地方公務員災害補償基金 Fund For Local Government Enployees' Accident Compensation

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公務上死亡災害の衝撃から今 岐阜市

平成22年、岐阜市では2件もの公務上死亡災害に見舞われました。予想もしていなかった事態に、災害が起こった部署、 安全衛生の担当者をはじめ、職員全体に衝撃が走りました。

今回は、職員の尊い命が失われた最悪の出来事を教訓とし、安全衛生を根本から見直し続ける岐阜市の懸命な取り組みをレポートします。

2つの公務上死亡災害

平成22年11月、ごみ処理施設「東部クリーンセンター」にて重機でごみ投入作業を行っていた職員が、車止めを乗り越え重機ごとピットに転落し、死亡する事故が発生しました。

それから1月後の12月、今度は北消防署ではしご車の訓練中、消防職員が車体と車体を支える支柱の間に挟まれ死亡する事故が発生しました。

「まさか立て続けにこんなことが起こるなんて。ちょっとにわかには信じられなかったですね。」職員厚生課長の鈴木 ひろみ氏は、当時をこう振り返ります。

写真:鈴木課長

この職場4年目になる鈴木課長

東部クリーンセンターを持つ環境事業部では、死亡事故後「事故再発防止委員会」を早急に立ち上げ、 災害調査と再発防止対策を進めました。重機が乗り越えられないよう車止めの改良工事を施し、 作業手順はこれで良いのか検討を重ねていました。  

そんな中、職員厚生課では産業医と相談の上、事故のあった東部クリーンセンターに保健師を1週間後、 2週間後、1か月後と派遣し、職員全員に対する面接によるメンタル面でのフォローアップを行いました。自らが保健師である鈴木課長も現場に何度も足を運び、職員のカウンセリング業務に当たっていました。2度目の死亡災害の報告を聞いたのはフォローアップが終わりかけていた頃です。  

職員厚生課では、引き続き北消防署に保健師を向かわせました。「これで、メンタルヘルス不調者が出たら、事態はもっと深刻になる。二次被害だけは絶対に防がないと。」鈴木課長をはじめ職員厚生課の保健師は、同僚の死にショックを受ける職員一人ひとりに言葉を投げかけ、耳を傾けていきました。

仲間の死を無駄にしない

「殉職事故を契機に、職場の安全について、根本から徹底的に見直すこととしました。規程類も、 作業手順も、作業環境も、何もかもです。」岐阜市消防本部消防総務課長の神山 芳夫氏は語ります。

写真:岐阜市消防本部 写真:神山課長

(左)岐阜市消防本部  (右)「思いもよらない事故でした」と神山課長

もう二度と同じ事故を起こさないため、岐阜市消防本部では 「はしご車訓練マニュアル」 を作成しました。これまではしご車については、国の操法基準に基づくこととしていましたが、 IT化したはしご車の仕様に沿って、国の基準に準拠しつつ、岐阜市消防本部が所有しているはしご車を基準 にマニュアルを作成しました。  

はしご車訓練だけではありません。国のマニュアルを参考に作って間もない 「安全管理マニュアル」 も全面改定しました。現在、使用している設備や車両の操法とのずれをできるだけ解消し、安全管理や点検などの 項目を充実させました。  

また訓練に対する方針や遵守しなければならない事項を記載した「岐阜市消防本部訓練指針」を新たに策定 しました。指針の中には事故防止の徹底という言葉が盛り込まれています。  

「岐阜市消防安全管理規程」 「岐阜市消防職員研修規程」 「岐阜市消防訓練時等安全管理要綱」 「岐阜市消防訓練時等安全管理要領」など規程類も徹底的に見直しました。あいまいさを排除し、読み方によって解釈が異な らないよう文言を整理していきました。  

出動体制も見直しました。安全点検の日を設け、本署・分署で一斉に訓練・点検を行う活動を始めました。 また、各施設に「安全確認」に関する掲示を行い、安全意識の高揚を図りました。

写真:安全管理研修の様子 写真:安全確認の大きな文字を掲示した例

写真:安全呼称掲示 写真:各部署に貼る安全運転7則の用紙

様々な取り組み   (左上)安全管理研修の様子  (右上)大きな表示で喚起
(左下)安全呼称の掲示  (右下)各署に掲示される安全運転7則

「一連の安全の徹底改革は、多くの職員の無念さが推進力になっています。この事故を風化させず、安全な 岐阜市消防を確立する。岐阜市消防職員全員の願いです。」神山課長は静かにこう話しました。

