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Report6 Otsu City

一歩、また一歩、安全衛生の着実な前進を 大津市

公務災害防止活動が、なかなか進まない。盛り上がらない――地方公共団体の安全衛生担当者の中には、 そんな悩みを抱えている方も、意外に多いのではないでしょうか。

大津市も、そんな悩みを抱える団体の一つでしたが、ここ数年、安全衛生の課題に真剣に向き合い、 一歩、また一歩と、その活動を活発化させています。

今回は、大津市の「まず、やってみよう。」そんな取り組みを、レポートします。

コンプライアンスの観点から

平成20年度より、大津市では、コンプライアンスの観点を考慮して、 それまで隔月で開催していた「大津市安全衛生委員会」の毎月開催に踏み切ることとしました。

実際やってみるまで、安全衛生委員会を毎月行う必要があるのかという声も中にはありました。 しかし、5年目を迎えた今年、毎月開催はすっかり定着し、その効果が現れてきています。 「開催頻度が増えたことで、労働安全衛生への意見やアイディアが出易くなり、徐々にですが、 活動が活発化する兆しが見えてきました。」と総務部職員課主幹の野村氏は話します。

写真:野村主幹

「ここ数年は、確実に改善してきたと思う」と野村主幹

実際にこの5年に満たない間に、大津市では安全衛生に関する新たな活動がいくつも始まりました。

例えば、安全衛生教育の充実です。4年前から安全衛生推進者を対象とした研修「安全衛生事業研修会」、 特定の部署を対象とした研修「公務災害防止研修」を、年1回ずつ実施するようになりました。 今年度の公務災害防止研修は、近年、災害が多く起こっている児童クラブ職員を対象に行われました。

また、3年前には全国安全週間、全国労働衛生週間における職員への啓発活動方法の改革を行いました。 単に期間を告知し周知するだけではなく、具体的な安全衛生の項目を示して、 自分の周りを確認するよう全職員に投げかけるようにしました。参加型の注意喚起により、関心は以前より高くなったといいます。

昨年度からは、職場巡視で見つけた安全衛生の「好事例」の紹介を庁内LANで始めました。 これまでに「園児でも直感的に避難できる非常口までの誘導サイン」「歩行者激突回避のための誘導サイン」 「画鋲の針が上に向かないだるまピンの使用」などが紹介されました。 他の職場の取り組みを見ることで、刺激を受けたり、好事例を実際に自分の職場に導入したりすることができるようになりました。

大きく舵を切る安全衛生管理体制

「大津市安全衛生委員会」は、大津市の労働安全衛生の調査審議機関として、昭和50年から、本庁・出先の区別なく、 部局の区別なく、全大津市職員を対象に活動をしてきました。ただし、「企業局」と「消防」の2部門は、 それぞれ独自の「安全衛生委員会」を有しており、その部門の職員は大小2つの委員会に入っていました。

かつて3つの委員会はそれぞれ自主活動を行い、情報の共有や、活動の連動など、横の繋がりはあまりありませんでした。 委員会が毎月開催になってほどなく「大津市安全衛生委員会が包括的組織であることから、企業局と消防の2つの委員会活動に ついての報告が聴きたい」という意見が出され、平成21年10月よりこの2つの委員会の活動が報告されるようになり、 他委員会の活動内容が相互に把握できるようになりました。

そして、各部門でよりきめ細かい安全衛生活動が行えるよう、平成23年度には「教育委員会安全衛生委員会」が、 平成24年8月には「病院安全衛生委員会」が設置されました。現在、新たな2つの安全衛生委員会の取り組みに対し 、公務災害減少への大きな期待が寄せられています。

 

図:大津市の安全衛生管理体制

 

さらに、現在大津市では「市長部局等安全衛生委員会(仮称)」の平成25年度設置に向けて検討を進めています。 「今後は、安全衛生活動を推進していく調査審議の主体を、部門別の各安全衛生委員会に移行し、現在の大津市安全衛生委員会を 情報調整機関として変貌させていく予定です。この新たな組織構成づくりに向け、役割の明確化を進めていきたいと考えています。」 と話す野村主幹。大津市の労働安全衛生管理体制は、安全衛生の向上に向け、現在、大きく舵を切ろうとしています。

