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Report9 Kawagoe City

まだ見ぬ建物、機械の安全衛生措置を 川越市

安全衛生というと、つい今そこにある職場環境に目が向きがちですが、まだ見ぬ建設前の建物、導入前の機械についても 考慮されるべきです。建設、導入した後になって「こうしておけばよかった、ああしておけばよかった。」といっても、後悔 先に立たず。そして多くの場合、事前の措置の方が、事後の措置よりコスト面で効率的です。  

もちろん、多くの自治体は建設・導入時に安全衛生について考慮していると思いますが、川越市では「制度」として 建設・導入前にしっかり安全衛生面をチェックする仕組みを確立しています。  

今回は、川越市の「安全衛生措置事前評価制度」をはじめ、安全衛生に熱心に取り組む姿をレポートします。

 

安全衛生の「転ばぬ先の杖」

「川越市立菅間学校給食センター」は、市内20小学校に1日約1万2,000食を提供する川越市で最も新しくて大きな学校給食センターです。  

同センターは、平成16年度に建設され、平成17年9月から稼働しました。最新の厨房機器・洗浄システムはもちろん、太陽光発電システム、センサー付照明、 雨水再利用設備など省エネ機能も充実し、当時としては最先端の施設でした。そして当然、作業動線・安全面についても 十分な配慮がなされていると誰もが思っていました。

写真:菅間学校給食センター

菅間学校給食センター

 

しかし、実際に使用を始めると、洗浄機における作業場所が狭すぎ、作業の効率性や安全性に問題があることが分かりました。結局、かなりの経費をかけ追加工事を行うこととなりました。

このことをきっかけに「施設・設備を新たに建設する際、また機械や器具、原材料を新たに導入する際に、事前に安全 衛生措置が万全かどうかをチェックする仕組みを構築したらどうか」という提案が、給食センター安全衛生委員会から、 川越市の総括的機関である職員安全衛生委員会に提出されました。協議の結果、市全体の取り組みとしてこうした仕組みの構築を進めていくことが決定されました。

先進事例はありました。大阪府豊中市や東京都八王子市が時代を先取りするような形で導入していた「安全衛生措置事前評価制度」 です。職員安全衛生委員会のメンバーは導入に向け八王子市に視察に行くなど調査と検討を重ね、平成21年11月に川越市流の 「安全衛生措置事前評価制度」 を確立しました。対象となる施設・設備・機械・器具・原料等に関する過去の災害事例や危険源を所属が想定し、その対策案について安全衛生委員会等公式機関で協議・決定する仕組みです。

職員課副課長の長田 みどり氏は制度について、こう語ってくれました。「通常の安全衛生活動は、何か災害が発生した場合にそのリスクを除去していく、というものですが、この制度は、災害が発生しないように、事前にリスクを除去するという、一歩進んだ制度です。効率的な安全衛生措置を実現し、よりよい職場環境を形成するため、この制度をしっかりと根付かせていきたいですね。」

写真:安全衛生担当職員の皆さま

職員課安全衛生担当職員の皆さん
左から万木 久美氏、福島 秀樹氏、長田副課長、佐藤 八重子氏

制度開始から3年、これまでに3案件で制度が活用されました。現在建設中の大東市民センターはその一つで、窓口のカウンターの高さや吹き抜けの安全性向上など様々な指摘が、実際の設計・施行に反映されています。「安全衛生措 置事前評価制度」は、川越市の「転ばぬ先の杖」として確実に活用されています。

パース図:大東市民センター

建設中の大東市民センター

 

労働安全衛生予算の優先度

「川越市では、安全衛生に係る予算は、実質上限がありません。」こんな力強い発言をしてくれたのは、川越市で参事 兼職員課長を務める矢部 竹雄氏です。現実には予算上のリミットは当然あるでしょうが、川越市のマネジメントにおいていかに 「労働安全衛生」の優先度が高く見られているかが伺えるコメントに驚かされます。

写真:矢部参事

矢部参事。堂々として、迷いのない印象です

川越市の予算要求は、所属ごとに行われ、安全衛生に関わる要求もそこに含まれています。職員安全衛生委員会では、各所属 から要求される予算の中から安全衛生予算のみをピックアップし一覧にまとめ、その妥当性について審議を行います。この一覧 表と審議結果は財政課に提示され、予算措置がなされるよう交渉が行われるということです。

