地方公務員災害補償基金 Fund For Local Government Enployees' Accident Compensation

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Report5 Yokosuka City

産業医の常勤化により相談体制を充実 横須賀市

ここ数年、地方公務員を取り巻く環境は変化し、多くの職員が強いストレスを感じていると言われています。 実際、「精神及び行動の障害」による長期病休者の発生率は、平成5年度の千人当たり2.2人から、平成22年度は千人当たり11.4人と 5倍以上に膨れ上がっており、地方公務員のメンタルヘルスの深刻さがはっきりと表れています。

こうした状況を打開すべく既に多くの地方公共団体がメンタルヘルス対策に真剣に取り組んでおり、 横須賀市もそんな自治体の一つです。産業医学の専門家・産業医を常勤とし、相談体制を強化する横須賀市の取り組みを紹介します。

いつでも産業医に相談できる

平成23年度、横須賀市の産業医 村田 厚氏が受けた相談件数は437件。うち、メンタル相談は302件で、全体の約7割でした。 そして多い年には、年間600件の相談(うちメンタル相談440件)を受けたことも――。

横須賀市において、産業医がこれだけ多くの相談をこなせるのは、平成18年度より、村田産業医が常勤として勤務しているからです。 産業医の面談は希望者から随時受け付けを行っていますが、職員の状況に応じ面談を義務付けたり積極的な勧奨を行ったりしています。

例えば、新規採用職員・派遣職員など著しく環境が変わった職員、ストレスチェックの結果が芳しくない職員、そして長時間労働者は、 産業医面談を受けるものとされています。また、残念ながら療養が必要になった職員については、療養の状況を確認したり、 長期休暇から復帰する手順について相談を受けたり、職場適応訓練や復職時に様子を見たりするなど、きめ細かな面談が行われます。

写真:村田産業医 グラフ:産業医相談件数

(写真)村田産業医 (グラフ)横須賀市産業医相談件数の推移

また、2人の保健師が配属されており、村田産業医と一体となってメンタルヘルス対策を含む職員の健康維持・増進に取り組んでいます。 平成23年度の保健師の相談件数は855件(うちメンタル相談495件)で、産業医・保健師併せた内部相談件数は、延べ1,292件 (うちメンタル相談797件)にも上りました。

写真:宮村係長 写真:粕谷保健師 グラフ:産業医相談件数

(写真)2人の保健師。左が宮村幸子係長、右が粕谷かほる氏 (グラフ)横須賀市保健師相談件数の推移

他にも横須賀市では、外部専門家によるメンタル相談も実施しており、精神科医師が月1回3時間、 2人のカウンセラーがそれぞれ月1回2時間ずつの面談を行っています。 平成23年度の外部専門家メンタル相談は122件の利用がありました。

「こころの健康は一人で悩まないことが大切だということから、当市では専門家の相談が受けやすい体制づくりを 積極的に推進しています。この取り組みで、増え続ける傾向にあるメンタルヘルス不調に、ある程度の歯止めがかかっているように 思われます。」と、人事課健康・安全係長の杉本 道也氏は語ります。

写真:杉本係長

「メンタル対策に専門家の力は不可欠」と杉本係長

毎年、初めて昇進した課長には産業医が、新規採用職員と新任主査には保健師が「職場のメンタルヘルス」をテーマに研修を 行っています。また、随時、庁内LANを使って、メンタルヘルス情報を職員に提供しています。

横須賀市では、産業医・保健師による職員皆への「呼び掛け」、そして一人ひとりに向き合う「相談」を通し、 メンタルヘルス対策を強く推し進めています。

独立性の高い安全衛生委員会

横須賀市では、12の安全衛生委員会があり、それぞれが極めて独立性が高い組織となっています。 各委員会の区分ごとに総括安全衛生管理者や安全管理者、衛生管理者がおり、公務災害が発生した場合でも、 その再発防止の取り組みは各委員会の区分ごとに対処されます。 現在のところ人事課ではよほどの事故でない限り、災害の詳しい内容までは立ち入らないこととしています。

図:横須賀市の安全衛生管理体制

こうした分権とも言える労働安全衛生管理体制は、横須賀市で長い間続いており、その理由を人事課の深沢 英明氏はこう語ります。 「横須賀市では、各部門の安全衛生活動において、労働者側の委員が積極的に取り組んできた歴史があります。 その結果、労働者側の声はよく汲み上げられ、それ相応の結果を挙げてきたと考えられます。安全衛生委員会を毎月行うことは、 当市では全くもって普通のことですよ。」

