地方公務員災害補償基金 Fund For Local Government Enployees' Accident Compensation

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Report14 Matsumoto City

健康寿命延伸都市の労働安全衛生 松本市

松本市は「健康寿命延伸都市・松本」を標榜し、人生の中で何物にも代え難い健康で自立できる期間 「健康寿命」の延伸を目指しています。そして健康・福祉分野はもちろん、経済、産業、環境、教育、 都市基盤などあらゆる分野で、この基本理念に沿って施策を展開しています。

今回は、健康寿命の長い都市づくりにまい進する松本市が、職員自らの安全や健康について、どう取り組ん でいるのかをレポートします。

トップダウンで動く

 「市長は医師出身。健康寿命という概念を市政にいち早く取り入れるほどの人ですから、当然ながら、 職員の健康への関心は極めて高いです。」総務部職員課長の小松 茂清氏は、こう話します。

写真:小松課長

「健康寿命都市にふさわしい労働安全衛生を」と小松課長

松本市ではここ数年、残念ながらメンタルヘルスによる長期病休者の発生率が全国平均よりわずかに 上回る時期が続いています。最近は、人数的にあと1~3人長期病休者が発生しなければ、全国平均以下に なるという数値ですが、健康寿命延伸都市としては、この状態をそのままにしておく訳にはいきません。

グラフ:松本市の長期病休者と全国の比較

 

平成23年4月、市長から全管理職に向け、職員のメンタルヘルス問題の解決に向け全力で努力するよう指示命令がありました。安全衛生を所管する職員課には、これまでのメンタルヘルス対策を抜本的に見直し、改めて有効な対策・体制を構築していく任務が与えられました。

これを受け平成23年12月に策定されたのが「松本市職員心の健康づくり計画」です。これまでの松本市のメンタルヘルス対策を一変するような充実した内容で、メンタルヘルス対策への予算も大幅に拡充されました。市長からは、これなら効果が見込めるのではないかと大きな期待をかけてもらいました

写真:心の健康づくり計画の冊子

松本市職員心の健康づくり計画

「計画は各課に1冊ずつ、そして管理職全員に1冊ずつ配付されています。市長の関心事項でもありますから、 管理職中心にメンタルヘルス対策の拠り所として、よく読んでもらっているようです。」と小松課長は語ってくれました。

10の階層別研修

「松本市職員心の健康づくり計画」の大きな特徴の一つに、充実した研修制度が挙げられます。「メンタ ルヘルス対策には、まずは職員一人ひとりの知識と理解の向上が不可欠と考え、思い切って十分な量の研修 を提供することにしました。」こう語るのは職員課課長補佐の古畑 崇子氏。保健師の専門知識を生かしながら 、この計画を中心となってまとめあげた実務面でのリーダーです。  

写真:古畑課長補佐

「まずは健康づくり計画の定着を」と古畑課長補佐

松本市の新たな研修制度には、新規採用にはじまり、2年目、3年目、5年目、8年目、主任、主査、係長、課 長補佐、課長の各昇格時といった「10の階層別研修」が用意されました。階層別以外のメンタルヘルス研修も 充実させ、これまで職員の13パーセントだった年間のメンタルヘルス研修受講率を、一気に 50パーセントまで伸ばすことを目標に掲げています。

また、計画策定を機に行う新たな取り組みとして、健診で心の問診を行ったり、庁内情報システムを活用してメンタルヘルスに関する啓発活動をしています。さらに外部専門家によるメンタルヘルスの相談体制を年間36回から72回に倍増させ、精神保健医の相談も受けられるようにしました。保健師も2名体制に増員し、内部で気軽に相談できる体制も整えました。

職場復職支援についても、本人の病状に応じた段階ごとの基本的方策を定め、本人、家族、所属長、主治医、職員課、産業保健スタッフが連携を取りながら、慎重に適切に進めていくことを明文化しました。

「今回の計画策定は、終わりではなく始まりです。今後、リワーク研修など様々なメンタルヘルスに関する検討を進め、公務で病む人を一人でも減らすよう努力していきたいです。」古畑 課長補佐は、このように意欲的に語ってくれました。

