地方公務員災害補償基金 Fund For Local Government Enployees' Accident Compensation

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Report11 Yamagata City

安全衛生は市民サービスの根本に関わること 山形市

山形市では、近年、安全衛生の取り組みをより向上させようと、活動を活発化させています。 各安全衛生委員会の担当者や産業医、組合などの力を結集し、目覚ましい改善を遂げています。

今回は、そんな山形市の取り組みについてレポートします。

上層部から変える労働安全衛生

「職員の安全と健康の確保は、単に個人の問題ばかりでなく、市民サービス提供の根本に関わる市全体の問題である。 今まで低調であったこの問題について確実な改善を図っていく。」平成23年、副市長、総務部長をはじめ山形市の上層部は、 こうした方針を打ち出しました。

図:山形市の安全衛生管理体制

確かに、それまで山形市の安全衛生体制はお世辞にも活発とはいえない状況でした。当時7つあった安全衛生委員会のうち 6委員会は、年1~3回しか開催されていませんでした。職場巡視も形骸化し、職場から危険を取り除く意欲やアイディアは、 あまり見えてきませんでした。100パーセント受診が当然のはずなのに、健康診断を受けない職員が存在していました。再検査については、 報告率10パーセント以下とほとんど把握ができていませんでした。

改善の陣頭指揮に立つ職員課長の鞠子 克己氏は、こう話します。「職場の安全面、職員の健康面の両面で対策を強化する必要が ありました。まず、安全衛生統括部署として職員課が汗をかき、姿勢を示さなければいけません。そして職員が安全衛生について 考える機会や議論する機会を増やし、必要な部門に協力や連携を呼び掛けることを行いました。」

写真:鞠子課長

「上層部の本気の姿勢から変わってきました」と鞠子課長

改善の効果は徐々に現れてきます。安全衛生委員会の開催回数は増え、この分野への関心が高まり始めました。使用者側だけで 行っていた職場巡視を、組合と一緒に行うようにしたところ「気付き」と「改善」の機会が増えてきました。産業医の佐藤 信一郎 先生の助言を受けながら、職員の健康診断への啓発とフィードバックをしっかり行うようにしたところ、健診を受けない職員は一人 もいなくなり、再検査の報告も本庁舎の職員については約80パーセントに増えました。

今、山形市では、一度つかんだ安全衛生への手応えを、さらに確実なものにするよう、取り組みを進めています。

学校技能技師のワーキンググループ

山形市教育委員会の管轄(小中学校教員など県費支弁職員は管轄外)で起こる公務災害のうち毎年4割以上は 学校技能技師の被災によるものです。教育委員会に占める学校技能技師の比率が約35パーセントであることを踏まえれば、 他の職員に比べ公務災害発生率が高い職種です。

グラフ:公務災害発生件数

山形市教育委員会では、そんな学校技能技師の公務災害を減らすべく、平成17年1月、山形市教育委員会事務局 事業所安全衛生委員会に「学校部会」を設置しました。「学校部会」は、学校技能技師に特化して、危険防止や 公務災害防止など安全衛生の審議や活動を行うワーキンググループです。

メンバーは全部で11人、全員が学校技能技師です。市内52ある市立学校を11のブロックに分け、毎年各ブロック から1人ずつ参画します。

「学校部会」は年5回程度開催されます。活動内容は、メンバー全員で学校技能技師の安全に関する年間テーマを 決め、1年にわたりそのテーマに沿って、課題や解決策について真剣な議論を行っていきます。

「ワーキンググループの活動は熱心です。会議以外にも時間を割いて、メンバー数人で検証や巡視、調査を行ったり しています。情報交換の場ができたことで横のつながりが生まれ、それが安全衛生意識の向上につながっているのだと 思います。」学校部会事務局である教育委員会管理課の職員係長 草苅 早苗氏はこう語ります。

写真:草苅係長

「皆さん、安全を守る意識がとても高いです」と草苅係長

管理課では、安全衛生についての学校技能技師からの相談にのったり、学校技能技師向け広報紙「学校部会だより」 を発行したりするなど、「学校部会」の活動を力強くサポートしています。