写真:深沢氏

「安全衛生委員会は毎月やるもの」と深沢氏

こうした自主性の高い安全衛生委員会が一堂に集まり、半年間の労働安全衛生活動や事故の発生状況などを発表し合うのが 「安全衛生委員会連絡協議会」です。毎年5月と11月の年2回、副市長を座長として、各安全衛生委員会から事業者側委員、 労働者側委員、事務局のメンバーが出席して行われます。協議会の実施により、自分たちの安全衛生活動の水準を確認したり、 他の安全衛生活動を参考にしたりできることから、横須賀市の安全衛生の維持・発展に大きな意義を果たしていると考えられます。

教育と啓発とこれからの課題

横須賀市人事課では、衛生管理者資格取得講習や資格試験に職員を派遣したり、安全衛生委員会委員など安全衛生に関わる職員を 対象にした講習会を開催したり、新任安全管理者へマニュアルを配付したりすることで、各安全衛生委員会区分ごとの活動を 保持し向上させるよう努めています。

また、全庁的な啓発活動として、7月の全国安全週間、10月の全国労働衛生週間に合わせて、それぞれ「安全点検」「衛生点検」を実施します。これは、横須賀市の全所属所でチェックリストに基づく自主点検を行い、 その結果を報告するものです。全庁的に実施されますが、その結果の活用は各安全衛生委員会に任されています。 全国安全週間・全国労働衛生週間の期間中は、安全衛生旗を掲揚。幟・ポスターも掲示され、雰囲気を盛り上げています。

さらに、職員参加型の啓発活動として、職員への「安全衛生標語募集」があります。昭和54年度から始まった取り組みで、 今でも清掃事業職員や消防局職員を中心に毎年350点ほどの応募があるそうです。入選・佳作それぞれ5点が選ばれ、 受賞者には表彰状が贈呈されます。入選作品は短冊で横須賀市の全機関に掲示されるそうです。

写真:標語

安全衛生標語の入選作。短冊で市の全機関に掲示されます

このように様々な活動を進めながらも、横須賀市では、近年の定数削減、業務内容の多様化等に伴い、 事故の発生件数がやや増加傾向にあるといいます。杉本係長は「公務災害防止に向け、職員の意識改革をはじめ更なる 安全衛生の充実を図っていかなければならないと思っています。」と横須賀市の安全衛生のこれからの課題について 実直に語ってくれました。

自主性を重んずる横須賀市の伝統的な安全衛生管理体制を生かしながら、 横須賀市全体の安全衛生の底上げを図っていく――横須賀市人事課の統括部署として次の一手が期待されます。

アドバイザーより一言

写真:アドバイザーの池田氏

市職員の衛生管理を担当する保健師が自ら作成した「市職員への健康管理に関する基本方針」に基づき、 健康管理活動をしっかり推進されています。このように管理方針を明確にすることにより、活動の進め方にブレがなくなります。

ただし、市職員の衛生管理に関する責任者である市のトップが方針を表明し、これを受けて各総括安全衛生管理者が自部門の 方針を示すようにすれば、組織として方向性がより明確になり統一性のとれた活動になると思われます。

また、衛生だけでなく、安全に関する方針も同様に(安全衛生方針として)整備されることをお勧めます。

2012年08月31日
中央労働災害防止協会 関東安全衛生サービスセンター
安全管理士  池田 尚之

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City profile

神奈川県横須賀市

横須賀市章
横須賀市位置図

  • 面積 100.70km2
  • 人口 415,229人
    (2012年4月1日現在)
  • 人口密度 4,120人 /km2

市の花 ハマユウ

イラスト:横須賀市浜木綿

市の木 オオシマザクラ

イラスト:横須賀市大島桜

横須賀市イメージキャラクター

イラスト:スカリン

スカリン

City office

横須賀市役所

写真:横須賀市役所

〒238-8550
神奈川県横須賀市
小川町11番地

職員数
3,199人
2012年4月1日現在
地方公共団体定員管理
調査(総務省)による
【内訳】
一般行政 1,886人
教育 456人
消防 450人
公営企業 407人

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