、衛生管理者の有資格者不在等の理由により委員会活動が機能しない状況があり、早急な組織再編が求められていました。また、平成18年度に設置された安全厚生課が、全ての公務災害について現場確認及び検証を行っていましたが、公務災害が連続したときなどは、現場に駆けつけることが困難な状況も生じました。安全厚生課長の渡辺 真氏はこう語ります。「公務災害が発生したときには、色々な対応を素早く行う必要があります。しかし、同時期に公務災害が発生した時などは、限られた人員で複数の現場確認に行くのは困難な場合もありました。」

福山市安全衛生管理体制

総務部長の佐藤 元彦氏(前列左から2番目)及び市職員労働組合連合会
労働安全衛生担当の髙橋 哲也氏(前列左端)と安全厚生課の皆さん
前列左3人目から渡辺課長、脊溝 昌史次長
後列左から清水 寛敏氏、渡邉 哲氏

一方、市では合併により拡大した行政区域における行政サービスの充実が課題となっていました。このため、市では「地域のことは地域で解決」を合言葉に、支所機能の更なる充実・強化によって行政サービスの拡充を図ります。このような方針を踏まえ、安全衛生体制の再整備についても「地域のことは地域で解決」を基本に労使で議論を重ね、新たな組織体制を構築しました。渡辺課長は「地域独特の安全衛生問題は、実状をよく知るその地域で解決してもらうことが、より効果的と考えました。結果として、地域の担当者なら近いですから、災害発生時の現場確認等に対して素早く丁寧な対応が可能になりました。」と語りました。

こうして、各地域単位に全面的に安全衛生を任せる方向に転換し、平成22年度から試行的に市役所各支所等が中心となって、地域別を単位とする安全衛生活動を始めます。また、労働基準監督署には、一定の地域に所在する各事業所をまとめて一つの安全衛生委員会を組織することが、労働安全衛生法上も問題がないことを確認しました。

そして、1年間の試行後、平成23年度に安全衛生規則を改正し、地域別を中心とする安全衛生委員会に再編して、地域別に機動的な安全衛生の取り組みが行われています。

福山市安全衛生管理体制

福山市安全衛生管理体制

また、地域別に委員会を組織することで、労働安全衛生法が安全・衛生委員会を必置としていない小規模の所属も各委員会に含めています。渡辺課長は「2010年度(平成22年度)以前は、法に規定がない小規模の所属は、委員会に属していないところもありました。しかし、日々、職員が働いていることには変わりありません。そこで、地域を委員会の単位とすることで、その地域内にある所属全て含めることができたのです。」ともう一つの効果を語りました。

2 同一職種間における安全衛生活動の連携を強化

地域別に委員会を組織したことで、迅速・丁寧な安全衛生活動が図られましたが、デメリットも懸念されました。それは、職種ごとの委員会がないところもあるため、同一職種間での情報共有が薄れてしまうことでした。そこで、平成23年度の安全衛生規則の改正では、各委員会の総合調整・情報共有を図るために、新たに総括安全衛生委員会が規定されました。また、担当者会議の開催や要請に基づく「保育所労働安全衛生研修」など職種別等の研修を年間20回以上行うなどして、同一職種間における安全衛生活動の連携を強化・促進しています。

安全厚生課次長の脊溝 昌史氏は、職種別の研修についてこう語ります。「公民館、保育所や調理場を対象とした研修では、職種ごとに起こり得るであろう災害等の話題を盛り込みながら、職員一人ひとりが安全衛生第一の気持ちを持ってもらえるよう話しています。」

同一職種間の連携を補強する取り組み

取り組み 内 容
総括安全衛生委員会の設置・開催 ・平成23年度規則改正により設置
・年2回開催
労働安全衛生担当者会議の開催 ・各委員会の実務担当者が出席
・必要に応じて開催
職種別・階層別研修の実施 ・学校給食調理や新規採用職員等を対象
・年20回以上開催
主管課から安全衛生情報を関係機関に通知 ・災害状況等の一報を通知し注意喚起
・随時連絡