危険作業を洗い出せ

岐阜市では、公務上死亡災害が発生した平成22年度、全職場で危険作業の洗い出しを行いました。各職場か ら、危険作業について、リスクのタイプ、従事する職員数、想定される怪我の程度、マニュアルの有無などを 報告してもらい、全部で129件の危険作業を特定しました。  

職員厚生課ではこの報告をまとめ上げ、各安全衛生委員会に提供し、それぞれの安全衛生活動の参考にして もらっています。「まずは職場に危険があることを意識し、その情報をみんなで共有することが第一歩だと考え、 洗い出しを実施しました。」と話す鈴木課長。この危険作業の洗い出しについては、毎年見直しを行っています。 

危険作業を洗い出した用紙の写真

危険作業の洗い出しのとりまとめ

図:岐阜市安全衛生管理体制図

また、岐阜市では 「岐阜市職員安全衛生管理規程」 の全面改定に着手しました。今後岐阜市における安全衛生の基幹となる規程だけに慎重に進められ、策定まで1年の期間を要しました。 まずは岐阜市以外の40中核市に照会をかけ、他市の資料を参考にしながら試行錯誤を重ねたといいます。  

策定された規程の大きな特徴は、労働安全衛生の役割を明確にし、法規定よりも充実した安全衛生管理体制を構築した ことにあります。まず、第一に挙げられるのは「統括管理者」の設置です。市役所全体における職員の安全と健康を確保する責任者 として大きな役割を担います。区分された7業務には、法設置義務の如何に関わらず「総括安全衛生管理者」が選任され、 安全衛生業務を総体的に取り仕切ります。各所属長についても、安全衛生の役割を明確にしました。  

さらに、安全衛生委員会の委員の任期を1年から2年に延ばし、ある程度継続して安全衛生対策に取り組んでも らうようにしました。読みやすさにもこだわりました。古い規程では、法律の条項のみ記載していたものを、法律を 開かなくても分かるよう内容を書き込みました。  

この規程と一緒に、復職支援に関する要綱も整備し、課題であるメンタルヘルス対策の推進も図っています。

写真:まとめられたカルテ 写真:職員厚生課保健師たち

(左)安全衛生のカルテ  (右)保健師の皆さん。後列左から遠藤 みどり氏、斎藤 真未氏、前列は鈴木課長

職員厚生課のキャビネットには、安全衛生のカルテとも言える各職場の記録がファイリングされています。 そこには、職場環境の安全衛生調査記録や、健康診断の記録、前述の危険作業の記録などが収められています。  

職員厚生課の保健師たちは、それを携え手分けして管轄する全職場を巡視しています。職場の安全 状況を確認したり、健診を受けていない職員に声を掛けたりするなど、安全衛生の向上に向けたアドバイスを行っています。

 

アドバイザーより一言

アドバイザーのイラスト

岐阜市における公務上死亡災害は、本当に残念な事故でした。このような悲しいことを繰り返さないためにも、事業者は職場の安全に 万全を期さねばなりません。  

岐阜市消防本部に寄せていただき、安全への決意が随所に感じられました。安全呼称の掲示、きれいに片付けられた通路、 よく磨かれた消防車両、この取り組み、意識を継続していくようお願いします。  

職員厚生課が行った危険作業の洗い出しは、とてもよい仕組みだなと思います。日常の作業の中にどんな危険があるかまず知り、 みんなでその情報を共有することは大切なことです。この情報を基に、リスクアセスメントにつなげることもできます。 是非、発展的に活用されることをお勧めします。  

また、相当なご苦労をされて「安全衛生管理規程」を作られ、安全衛生を推進するための役割を明確にしました。醸成された安全衛生の 意識や文化が後退しないよう明文化することは本当に大変重要なことです。これを礎に安全衛生が躍進していくことを願っています。

2012年11月30日
中央労働災害防止協会 中部安全衛生サービスセンター
 安全管理士  芳賀 伸之

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    (2012年5月1日推計)
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写真:サルビア

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2012年4月1日現在
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調査(総務省)による
【内訳】
一般行政 1,877人

教育 419人

消防 444人

公営企業 1,113人

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