今年度より「学校部会」が職場巡視を引き受けることで、今までできなかった52ある市立学校全ての職場巡視が実現 できたといいます。「学校部会」は、山形市教育委員会にとって無くてはならないような組織に発展してきているようです。

導入、ローリングタワー

平成22年秋、学校技能技師が、脚立から落ちて全治3ヶ月の大けがを負う重大事故が発生しました。体育館の高い位置 にある窓を清掃している際の出来事でした。そして今後も、窓の清掃作業のみならず、体育館の蛍光管の交換作業や壁の 修繕作業など、学校技能技師は少なくない頻度で高所作業を行う必要があることが見込まれました。

イラスト:はしごからの墜落 イラスト:三脚からの墜落

高所作業中の事故は危険。重大災害に結び付きやすい

より安全な高所作業を実施するためには――。「学校部会」をはじめ、山形市教育委員会では、緊急にこの課題について の検討を行いました。

最終的に、山形市教育委員会は「墜落・転落による危険がある高所作業は脚立を使わず作業床(さぎょうゆか)を設けて 作業する」という結論を出しました。足場を組み立て、作業床を使って作業をし、作業後足場を解体する。確かに手間はか かりますが、人命優先の理念からこう判断されました。

すぐさま、軽量で持ち運びが容易な「ローリングタワー(移動式足場)」4台を購入し、4つの市立学校に配備しました。 そして対象者に向け「ローリングタワー研修会」を実施し、使用方法や安全対策について教育を行いました。現在「学校部 会」では、もっと「ローリングタワー」を気軽に活用してもらおうと、わかりやすい「ローリングタワー組み立てマニュア ル」の作成に取り掛かっているそうです。

イラスト:ローリングタワー

ローリングタワー(移動式足場)

「学校技能技師の高所作業は今までも危険でしたが、見過ごされてきたのだと思います。今回、ローリングタワー導入に よる対策を行いましたが、これで危険が全て無くなった訳ではありません。引き続き、安全への警戒を怠らないようにして いきます。」教育委員会管理課長の庄司 新一氏はこう語ってくれました。

写真:庄司課長

「設備だけではなく、教育も充実させたい」と庄司課長

※ 本文中のイラストは(財)地方公務員安全衛生推進協会発行 「墜落・転落・転倒 災害ゼロに向けて」より抜粋したものです

アドバイザーより一言

写真:アドバイザーの吉田氏

山形市の上層部がリーダーシップを発揮し、事業者として職員の安全と健康を維持する取り組みを 本格化させたことに敬意を表します。せっかく生まれたこの気運を、大事に継続的に育てていくようお願いします。

また、山形市教育委員会では、災害が起こりやすいと思われる学校技能技師の職場を一律に扱うのではなく 「学校部会」という専門のワーキンググループを作って、 公務災害の低減を図ろうとしており、そのアイディアと配慮は大変良好だと思います。運営上、上手くメンバーのやる気を引き出し、 安全優先の気運を醸成していることも素晴らしいです。他の自治体でも、参考にできる取り組み事例だと思います。

2012年10月17日
中央労働災害防止協会 東北安全衛生サービスセンター
安全管理士  吉田 英司

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City profile

山形県山形市

山形市章
山形市位置図

  • 面積 381.58km2
  • 人口 253,884人
    (2012年4月1日現在)
  • 人口密度 665人 /km2

市の木 ナナカマド

写真:山形市七竈

市の花 ベニバナ

写真:山形市紅花

市のマスコット

イラスト:山形市キャラのはながたベニちゃん

はながたベニちゃん

City office

山形市役所

写真:山形市役所

〒990-8540
山形県山形市
旅篭町二丁目3番25号

職員数
2,328人
2012年4月1日現在
地方公共団体定員管理
調査(総務省)による
【内訳】
一般行政 1,012人
教育 278人
消防 231人
公営企業 807人

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