外部専門家を活用した職場巡視

現在、大津市では、6月~翌年2月までの毎月、合計9回にわたる職場巡視を行っています。 巡視メンバーは、産業医の西山 順三氏を筆頭に、安全管理者、衛生管理者がそれぞれ1~2名、事務局職員2名で編成されます。

巡視場所は、職場のリスクの高さや最後に巡視を行ってからの期間などを考慮し、年度当初に選定されます。 巡視は 44項目以上の点検表 に基づいてなされ、ベテラン産業医の的確な指摘が職場の安全衛生の形成に役立つと、巡視を受けた機関から 大変好評です。

本年9月の職場巡視は「職場環境改善アドバイザー」の平田 八郎氏(中央労働災害防止協会・安全管理士)と一緒に巡回しました。 「職場環境改善アドバイザー」は職場環境の診断・助言を行う安全衛生管理の専門家。各自治体の申請に基づき(財)地方公務員安全 衛生推進協会から派遣されます。この事業は平成8年度から実施され、派遣料は平成24年度から無料となっています (ただし、年間の派遣数には限りがあり、受けられない場合もあります)。

大津市職員課の大西氏は、職場環境改善アドバイザーの申請理由について「専門家がどんなところを見るのか前々から 興味がありました。それが、今年から無料と聞きまして。」と、笑顔で話します。この積極的で柔軟な「やってみよう精神」こそ、 現在進歩を続ける大津市安全衛生の強みの一つなのかもしれません。

写真:大西氏

定例の巡視に職場環境改善アドバイザーを取り入れた大西氏

この日の職場巡視は、時に西山産業医と平田アドバイザーの間で意見交換を挟みながら、約1時間20分にわたって行われました。 最終的に、平田アドバイザーから好事例14を含む43の指摘がなされ、改善のアドバイスがありました。西山産業医は、この講評を受け 「普段、あまり注意を向けてない箇所の指摘もあって、大変参考になりました。自分たちなりに、この指摘事項を じっくり吟味し、今後に生かしたい。」と語ってくれました。

写真:職場巡視その1 写真:職場巡視その2
写真:職場巡視その3 写真:職場巡視その4

(左上)意見交換をする西山産業医[左]とアドバイザー[右]  (右上)破損したブラインドを指摘
(左下)職場の潤い一輪挿しも置き場によって凶器に  (右下)講評の様子

このように外部団体が行うサービスを上手く利用することにより、公務災害防止、安全衛生について 新しい視点・考え方が獲得できます。活動のマンネリ化防止にも役立つことから、各自治体の安全衛生担当者の皆さんも、 安全衛生に関する様々な情報を収集し、活用の検討を考えてみてはいかかでしょうか。

 

アドバイザーより一言

写真:アドバイザーの平田氏

 現在の安全衛生委員会は全職員を包括した体制ですが、細やかで良い活動を行っています。 部門別に分けて、活動を強化する現在の改革の流れは、理にかなった正しい方向だと思います。

また、安全衛生を有効に進める最も基本的なポイントは「自分たちの職場にどんな危険が存在しているか」 という問題意識を持つことです。そのため、安全衛生委員会で災害再発防止の勉強会を行うとか、 職場巡視結果に写真をはりつけ視覚化するなど、問題意識を高める工夫は様々あります。 是非、創意工夫をして、いろんなことにチャレンジしてください。

2012年08月22日
央労働災害防止協会 近畿安全衛生サービスセンター
安全管理士  平田 八郎

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City profile

滋賀県大津市

大津市章
大津市位置図

  • 面積 464.10km2
  • 人口 339,381人
    (2012年4月1日現在)
  • 人口密度 731人 /km2

市の花 叡山すみれ

写真:すみれ

市の木 山桜

写真:山桜

市の鳥 ゆりかもめ

写真:ゆりかもめ

大津市観光キャラクター

イラスト:大津市観光キャラクターの大津光ルくん

おおつ光(ひか)ルくん

 

City office

大津市役所

写真:大津市役所

〒520-8575
滋賀県大津市
御陵町3番1号

職員数
3,008人
2012年4月1日現在
地方公共団体定員管理
調査(総務省)による
【内訳】
一般行政 1,344人
教育 346人
消防 310人
公営企業 1,008人

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