職員安全衛生委員会での審議が、客観性を持ち、合理的な考えの下、熱心に行われることから、その審議結果は財政課の理解 も得られやすいものとなっています。このようなことから、職員安全衛生委員会のフィルターを通した要求予算については、ほ ぼ認めてもらえ「実質上限がない」状況となるようです。

 

様々な事業場の安全衛生確保へ

川越市は、清掃事業や給食調理等を直営により維持しているため、他市と比較して現業職員が多い自治体です。一般的に現業 職員、特に清掃事業職員は公務災害の発生率が高いのですが、労働安全衛生に市を挙げて取り組む川越市では少し様相が違って います。

平成23年度の川越市の10事業場安全委員会の区分ごとの公務災害(公務員対象)・労働災害(臨時職員対象)の件数は以下の とおりです。

図:川越市安全衛生管理体制と平成23年度公務災害・労働災害発生件数

清掃事業、水道事業、建設事業等の職場では、公務災害・労働災害が1件も発生していません。また、保育や教育、調理に関わる 職員の被災が目立ちますが、その区分を除くと全般的に災害はあまり多い方ではありません。

川越市では、10事業場安全衛生委員会をメインに、それぞれが事業の特性に合わせ、安全衛生活動を自主的に運営しています。 安全衛生基本方針、年間安全衛生目標、スローガン、事業計画を立てること、そして毎月委員会を開催することは、当然の 共通事項として全ての委員会が確実に実行しています。

この委員会活動こそが、公務災害、労働災害の防止に役立っています。職員課では、委員会活動をサポートするために、 各事業場安全衛生委員会の事務局担当者を対象に、委員会の進め方、公務災害の原因究明と再発防止策の講じ方など 委員会事務局運営に当たってのきめ細かな研修を実施しています。また、広報紙「安全衛生通信」を通じて、時事に合った安全衛生の 取り組み等を全職員向けに周知し、市全体の安全衛生意識の高揚を図っています。

「本市の安全衛生活動は、歴史的には職員団体推薦委員の高い意識があったこと、また、市としても、職員課に安全衛生担当 を設置、4名の常勤職員のうち、保健師職を2名配置し、相談体制を強化するなど、他市と比較してもひけをとらないものと自負 しています。今後は、公務災害の発生防止だけでなく、職場のコミュニケーションを活発化するなど、さらに一歩進んだ安全衛生 活動を推進していきたいと思います。」長田副課長は、熱く話してくれました。

アドバイザーより一言

写真:アドバイザーの小泉氏

「安全衛生措置事前評価実施要領」は、新規建設・導入の施設や設備・機械等について労働安全衛生法第28条の2による 努力義務「危険性又は有害性の調査」いわゆるリスクアセスメントの実施を制度化したものとして、大変評価できるものです。

欲を言えば、既存の施設や設備もリスクアセスメントの対象とし、計画的に実施していくと、更なる安全衛生水準の向上が 図られると思われます。是非、検討をしてみてください。

また、市全体の制度として公務災害・労働災害の原因と対策について審議・報告する流れが確立していたり、各事業場の委 員会活動が活発に運営されていたりと、全般にわたって大変優良な取り組みがなされていると思います。

2012年10月12日
中央労働災害防止協会 関東安全衛生サービスセンター
安全・衛生管理士  小泉 潤一

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City profile

埼玉県川越市

川越市章
川越市位置図

  • 面積 109.16km2
  • 人口 345,752人
    (2012年4月1日現在)
  • 人口密度  3,170人 /km2

市の木 かし

写真:かしの木

市の花 山吹(やまぶき)

写真:やまぶき

市の鳥 雁(かり)

写真:雁

市のマスコット

イラスト:川越市のキャラクターときも

ときも

 

City office

川越市役所

写真:川越市役所

〒350-8601
埼玉県川越市
元町1丁目3番地1

職員数 2,228人
2012年4月1日現在
地方公共団体定員管理
調査(総務省)による
【内訳】
一般行政 1,538人
教育 468人
公営企業 222人

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