地方公務員災害補償基金 Fund For Local Government Enployees' Accident Compensation

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Report1 Kasugai City

政令指定都市・中核市・特例市の中で最も公務災害の少ない市 春日井市

春日井市は、同市の魅力の一つに「安全・安心」を掲げています。約20年前「自分たちのまちは自分たちで守る」と地域ぐるみの 防犯・防災活動を全国に先駆け積極的に展開し、この分野で初の内閣総理大臣表彰を受けました。

こうした地域の文化・気質の影響もあるのでしょうか。春日井市は、市役所職員の労働安全についても全国屈指の市であります。 実は、全国に101市ある政令指定都市・中核市・特例市の中で、同市は職員一人当たりの公務災害給付費の最も少ない市となって います(平成22年度統計)。

今回のレポートでは、どうして春日井市の公務災害が少ないのか、その理由や秘訣を探っていこうと思います。

「現実的」な労働安全衛生管理体制

春日井市には、5つの事業場安全衛生委員会(以下「事業場委員会」という。)がありますが、市の組織220課所中、 この事業場委員会傘下に入る課所は108課所に過ぎません。職員数(小中学校の県職員含む。)で言うと5,351人中2,423人、 約45パーセントとなります。残り112課所2,928人の出先機関や学校は、事業場委員会からは独立して、 各々で自立した労働安全衛生活動を行っています。

図:春日井市の安全衛生管理体制

半分以上の職員が、事業場委員会の統制下に無い――。春日井市が、思い切って、この体制にしたのは7年前、平成17年の安全衛生管理規程全部改正に遡ります。それまでは、全職場が事業場委員会の統制下に置かれていました。 改革した理由は、実際にマネジメントが難しい「非現実的」な仕組みから、事業場委員会として手の届く範囲をしっかり マネジメントできる「現実的」な仕組みに転換するためでした。

このことは「労働安全衛生法」で設置が義務付けられているものと、義務付けられていないものを区分し、 法の規定に素直に従ったとも解すこともでき、法の原点に立ち戻る試みだとも言えるでしょう。

5つの事業場委員会は、その「現実的」な守備範囲の中で、効果的な労働安全衛生活動を思案し、実行していきます。 本庁事業場でのきめ細かな職場巡視。見えにくい危険を解消するため導入したクリーンセンター事業場のリスクアセスメント。 清掃事業所事業場では作業効率より安全優先の観点でごみ収集車ステップ乗車を全面禁止する――等々。

人事課長の前川 広氏は「規程改正前から、公務災害は多くありませんでしたが、それは結果に過ぎなかった。 今は、ある程度ですが、災害を未然に防いでいる実感があります。」と語ります。労働安全衛生活動の手応えは、 それに関わる職員に充実感とやる気を与え、安全衛生活動を推進する原動力になっているのではないかと思われます。

写真:前川人事課長

「それにしても全国一とは意外でした」と前川人事課長

毎月恒例行事の職場巡視

「安全衛生委員会です。」「ご苦労様です。」春日井市の本庁事業場安全衛生委員会の職場巡視は、恒例行事といった様相です。 視察をする側も、受ける側も、肩に余計な力が入ることなく、ごく自然なコミュニケーションで終始和やかな雰囲気で進んでいきます。 とはいえ、巡視メンバーの職場環境を見る目は常に厳しく、吟味するようにゆっくりと時間をかけて見回っていきます。

写真:巡視の様子 写真:巡視で念入りにチェックしている様子

(左)「さあ行くぞ」職場巡視開始! 中央は産業医の伊藤和幸先生    (右)この日の巡視は10課室。念入りにチェックします

春日井市では、規程を改正した平成17年から、現在行っているような本格的な徹底した職場巡視に取り組み始めました。 今月は本庁舎の5・6階、来月は南棟・北棟の2階というふうに、毎月、庁舎の階(フロア)を指定し、1年をかけて全庁舎を見回ります。

事前に職場巡視のチェックリストを対象課に配付し、まずは対象課自ら安全な職場形成を行うよう促します。委員会は、 そのチェックリストを基に細かく職場を点検していき、その間、産業医が職場環境と職員の健康状況について所属課長から 聞き取り調査を行います。

写真:巡視のときの聞き取りの様子 写真:本庁事業場安全衛生委員会の様子

(左)産業医と保健師の所属課長への聞き取り調査     (右)職場巡視の日に開催「本庁事業場安全衛生委員会」

職場巡視の結果、委員会で職場の不安全が確認された場合には、抜本的な対策を施します。前川人事課長は 「コード類の床への埋め込みなど、出費のかさむものもありますが、安全衛生委員会の決定事項であれば、 可能な限り早く対応しています。」と語ります。職場巡視をやりっぱなしにしないことが、多くの職員から協力を 得られる大きな要因となっています。