3 短期間でメンタルヘルス対策の体制を整備

市はそれまで、安全活動に特に力を入れてきました。それは、職員が事故なく安全に仕事ができてこそ、良質な公共サービスが提供できるとの考えからです。しかし、年々増加するメンタルヘルス不調者の状況を見て、衛生活動の充実が必要と考えます。渡辺課長は「2010年度(平成22年度)にはメンタルヘルス不調による休職者等の割合が、2004年度(平成16年度)から2倍以上に増加していました。それまでもメンタルヘルス対策には取り組んできましたが、医務室の産業医や保健師に任せきりの面もありました。そこで、2010年度(平成22年度)に安全衛生活動の中心を地域別にシフトしたのを機に、衛生を充実することは安全の向上にもつながると考え、メンタルヘルス対策に重点的に取り組むこととしました。」と経緯を語りました。

こうして、市は平成22年度から安全厚生課の担当が外部研修でメンタルヘルスへの理解を深めた後、平成23年度には市のメンタルヘルスに係る基本方針を定めた「福山市職員心の健康づくり計画」を策定しました。また、平成24年度には、臨時・嘱託職員も含めた全ての職員に対してメンタルヘルス研修を実施するなど、短期間でメンタルヘルス対策を整備し、取り組みを展開しています。

計画策定以後のメンタルヘルス対策

対 策 年度 内 容
「福山市職員心の健康づくり計画」策定 平成23年度 平成23~27年度の5年間とし、臨時・嘱託職員も対象
災害支援活動参加職員に対する健康管理実施 当該職員に帰庁後、及び帰庁1か月後にストレスチェックと健康相談を実施
全職員対象のメンタルヘルス研修開催 平成24年度 管理監督者819名に全13回、一般職員(臨時・嘱託職員を含む)に全63回開催
専門スタッフの増員 医務室にメンタルヘルス専門の嘱託保健師1名増員(正規、臨時合せて保健師計3名)

渡辺課長はこう語りました。「メンタルヘルス対策の効果は、目に見えて表れにくいと思います。しかし、組織で対応できるシステムが必要と考え、労使での議論を行いながら体制を整備してきました。スタッフも重要性を認識して、自信と熱意を持って取り組んでいます。」

「安全は全てに優先する。」事業活動の基礎となる考えですが、福山市では、職員の心身が健康に保たれ、安全と健康が共に確保されることで、より質の高い公共サービスが提供できるとの方針のもと、メンタルヘルス対策を充実させています。

安全厚生課

安全衛生の象徴「安全衛生旗」が
掲げられた安全厚生課

庁舎内

ドアの軌跡を示し衝突防止が
図られている庁舎内

アドバイザーより一言

アドバイザー/山田氏

総括安全衛生委員会を設置し、審議することは、大きな組織での総合調整にとても有効です。この委員会を活用して、強みは水平展開し、弱みは改善することで、組織全体のレベルアップにつなげてください。また、当委員会は毎年5月に安全パトロールを実施しています。一層の災害防止を図るため、公務災害が多い夏季にも実施することをお勧めします。なお、パトロールをより効果的にするため、テーマを決めて、少人数で機動的に巡視する方法も検討ください。

日常業務では、教育・ルール等ソフト対策の充実により、職員一人ひとりの安全意識を高めることが、ヒューマンエラーを防止し、公務災害の低減に結び付きます。その手法として危険予知訓練等がありますので、外部研修等を活用して、今後は、こうした手法の全職場への展開と継続的な実施をお勧めします。

中央労働災害防止協会 中国四国安全衛生サービスセンター
安全管理士 山田 哲士

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City profile

広島県福山市

福山市位置

  • 面積 518.14km2
  • 人口 473,043人
    (2013.10.31現在)
  • 人口密度 913人 /km2

見どころ

常夜灯と鞆港 常夜灯と鞆港

特産品

くわい くわい

福山市ばらのイメージ
キャラクター

「ローラ」 「ローラ」

City office

福山市役所

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〒720-8501
広島県福山市
東桜町3-5
取材先:安全厚生課

職員数4,165人
【内訳】
一般行政 2,334人
教育 609人
公営企業等 1,222人
(2013.4.1総務省調査)

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