安全衛生委員会同士の連携

松本市には5つの安全衛生委員会があり、そのうちの一つ「松本市職員安全衛生委員会」は、全職員の70パーセント以上を管轄する委員会です。同委員会には他の4委員会の事務局担当者も列席し、当日の会議内容を各委員会に持ち帰って、各々の活動につなげています。

図:松本市の安全衛生管理体制

 

この仕組みは、半ば自然発生的に出来上がりました。平成23年度、職員課に赴任した古畑課長補佐は、他の4委員会の活動について、公務災害の申請以外、何も分からないことに気が付きました。委員会が何回開かれているのか、どんな安全衛生活動をしているのか――。「情報交換してみないかと提案したところ、どの担当者も他の委員会の活動を知りたいと思っていたようで、話はすぐにまとまりました。」と当時を振り返ります。 こういうきっかけで始まった「事務局担当者会議」ですが、お互いの様子が共有できたり、刺激し合えたりと委員会同士が連携することの意義を実感することができ、時々開催されるようになりました。そして「松本市職員安全衛生委員会」に他委員会の担当者が参加することになったきっかけとなっています。

写真:朝倉係長

「公務災害が減るよう連携をさらに深めていきたい」と朝倉係長

現在、職員課の係長として松本市の安全衛生の向上に努める朝倉 一樹氏は「松本市の安全衛生で、今最も課題となっている のが学校給食調理場の公務災害の多さです。」と話します。職員数は全体の約3パーセントなのに、災害件数は全体の30パーセントを超えています。 給食現場では、ヒヤリハット報告活動を行ったり、危険箇所には分かりやすく表示したり、 作業マニュアルを掲示したりするなど、努力は重ねていますが、なかなか結果が現れません。今年度職員課では、 外部専門家を派遣するなど、公務災害防止に向けた支援を行いました。

写真:ヒヤリハット報告書 写真:注意喚起

写真:壁に貼ってあるマニュアル 写真:職場診断の様子

調理場には安全衛生活動の熱心さが伺える、結果につなげたい(左上)ヒヤリハット報告 (右上)注意喚起が随所に
(左下)見やすいマニュアル掲示  (右下)外部専門家による職場診断の様子

「学校給食調理の現場では今後、結果を残せるよう安全衛生管理者を中心に体制を充実していくようです。慣れやマンネリ感から抜け出し、公務災害を減らす新たな取り組みに期待しています。我々としても松本市全体の公務災害が減るよう、連携を深めできるだけ支援ををしていこうと思っています。」こう朝倉係長は語ってくれました。

 

アドバイザーより一言

写真:アドバイザーの荻原氏

松本市のメンタルヘルス対策は、計画を策定し、しっかりとそれを職員に周知し、思い切った教育計画を実行に移すなど、トップ・上層部・担当者の本気が見える非常に素晴らしい取り組みです。

是非、今後は公務災害防止対策についても、松本市全体の問題として同様に取り組んでいただくことを提案いたします。公務災害発生の背景には、管理的な要素、設備的な要素、作業環境等があり、それぞれの部分と対峙しない限り、公務災害は繰り返されます。

不注意は原因ではなく結果です。管理者側が、不注意や設備の不具合は起きるものという前提に立って対策を練り、問題を解決に導いていくことが大切です。期待をしています。

2012年11月5日
中央労働災害防止協会 関東安全衛生サービスセンター
 安全管理士  荻原 正宏

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City profile

長野県松本市

松本市章
松本市位置図

  • 面積 978.77km2
  • 人口 243,431人
    (2012年2月1日推計)
  • 人口密度 249人 /km2

市の花 レンゲツツジ

写真:蓮華躑躅

市の木 アカマツ

写真:赤松

市のマスコット

イラスト:アプルちゃん

アルプちゃん

City office

松本市役所

写真:松本市役所

〒390-8620
長野県松本市
丸の内3番7号

職員数
1,999人
2012年4月1日現在
地方公共団体定員管理
調査(総務省)による
【内訳】
一般行政 1,263人

教育 247人

公営企業 489人

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