また、前月の職場巡視結果と今月の職場巡視予定については、イントラネット上の月刊情報紙「安全衛生だより」 に必ず掲載し、巡視対象の職場のみならず、全職員に情報提供しています。

写真:安全衛生だより 写真:赤い腕章

((左)安全衛生だよりで「職場巡視」情報     (右)「職場巡視」のアイテム、腕章。目立ちます

7年にわたりこのような職場巡視を真剣かつ有効的に行っていることは、春日井市の公務災害の少なさの一つの要因に なっていると思われます。職場巡視による災害予防の直接の効果はもちろん、職場巡視を恒例化することで職員の安全衛生意識を高め、 安全衛生文化の礎を築いていると考えられます。

情報共有の場 中央安全衛生委員会

春日井市では、その他の事業場委員会の活動も活発です。

市民病院事業場安全衛生委員会では、病院の安全を守る専担組織を設立し、本庁同様チェックリストを用いた職場巡視を行っています。 針刺し事故防止のため、注射器を安全なものへ全て切り替え、地方公務員災害補償基金が制作した針刺し事故対策DVD「IFの分岐点~針刺し 切創を防ぐ~」を院内LANでいつでも閲覧できる環境を整えました。 また、事故及びヒヤリハット報告をシステム化し、病院全体で原因追究に取り組んでいます。 管理課長を務める大塚 淳弘氏は「危険因子については、費用がかかっても少なくする方針だ。最近、点検の結果、地震対策費で 約1千万円かかることがわかったが、安全には代えられないという院長の英断もあり今年度中に工事を行うことにした。」と熱く語ります。

クリーンセンター事業場安全衛生委員会では、前述のリスクアセスメントのほか、ヒヤリハット報告活動、5S運動など様々な 活動を行っています。最近は、熱中症対策として、飴、首を冷やすタオルを作業員に配付するようになりました。 同センター所長の鵜飼 徳康氏は、こう語ります。「公務災害が命と直接関わってしまう職場。安全衛生活動には真剣に 取り組まざるを得ない。」

写真:大塚課長 写真:鵜飼所長

(左)大塚春日井市民病院事務局管理課長     (右)鵜飼クリーンセンター所長

清掃事業所事業場安全衛生委員会では、前述のごみ収集車ステップ乗車禁止のほか、交通安全・応急処置・職場体操など様々な テーマの安全教育・研修に熱心に取り組んでいます。消防事業場安全衛生委員会では、惨事ストレス対策や運転技能測定などを 実施し、安全衛生活動を活発化させています。

このように春日井市では、5事業場委員会全てが、それぞれ意欲的に労働安全衛生活動に取り組んでいます。 そして、この5事業場委員会が一堂に会して情報交換を行うのが中央安全衛生委員会です。通常年2回程度開催され、 それぞれの活動報告や共通案件の審議を行っています。鵜飼クリーンセンター所長は「中央安全衛生委員会があるおかげで、 横の繋がりが出来た。他の事業場委員会の活動を参考にすることもある。」とその効果を語ってくれました。

5つの事業場委員会の活動が、事業場委員会に入らない職場に与える影響も決して小さくないのでしょう。 公務災害の少なさがそれを物語っています。それでも春日井市は、将来的に小さな職場との連携も充実していきたいという 意向を持っています。同市の職場安全への追求は続きます。

アドバイザーより一言

写真:アドバイザーの山口氏

春日井市の職場巡視を実際に目にして、巡視側の気配り目配り、受け入れ側の応対の良さが印象的で、 本当に素晴らしいと思いました。

適切な安全衛生管理体制が整備されていること、そしてこうした安全と健康の確保のための 地道な取り組みの積み重ねがされていることが相まって、全国屈指の公務災害の少なさにつながっているのだと思います。

2012年07月19日
中央労働災害防止協会 中部安全衛生サービスセンター
安全・衛生管理士  山口 好孝

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City profile

愛知県春日井市

春日井市章
春日井市位置図

  • 面積 92.71km2
  • 人口 308,539人
    (2012年4月1日現在)
  • 人口密度 3,328人 /km2

市の木 ケヤキ

写真:ケヤキ

市の花 サクラ

写真:桜

市のマスコット

イラスト:市のマスコット、とうふうくん

道風くん(とうふうくん)

City office

春日井市役所

写真:春日井市役所

〒486-8686
愛知県春日井市
鳥居松町五丁目44番地

職員数
2,482人
2012年4月1日現在
地方公共団体定員管理
調査(総務省)による
【内訳】
一般行政 1,227人
教育 93人
消防 299人
公営企業 863人

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