地方公務員災害補償基金 Fund For Local Government Enployees' Accident Compensation

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Report13 Yokkaichi City

清掃事業現場の公務災害防止のために 四日市市

地方公務員の中で、最も公務災害発生率が高い清掃事業職員。平成23年度の公務災害発生率は千人当たり35.35件で、 全地方公務員の9.21件と比較すると4倍近い値を示しています。

今回は、清掃事業など現業職場での公務災害を減らすべく安全衛生活動を進める四日市市の取り組みをレポートします。

危険箇所をマッピング

「一昨年度まで、当市の清掃事業での公務災害は減少傾向にありました。」と話すのは総務部人事課で安全衛生 を担当する児玉 一平氏。平成18年度に年19件あった清掃事業所の公務災害件数は、平成22年度には年5件まで縮減 されました。「残念ながら昨年度は年16件にぶり返し、安全衛生で結果を維持することは簡単ではないと痛感しています。 ただ公務災害の発生件数が増加し、未然防止のための活動が必要との共通認識が生まれており、今後、具体的な取り組みを 一つひとつ進めていければと思います。」と児玉氏は語ります。

グラフ:清掃公務災害発生件数

 

清掃事業の公務災害で頻繁に起こりがちなのは、ごみ収集中の災害です。車両や機械、ごみなど危険物との接触も多く、 公道での作業のため交通事故の危険性もあります。作業現場のごみ収集所の状況は、ごみ置き場の形状から、足元や頭上の 障害物、一方通行や歩道の有無、道幅や駐車可能場所まで、一つひとつ異なります。

写真:児玉氏

「公務災害件数が増えて残念です」と児玉氏

四日市市の清掃事業所では、こうした収集作業中の災害を減らすため、危険箇所の「見える化」を実施しています。
具体的には、危険と思われる事項、事故を把握したら、その内容をデータ登録し、ナンバリングします。その番号を、ごみ収集所とルートを記載した「収集作業マップ」に落としていきます。

写真:収集作業マップ

収集作業マップ

ここは側溝のふたが外れやすく足元が危ない、ここは交通量が多く危ない、ここは張り出した枝で頭が危ない――作業者は「収集作業マップ」でまず危険箇所を視覚的に把握し、 登録データ でその内容を詳しく理解します。可視化し、 みんなで情報を持ち寄り共有することにより、危険箇所への理解・意識は、上がっているようです。

恒例、副市長の職場巡視

7月、全国安全週間の頃。四日市市では、毎年、総括安全衛生管理者である副市長が職場巡視を行います。 公務災害の危険性が高いと考えられる現業職場から例年3~4か所を選び、産業医、衛生管理者などのスタッフと共に巡視します。  

今年度は、清掃事業所、清掃工場、保育園と給食調理場の4か所を巡視しました。限られた日程の中、現場の状況をできるだけ把握しようと真剣な視察が行われます。  

巡視後は、副市長から現場の所属長に「困っていることはないか」「優先度の高い課題は何か」などが投げかけられ、職場の安全衛生管理や体制に関する忌憚のない意見が交わされます。  

人事課課付主幹の柴田 浩氏はこう語ります。「副市長が毎年、現業職場を巡視していることが、安全衛生の向上、公務災害の防止にプラスに働いています。上層部から安全対策を推進せよという指示が明確に示されることで、現場の対策に弾みがつきます。」

写真:柴田課付主幹

「現業職場の公務災害を減らしたい」と柴田課付主幹

確かに、清掃事業所だけを見ても、様々な安全衛生活動の様子が伺えます。前述の「収集作業マップ」以外にも、作業者に向け危険予知訓練(KYT)研修や交通安全研修を毎年行い、安全文化を育んでいます。事業場における安全衛生のリーダーを育成するため、係長級の職員に「リスクアセスメント」や「KYT」の外部研修を受けさせています。平成23年3月には、作業員がより使いやすくするための安全作業・運転手順マニュアルの改定も行いました。

工夫する安全衛生活動

四日市市職員安全衛生管理規程で設置される「安全衛生委員会」には、業務に応じた6つの部会が置かれています。 安全衛生に関する審議や調整は、まず6つの部会で行われ、普段の安全衛生活動も、この区分により進められています。 例えば、公務災害が発生した場合、部会が事故の調査や分析、防止対策を行います。 教育施設部会で給食調理場での作業の効率化を図ったり、福祉施設部会で保育士のメンタルチェック を導入したりするなど、それぞれの業務に適した活動が熱心に行われています。

図:四日市市の安全衛生管理体制

 

安全衛生委員会では、そんな各部会からそれぞれの活動状況や災害発生状況等の報告を受けたり、各部会から提案さ れた議案を議論したりするなど、市全体の安全衛生活動を審議し調整する場となっています。

また、四日市市では10人の衛生管理者が、月に1度「衛生管理者打ち合わせ会」を開き、職員の安全や健康の向上に 資するための議論を重ねています。「安全衛生かわら版」は、この打ち合わせ会から発信される月刊の広報紙で、長期にわたって、四日市市の職員へ安全衛生を啓発しています。

写真:安全衛生かわら版

安全衛生かわら版

今年度、四日市市では(財)地方公務員安全衛生推進協会が行う「職場環境改善アドバイザー派遣事業」を活用し、実際の収集作業の様子を専門家に診断してもらいました。普段は見過ごされてしまうような危険に改めて気付いたり、安全衛生活動のマンネリ化から脱却するヒントをもらったり、多くの示唆を提示してもらったと現場からの声は好評です。短時間KYTや車両誘導研修を行ってみようという検討も始まったようです。

写真:収集作業

収集作業を専門家がチェック

「安全衛生の空気を醸成するには、職員一人ひとりがどうすべきか考え、自ら実践していくことが重要です。公務災害防止のための 様々な取り組みを行うことにより、職員がいきいきと働くことのできる快適な職場環境づくりに取り組んでいきたいですね。」 児玉氏は意欲的にこう語ってくれました。

 

アドバイザーより一言

写真:アドバイザーの川口氏

職員の意識を高めるには、外部の研修に出したり、今までとは違った安全衛生活動を行ったりするなど、いろんな働きかけを行うことが有効です。

公務災害発生時に、部会ごとに原因の調査分析や再発防止対策を行い、安全衛生委員会で共有化を図っているのは良い取り組みだと思います。災害分析では、直接の原因である不安全行動や不安全状態だけでなく、背後 にある根本原因を明らかにすることが重要です。人間的要因、設備的要因、作業的要因、管理的要因を念頭に置いて検討しましょう。

「安全衛生かわら版」は編集を担当する衛生管理者の方々の強い情熱が感じられます。季節や時事が考慮され、 啓蒙資料としては好事例です。

2012年10月30日
中央労働災害防止協会 中部安全衛生サービスセンター
  安全・衛生管理士 川口 泰史

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City profile

三重県四日市市

四日市市の市章
四日市市位置図

  • 面積 205.58km2
  • 人口 307,056人
    (2012年4月1日推計)
  • 人口密度 3,310人 /km2

市の木 クスノキ

写真:くすのき

市の花 サルビア

写真:サルビア

市の鳥 ユリカモメ

写真:ユリカモメ

四日市のゆるきゃら

イラスト:こにゅうどうくん

こにゅうどうくん

City office

四日市市役所

写真:四日市市役所

〒510-8601
三重県四日市市
諏訪町1番5号

職員数
2,637人
2012年4月1日現在
地方公共団体定員管理
調査(総務省)による
【内訳】
一般行政 1,135人

教育 261人

消防 320人

公営企業 921人

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